第3話

ババアはハナが外に出たと思ってる。



が、違う。



ハナは教会の中にいる……あそこを中と言っていいのかはわかんねぇけど。



ハナには言い聞かせてるから。



俺かトラが一緒の時以外は外を出ないようにって。



唯一、ハナの正体を知っているだろうアイツはもう居ない。




一応あの孤児大量虐殺事件は犯人逮捕で終了しているし、社長だったアイツらは行方不明ということになっている。



横領、脱税、幼児虐待などで捜査対象だった奴らは、捕まる前に逃走した……と。



ヒロの証言と証拠もあり、警察は奴らを追っているという。




奴らが死んでいるとも知らずに……。



全ては闇の中、バレることはない。



しかし念には念を。




特にハナのことは。



2階の自分達の部屋を通り過ぎる。



教会は4階建てで、2,3,4階は住居となっている。



2階と4階が部屋となっていて、3階は共同スペースのトイレ、風呂、キッチン、食堂だ。



部屋は4階が人気らしいが、俺は最も人気のない2階の階段に一番近い部屋にした。



もちろんトラとハナも一緒だ。



ババアは女の子のハナを女の子と一緒の部屋にしようとしたが、断固として拒否しまくってやった。




結果、ヒロも援護してくれて俺達は無事3人同じ部屋に。



なんで一番人気のない部屋を選んだかというと、いつでもすぐ逃げられるように……である。



4階なんて逃げるのに不利すぎだ。



2階ならば窓から飛び降りることも出来る。




教会は俺らが生きてきた中で今のところ安全だが、この世に絶対安全な場所などない。



この警戒心の強さで、俺もトラも生き残ってきた。




ヒロは今は違う会社で働いていて、教会にお金を入れてくれてる。



たまに帰ってきては、近況を報告しあってる。




ヒロもまた秘密を分け合う仲間だから。




「レオ?」




足の止まってしまった俺に先を歩いていたトラが振り返る。




「なんでもない」




そう言って歩き出す。




4階には隠し梯子があって、それを上ると屋根裏部屋に……そして更に上ると教会の屋根へと出る。



そこが俺達3人の秘密の場所だー。

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