百日紅の木

 二歳から七歳ほど。


 ふなっしー(仮)の家のそばに、百日紅の木があった。

 百日紅の木は、大人の頭ほどの高さで幹から枝がカップ状に広がり、カップの中央では、幼児一人が腰を落ち着けられた。当然、これを私はよく登り、終いには降りられなくなり、マミーに抱き上げて降ろしてもらった。この、抱き降ろしてもらうところまでが、私の楽しみだった。

 私は申年だ。猿さえ滑るのが百日紅だ。百日紅に登る私は「猿も木から落ちると言うけど、お前は落ちない猿だ」と口々に称えられ、不可解に得意に思った。

 私は毎年この木に登った。カップの中の、ちょっとした小部屋ほどだった空間は、座ってすっぽり包まれるくらいに狭まった。

 やがて衰える百日紅の枝振りと私の増加する体重との比例に、不吉な予感を覚え始め、それに年々増えるアリが気持ち悪かったので、私は登るのをやめた。

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