おしろい

 六歳くらい?


 坂本の宝飾道具の奥底に、パウダーケースが仕舞いこんであった。ケースは青がかったグレーで、中にはふかふかした白いパウダーパフが入っていた。

 開けると、おしろいのとても良い匂いがした。パウダリーというやつだった。ベビーパウダーの香りに似ていた。当時のわたしはそのどちらも知らなかったので、比較を出せなかった。ただ、嗅いだことのないとても良い香りがした。高そうだった。

 もうほとんど残っていないそれを置いているのは、坂本が過去の栄光とやらにしがみついているのかもしれなかったが、当時の私はそんなこと知らないし、気づかないし、どうでもいい。

 いずれにせよ、坂本は私に「使ってよい」と許可を出した。私は断った。粉は少ししか残っていなかったので、これが無くなって、匂いを嗅げなくなるのが嫌だった。

 ただし、私はたまに嗅ぎに行くようになった。

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