②-②

 あれからというもの、常に万希那さんの視線を感じる。


 彼女は何だか変わっている。腕には常に包帯を巻いていて、クラスの女子に怪我してるのかと問われると封印だとか言うし、よく分からなかった。


 下校中も、視線を感じて振り返ると電柱の影に万希那さんがいた。もうこれは立派なストーカーだ。


「あの、何か用ですか?」


 気付かれてないとでも思っていたのか、万希那さんは驚いた表情をしながらひょっこり顔を出した。


「この距離でも私の魔力マナを感じ取ったっていうの!?」


「いや、バレバレだから」


「その様子じゃ、まだ前世の記憶が戻っていないみたいね。今、思い出させてあげるわ」


「え?」


 万希那が目の前に来て、唇を突き出してきた。


「ちょっ、何してるんですか!?」


「何って……あっち異世界ではいつものことだったじゃない」


「平仮名にルビを振るんじゃない!」


「何言ってるの? さ、目を閉じて」


 その時、万希那さんの後ろに大きな影が見えた。


 刹那、万希那さんが懐から何かを抜いたかと思うと、大きな影が倒れた。いや、影じゃない。なんだこれ、巨大な四足歩行の……トカゲ?


「やはりゲートが開いていたようね。奴はこっちの世界まで滅ぼすつもりってことか……」


「ど、どういうこと!? って、まだいるよ、万希那さん!」


 気がつけば周りは巨大トカゲに囲まれている。


「邪気解放――!」


 包帯を解いた万希那さんが刀を振るう。


「さぁ、あなたも力を貸して! いつものように神聖力フォースを私に!」


「わかんないよ!」


「叫ぶの!」


 万希那さんとトカゲたちは接戦で、やや押されているようにも見えた。こうなったら致し方あるまい。


 僕はそれっぽくお腹に力を入れて、声を張り上げる。


「うえぇーーい!」


 陽キャのように叫んでみるとお土産で買ったキーホルダーが輝きだした。


「はぁぁーっ!」


 万希那さんの刀が眩しく光ったかとおもうと、残ったトカゲを一振りで斬り裂いた。


「ありがとう、ようやく思い出したのね、自分の運命さだめを――」


 こうして僕と万希那さんの世界を救う物語が始まった。


-完-

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