第217話
ご飯を食べて満足したあたしは再び歩き出した。
八雲さんに電話はしない。
だってまだ授業中だろうし、勉強の邪魔はしたくない。
まぁ、なんとかなるさ。
最後は……うん、タクシーって手もあるし。
……あくまで最終手段だけど。
お金は大事に使わないとだから。
もう少し、ここら辺を探索してみよっ。
何か掘り出し物でも見つけられるかも……
「ねぇ」
「ん?」
話しかけられる。
ん?
あたしに話しかけられても……あたしも迷子だぞ?
何故か話しかけてくる人も迷子だと思い振り向いた。
すぐに後悔することになる。
そこには何が愉しいのかニヤニヤと笑う、一人の男が居た。
「っっ」
知らず息を飲み、後ずさる。
思い出したくないことを思い出す。
似てない。
全然似ていない。
この男は"あの人"ではない。
わかってる。
でも、体が拒否する。
"あの時"から大人の男の人が恐くなった。
"シャーウッド"でも、お客様だとわかっていても動けなくなるときがある。
事情を知ってくれている凛さんはその度に
"いいんだよ。大丈夫"と抱き締めてくれる。
早く克服しなきゃと頑張ってみるものの……
こういう不意打ち。
しかも多分ナンパ目的の男……は嫌だ恐い……
どうしよう……。
八雲さん……。
「さっきから1人でウロウロして、もしかしてナンパ待ち?」
……なんでそうなる。
「……違います」
否定する声は情けなくも震える。
どうやって逃げようか、視線をアチコチに向ける……も。
何も思い付かない。
店の中に入っても、付いてこられるかもしれないし……。
「嘘だぁ。君、すごく男の人に相手してもらいたいって顔に書いてあるよ」
「!?」
……何を……何を言ってるの、この人。
全く会話にならない。
重なる"あの人"の影。
「僕、今日暇だから付き合ってあげるよぉ」
「っっ」
もう声も出ず、あたしはただ首を横に振る。
「照れてるの?可愛いねぇ。じゃ行こうか」
気持ち悪い笑顔、伸びてくる手。
動け……ない。
捕まるっ。
八雲さんっっ。
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