2輪目 珊瑚と夏祭りの思い出

第2話

ヒューッ………ドーン!…パラパラ…盆踊りも終わりを迎え、祭りの締め括りに花火が打ち上げられている。鳥居の上に座り、金魚すくいで貰った金魚を膝に乗せ海を眺めると遠い船から火の玉が打ち上げられ、衝撃と共に夜空に大輪の花が咲いた。「綺麗だね、橙。」橙と名付けられたその金魚は花火の音に驚きパタパタ身体を動かしていた。バンバンバンバン…!最後に光の花畑が夜空に咲き乱れ、例大祭は終了した。


珊瑚が本殿に戻ると建物続きの社務所や給湯室からガヤガヤと話し声が聞こえ、女性陣を中心に宴会の片付けが行われている様であった。普段は静かな珊瑚神社もこの日だけは1日中賑やかであり、珊瑚は喧騒を嬉しそうに聴きながら橙を金魚鉢に移していた。


やがて住民は全員帰り、屋台はビニールシートで覆われ、珊瑚神社は元の静けさを取り戻した。海神と珊瑚は本殿の前で月を眺めていた。夜空には数多の星々が輝いているが、その中でも北斗七星がひと際明るく夜のとばりを彩っていた。


「お父様、今日はとびきり楽しかったです。」珊瑚は月の光を浴び淡い光を称えていた。「ああ。私もこの日だけは楽しみでな。こうも人が多いと美酒もより美味さが引き立つものだ。」静かな夜に凛と鈴虫が鳴いていた。「それでは私はそろそろ帰りますね。」「ああ、ゆっくり休むと良い。」「はい、また明日。」珊瑚はお辞儀をし、黄金色の風になり本殿へ舞って行った。本殿の珊瑚鏡は月の光を受け紅く煌めき、黄金の風はその中に吸い込まれて行った。

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