第5話 終点は冬

おじいさんと少女と相席になりながら乗車すると、列車は数分も経たないうちに発車した。ガタンガタンと列車が揺れると、吹雪と逆方向に列車は前進した。

 冬夕焼から徐々に夜の帳が下りてくる。極寒の夕明かり、温かさに慣れてくると、瞼が重くなっていく。眠気と闘いながらも、僕は車窓から衾雪ばかり見つめていた。

 僕は愛されていたのだろうか。どことなく、疑問形が浮かび、僕はその苦痛に満ちた言葉を噛み締めた。

 大雪の降る日、家から飛び出して、片方の靴を履き忘れたまま、雪肌の路地をさ迷って、勝手気ままに凍えて本当に愚かだった。自分で自分の咽喉を押さえるように、僕は内面を閉じさせている。

「この鉄道は四季を回っているの」

 少女のこの笑みは見覚えがある。そのフラッシュバックはまるで、果てしない氷の大地にダイヤモンドダストが宙に向かって、煌めくように光り続ける。

「もう、この世界には星は売っていないかもしれない」

 その少女の瞼に影が一筋もなかったことに僕は気が付いた。

「君は何が言いたいの? 星って、そもそも何? 星って買える代物なのかい? 僕には分からないよ。星なんて買えるわけがないじゃないか」

「そうね。私は途方もないものを買おうとしているのね」

 暖房が効いたはずの車内も、ゾゾっと寒気を帯びてくる。外の気温はどんどん、低下していく。独りぼっちのまま、宛てのない孤独を踏みしめて、凍りつくような寂寞を抱えて、極寒の大地の氷河を一瞬で溶かすような熱風の怒りを抱えて、――僕は何がしたかったのだろう、と僕に凍死を試みさせようとしていた。

「お前さんはつらいかもしれないが耐えないといかん」

「このまま星を数えないといかん」

「おじいさんは古書店を営む前、どこで暮らしていたんですか」

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