第42話

「私、興信所で働いてたんです」



「めっちゃ優秀だぞ」



何故か世那が誇らしげに言う。



「おお……」



「見かけによらず」



世那の言葉に照れ笑いを浮かべる里子さん。


勝手に保育士とかそんな想像をしていた剛とアリスの二人は驚く。



「ミステリー小説とか好きで……。探偵……はちょっと稼げないかなと」



「しっかりしてる」



「しっかり者。チャランポラン世那にはちょうどええな」



「だろー」



ニッコニコの世那。


己は貶されても、嫁が褒められるのが嬉しいらしい。



「一番最初に見つけたのが、正義くんで。会いに行ったんです」



「一人で?」



剛が聞く。


アリスは世那を見た。



「俺はもうその頃、海外に居た」



「喜ばせたくて内緒で」



世那の過去をきちんと知った上で、姉兄弟に会わせたいと思ったのだという。



それで正義に会いに行き……連絡先を交換したと。



「「……」」



正義はきちんと対応できていたのだろうか、と心配になる二人。



案の定



里子は困ったような笑みで



「「僕、今フリーだからいつでも連絡ちょーだい」と言われました。世那さんの名前を出すまでもなく」



そして急ぐからとサッサと立ち去ったのだと。



「あんっのアホ……」



「はぁ~~~……」



とことん問題児の末っ子に頭を抱える姉兄。



「里子さん」



「はい?」



アリスが真剣な表情で里子を呼ぶ。


里子も表情を引き締める、が



「正義を嫌いになっても、アリスだけは嫌いにならないでください」



「おまっ、自分だけっ」



「可愛い義妹には嫌われたくない」



「それは俺もだっ」



「なんか聞いたことある言葉だったな」



「ね」



ヤイヤイ言い合うアリスと剛を見て、夫婦は顔を見合わせ笑いあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る