第34話
「そーなると、今度は違う輩に狙われるようになった」
「……」
それはそうだ。
必ずギャンブルに勝てる娘。
金のなる木。
強欲な者達は誰もが欲しがるだろう。
「それを危惧したジイさんは、あたしを連れて外国へ逃げた」
「外国……」
「もうその頃には借金も返し終えて自由の身やったから」
色々行ったで〜、と楽しそうに笑うアリス。
「言葉がわからず苦労したけど、ジイさんと2人笑って笑って過ごした」
「言葉がわからないのにスゲェな」
「あたしもジイさんも深く考えない、なんとかなる派やったからなぁ〜。そこでも」
「ギャンブルか」
「生活費稼いで、貯金した」
「おおーー」
「貯金額、エグいで?」
アリスはニヤッと笑う。
アリスと貯金。
一見浪費家に見えるアリスだが、そういうところはしっかり長女なのである。
姉弟で暮らす、そのために。
「マジか」
「でも……」
アリスの表情が翳る。
「ジイさんが肺がんになった。死ぬなら日本が良いって言うから日本に帰ってきて……ほどなくして亡くなったジイさんを娘さんと同じ墓に埋葬した……」
「亡くなったのか」
「うん。ありがとうって言われたわ」
「そうか」
悲しげに笑うアリスの肩を抱き寄せ、頭を撫でる剛。
「こっちの台詞を先に言われてもうて、あたしは言われんかった。ありがとうって。育ててくれて、一緒に居てくれて、ありがとうって」
「今度言いに行こう、一緒に。俺も言いたい」
アリスを守ってくれて、ありがとうーーと。
剛の言葉に泣き笑いになったアリスは頷く。
「うん、一緒に」
「ああああのっっ」
「「??」」
モジモジと真っ赤になった従業員の女のコが持ち帰り用の鯛焼きをソッと二人に差し出した。
「ありがとうございますっ」
従業員の女のコの言葉に剛とアリスは顔を見合わせ笑った。
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