第33話
お持ち帰りを待つ間に、話の続きを。
「変なジイさんに会った」
「変って、お前」
「変だけど、マトモやったで。養父よりか何千倍も」
そう言って、アリスは笑う。
その笑顔に曇りがないことに気付いた剛は、安堵する。
良い人に拾われたようで、と。
しかし、変でマトモってのもおかしいけれど、そんな人以上にヤバい養父ってどんだけだったんだ。
なんてことも思う。
「ジイさんは娘さんを亡くしとってなぁ、あたしと同じくらいの年だったんやと。それでジイさんは娘さんの代わりで良いなら一緒に住もうと言ってくれた」
亡くなった娘の代わりー。
剛は、眉間にシワを刻んだ。
それで幸せになれるとは到底思えなかったから。
そんな剛を見て、フンワリと笑うアリス。
「カッコイイ顔が台無しやで。大丈夫、そんな代わり言うてもきちんと“アリス”と呼んでくれとったし、娘はこうだったからああしろ、こうしろと強制することもなかった」
「そうか」
「一人は寂しくて、誰かと一緒に居たかったんやろな。まぁ、借金があって大変やったけど」
「ああ?」
「娘さんが亡くなった時に、自暴自棄でギャンブルに走ったんやと」
「あー……」
あるあると言っていいかもしれない。
大切な者を亡くして、自暴自棄になる。
大切な者達が生きてくれている剛にはわからない気持ち。
「膨れ上がった借金、もう返すにはアレしかないとカジノに行った。あたしを連れて」
「ハァ!?子供のお前を!?」
仰天する剛。
「留守番なんてしようものなら、借金取りに連れて行かれるからなぁ」
「ああ……。ああっ!?」
剛、葛藤。
未成年をカジノに……
「まぁ、それが功を奏したんやけどな」
「うん?」
「あたしが選ぶもの打つものは全部当たりで、、そこの一軒だけで物凄い儲けた」
借金取りが優しくなるほど。
行くとこ行くとこで当たり、外すことが絶対になかったアリスはいつの間にかその界隈で、ギャンブルの神に愛されし子。
「神の愛娘と呼ばれるようになっとった」
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