第32話

お茶を啜る。




「美味いなぁ、ここは鯛焼きもお茶も」



「美味いな。もう少し食べるか?」




剛はそう言うと、まだ食べていなかった自分の鯛焼きを半分に割った。




「もう腹いっぱい。それは剛が食べ」



「そうか」




半分を一口で食べる剛。



アリスはそんな剛と自分の分のお茶のお替りを頼む。




「お土産に買って帰ろか」



「そうだな。これならばあちゃんも食べれるしな」




お茶を持ってきてくれた10代くらいの女従業員に、アリスがお持ち帰りであんこを10個カスタードを10個頼む。



多いのは……正義がめっちゃ食べるに決まっているからである。



すると従業員は嬉しそうに笑って、「ありがとうございます!!」と言った。




「「可愛いな」」




弟大好きの二人は、年下に弱かった。



これで何か食べなさい、と同時にその従業員に千円を握らせた。




「あっ、あのっ」



「癒やされました」



「笑顔が素敵です」




何故か敬語で話す二人。




「「そのままで居て下さいね」」




爽やかな笑顔の二人に、従業員は真っ赤になって二千円を抱きしめお礼を言った。




「ありがとうございます!!」



「「否否」」























「あの二人、とてもお似合いね」



「長い時を共にしている夫婦のよう」




他の椅子からそんな声が聞こえてくるのを




「「否否」」




剛とアリスはこれまた爽やかな笑顔で否定した。




「まっ、あたしはえーんやで?夫婦になっても」



「ご勘弁」



「なんと!?」




青い瞳を見開いて心底驚くアリスの表情がとてもコミカルで、その場に居る人達みんなで笑った。




「ちょっと、校舎裏まで来いや」



「何処のだよ」

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