長女

第29話

アリスが虹の家に連れて来られたのは小学2年の時。



ホロホロ泣く母親に連れられて。



アリスは今でも覚えてる。



まぁ、覚えてるのはその日に剛と出逢ったからなのだが。




「いやー、こんな子と家族になる?って大興奮やったわー」




頬に手を添えて、うっとりと夢を見ているかのように話すアリスに




「お……おう?」




戸惑う剛。



剛もその日のことは覚えてる。




「なんかえらい……ニヤニヤした奴が来たな……と」




不気味だな、と。




「不気味!?いやいや、そこは「こんな天使のような子が来てくれて」やろ!!」



「いや、マジで。虹の家に来る奴は大概泣き喚くか、この世の終わりみたいな表情なのに」





憤慨するアリスに、極々真面目な剛。



虹の家に預けられるということは……



もう二度と両親が迎えが来ないということだった。



剛とアリスのように捨てられた者。


両親が亡くなった者。



そういう者達が集められたのが、虹の家だった。




「そらそやろ。あたしの母親は男と暮らすために、あたしが邪魔になったんやから」




娘より、男を取った。


娘より、自分の幸せを取ったのだ。




「恨んでいるか?」




母親を、と剛は聞いた。




「虹の家に預けられず、母親と再婚相手と暮らしていたらどうなってたんやろな」




幸せになれていただろうか。


それとも……



話されない先がわかり、剛は表情を歪める。



最近はよくニュースでやっている



“虐待”が行われていたかもしれないーー。



アリスの容姿ならば……




「恨んではおらんよ、寧ろ感謝しとる。世話の焼ける可愛いたくさんの弟達が出来て、騒がしくも幸せな日々を過ごせたんやから」




最善の手を打ってくれた、とアリスは微笑んだ。

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