第28話

「なぁアリス」



「んぁ??」




失言の詫びにアリスに鯛焼きを買い、気持ちの良い日には外で食べれるようにと店の前に置かれた長椅子に剛とアリスは並んで座り、鯛焼きにかぶりついていた。



「お前は、俺達と別れてから……」



「んん」




青い瞳を、何?と見開くアリス。




「「「っっ!?」」」




その幼くも可愛らしい表情の国籍不明の美女に、通りすがりの男達が見惚れ足を止める。



お口にパンパンに鯛焼きを詰める姿は、まるでハムスター。



剛は止まる男達をシッシッと手を振り、追い払いながら




「どう生きてきた?」




真剣な表情でアリスに聞く。




「……」





再会したのはアリスが1番最初だった。



アリスが剛を捜し出してくれた。



そこからは順調に弟達に会えた。



トントン拍子で進むから、聞く時間がなかった。




だから剛は知りたかったのだ。



アリスがこれまで歩んできた道のりを。




“神の愛娘”、そう呼ばれるようになった経緯を。




「全然、面白くないで?」



「面白さは求めてない」



「マジか、嘘やろ」




モグモグ、ゴックン。



鯛焼きをしっかり飲み込んで、アリスが驚愕して言う。



何故、面白さを求める。



シラけた剛の表情にアリスは両手を上げて降参した。




「あたしのこと……ねぇ」



「話したくないのか?」




渋るアリスに、途端に心配顔になる剛。



言いたくない事があったのかと……。



それ程、嫌なことがあったのかと……。




そんな剛にアリスは蕩けるように微笑む。




「言いたくないんやない。本当に特化したことがないだけや」



「特化なんかしてなくていい。俺は知りたいんだ。お前の生きてきた道を」



「もー、あたしのことが大好きなんやな、剛」



「おう、大好きだぞ」



「ぬぁっ!?」



「「キャーーーーッ!!」」




何故か通りすがりの女の人達が二人の会話に、歓声を上げた。

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