第16話

「おおーっ。剛くんイケメーンッ!!」



「ありがとよ、正義。が静かにな」




凪沙が頑張ってくれたお陰で、短いパッツン前髪だったのがなんとか見れるまでになった。



伸びて隠れていた瞳が露になったことで、正義が言ったようにイケメンに。



そんな剛に女性客の熱い視線が集まる。



素直に誉めてくれる正義の頭を撫でつつ、剛がアリスを見ると……。



珍しく、本当に珍しく、ショボくれていた。



剛に色目を使ってくる女性客達に牙を剥くわけでもなく、正義の隣で項垂れ下を向いていた。



いつもは眼力バリバリの青い瞳も力がない。



再会してからは初めて。


でも一緒に暮らしていた頃はこんなこと結構あった。




剛が本当に怒った時、彼の前でだけ。



懐かしく思いながら、声を掛けようとするも




「……ごめん」



「「!!??」」




アリスが謝った。



正義が瞳を限界まで見開き、さすがの剛もビックリする。



"あの"アリスが。



謝ることと下手に出ることが大っ嫌いなアリスが。




「アリスちゃんが謝ったーっ!!」



「正義」



「っっ」




さっき静かにと言われたばかりなのに正義は叫んでいた。



剛に窘められ、慌てて自分の口を塞ぐ正義。



いつもならここで"うるさいっ"とアリスの鉄拳が飛んでくるのだが……



剛と正義は顔を見合わせた。



重症だ。



剛は正義を撫でているのとは反対の手をアリスの頭に乗せる。



そして




「……俺も悪かった」



「????」




剛も謝り、二人の頭を撫でた。



その後ろでは、四季が髪を切ってもらう番で"この髪型にしてくれ!!"と雑誌を見せ、

凪沙に"無理"とキッパリ断られていた。



「なんでー!?」



「剛?」



「剛くん?」




頭を撫でられたアリスが顔を上げて剛を見た。

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