第13話

「すげぇな」



「?何が?」




大きな鏡の前に座った剛が感嘆する。



剛の後ろに立った凪沙が、鏡越しに目を合わせ首を傾げた。



あれから……


ノビた男を放置し、警察官達から無事に逃げ延びた姉弟達が来た場所は、凪沙が働いているお店だった。




「美容師とはなぁ」



「ああ」




剛の言葉の意味がわかって笑う凪沙。



そう姉弟達は凪沙が美容師として働いている美容院に来ていた。



とても繁盛しているお店らしく予約制らしいが、まだ出勤時間ではないという凪沙が、なかなかにボサボサな剛の髪を見兼ねて切ってくれることになった。



アリスと正義、四季も後で切ってもらえることになっているが、凪沙の希望で一番は剛だった。




そこで、ブーブー言ったアリスと正義に拳骨が落ちたのは、いつものことだ。



お店に入ってから気付いた凪沙以外の四人だが、誰も思いはすれど言葉にはしなかった。




((((従業員が男ばっかりだな……))))




そしてお客様は女の子ばかり。



さながらちょっとホストクラブのようだ。



現に見目麗しい姉弟達は手厚くもてなされていた。



凪沙の身内ってのもあるかもしれないが。



それでも美容院の待合室でジュースにお菓子、フルーツの山盛りというのは……。



それをさも当然のように受け入れて従業員達と歓談してるアリスと正義。



戸惑っている四季。



凪沙の大事な職場で、奴らが粗相をしないか心配な剛。




どこまでも苦労性である。

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