第5話

凪沙に抱きついていた正義が力づくで男に引き剥がされる。




「わっわっわっ!?」



「俺の"女"に何勝手に抱きついてんだ、ゴラァッ!!」



「ちょっと」




"女"の言葉に凪沙の表情が不快だと歪む。




「あ!?文句あんのか!?お前は俺の"女"だろうがっっ」




ピクッ。


アリスの眉が一瞬ハネる。




「"女"?何言ってんの、この人。ねぇ凪沙ちゃん。アリスちゃん」




キョトンと正義がアリスと凪沙、そして自分の腕を掴んでる男を見る。




「凪沙ちゃんは」




"ちゃん"付けだから説得力は全くないが。




「男だよ」




キッパリと言ってのけた。



正義にはそのつもりは全くなく素なのだが……男はバカにされたと思ったのかカッと顔を赤くして鬼のような形相となり正義に殴りかかった。




「俺が"女"っつったら女なんだよっ!!」



「わーーっ!?」




ケンカがからっきしダメな男、正義。



なんとか逃げようとするも腕をガッチリ掴まれてるから敵わず……




「止めて!!」



「凪沙ちゃん!?」



「どけーーーーっ!凪沙ーーーっ!」




凪沙が正義を庇い前に出る。



振り下ろした拳は止まらず、凪沙が殴られる。




「「…………っっ」」




のを許すはずがない。




「アリスッ」



「アリスちゃん!!」




が。




「誰の弟に手ぇあげてんだ、あ"?」



「あ!?ぐっ……ちょっ……」




スレスレのところで男の拳を掴んだアリスはそのまま少しずつ力を込めていく。




ギリッギリッと凪沙と正義の所にまで締め付けられていく音が届く。




((……怒ってるぅっっ))




ヒィイッと男の手から解放された正義は凪沙に抱きつく。



こうなったアリスは触らぬアリスに祟りなし、だ。




「はな……せっっ」



「男を"女"扱いし、自分の邪魔をする奴は問答無用で殴る……か」




アリスの青い瞳が真っ直ぐ男に向けられる。



感情の籠らない青い瞳は、ゾッとするほど冷たく海の底を思わせる。




「はなっっ」



「この」



「っっ」



「「…………」」
















「ブサイクが」




性格も根性も、とアリスは吐き捨てた。

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