第3話

「行くで、正義!!」



「ガッテンだ!!アリスちゃん!!」




同時に声がした方へと向かっていく二人。



もちろんキ◯タクを見に……である。




「なんだよっ。なんで俺のことを無視するんだよっっ」



「お?お?」



「撮影?撮影なの?」




ワクワクが加速する二人。




「色紙がないっ」




サインを貰う気満々のアリス。




「僕のTシャツ白いよっ」




こちらもである。




「よっしゃ!!よう言うた!!……ハァッ」



「どうしたの!?アリスちゃん!!」



「ペンがない……」




ガクーッと項垂れるアリス。



しかし




「大丈夫!現場の人が貸してくれるよ、きっと!」




ペッカーっと満面の笑みで正義。




「正義」



「ん?」



「今日は冴えとるやん」



「いつもだよ?」



「なんで嘘つくねん」



「!?嘘じゃないよっ」




人が多い街中で、ポッカリと空いた空間が出来てる。



撮影シーンを通行人達が立ち止まって見てるんだと思った二人のペースは更に上がり、そして……




「俺のこと好きなんだろ!?」



「おおおおーーーっ」



「ラブストーリー!?」




嫌な顔をされようともお構い無し!!



人垣をかき分けかき分け、とうとう最前列まで来た二人が見たものはっっ




「「…………」」







…………

……






キムタ◯とは似ても似つかぬ、傷んだ金髪のどこにでもいる中肉中背の男だった。




「「ハァアアアアアア…………」」




デッカイ溜め息をついて落胆する二人。



その落ち込みっぷりは周囲の人達が慰めるほど。




自分達が勝手に勘違いして突っ走っただけなのに失礼な話である。

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