長女

第2話

「うぉ!?すっげぇ美人‼」



「わっ‼本当だ‼」



「綺麗。でも……何人?」





空港ロビーにて。



背筋をピンと伸ばし、真っ赤なピンヒールを鳴らし、颯爽と歩く一人の女に、そこに居る全ての人の視線は釘付けだった。






サラサラで艶やかな長い黒髪。



形の良いアーモンド型の瞳は、晴れた空のように澄んだ青色をしている。



通った鼻梁にふっくらしたピンクの唇。



そして日焼けを知らないような白い肌。




服の上からでもわかる絶妙なプロポーション。




他人の視線に慣れているのか女は、それらの視線をものともせずにただ前だけを見て歩





グキッ‼‼




「い"‼??」




ビターーーーン‼‼





………………………………。





ロビーの時が止まった。




颯爽と颯爽とドデカいキャリーバッグを引きながら歩いていた女は見事に足を挫き、体勢を立て直すこと叶わず、ド派手にぶっ倒れたのだ。




その際に真っ赤なピンヒールが片方だけ、ポーンと宙を舞った。





「ぬぐぉぉぉぉぉぉーっ‼いだだだだだだだだだ‼」





周りの目を気にしないのか……。


痛さのせいでここが何処だか忘れたのか……。




女はゴロゴロと空港ロビーの床をのたうち回る。





「だから嫌やってん‼だから嫌やってん‼履けん言うてんのにあの野郎‼こんなん靴やないーーーーーーーー‼」





いやいや、颯爽と歩いてましたよ。



という声が聞こえてきそうなほど、未だにロビーの人達の視線を釘付けにする(さっきとは全く別の意味で)国籍不明の女はバリバリの日本語で叫んだ。

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