第3話オルレアンの戦い
「オルレアンは、半年間にわたりイングランドが優勢でしたが、ジャンヌ・ダルクの到着後9日間で、イングランドによる包囲は崩壊したのです!」
「わずか9日で!」
わたくしは、ナポレオンの話に絶妙な合いの手を入れてやる。
「数年の間、フランスを救済する少女に関する漠然とした予言がフランス国内に広まっており、ジャンヌの生誕地であるドンレミ=ラ=ピュセルのあるロレーヌ公国国境から現れるであろうと予言していました。結果として、包囲されていたオルレアンの市民に、ジャンヌが王太子に謁見した旅のことが伝わると、市民の期待と希望が高まりました」
「ふむふむ」
「ジャンヌの最初の使命は、ブロワに集まっているジャン・ド・ブザック指揮官とジル・ド・レ指揮官に率いられた護送部隊に加わり、オルレアンに物資を運ぶこと。ブロワで彼女は、イングランド軍の包囲戦の指揮官宛に、有名な書状を送り、その中で自身を【乙女】と呼び、神の名で“立ち去れ、さもなくば、私が立ち去らせる”と彼に要求」
「戦線布告じゃな」
「救援部隊は、400人〜500人の軍人を伴って、宗教的な行列のようにブロワから出立。ジャンヌは北側からイングランド軍と即座に戦うことを企図してイングランド軍が集まっているBeauce地域を通って、オルレアンに接近することを主張。しかし、指揮官たちはジャンヌに告げることなく部隊が南部を迂回するルートをとることを決定し、オルレアンから4km程東の町のシェシーでロワール川の南岸に到達」
「ジャンヌは激おこじゃ」
「左様。この裏切りに憤慨したジャンヌは、南岸のイングランドの砦に最も近いサン・ジャン・ル・ブラン砦に即座に攻撃をしかける命を下しますが、他の部将の支持を受けていたデュノワはこれに抗議し最終的に彼女を説得して、攻撃される前に町が再補給を行うことを許させ、供給部隊はサン・ルー港の上陸場に接近し北岸のイングランドのサン・ルー砦から川を横切りました。フランスの散兵がサン・ルー砦のイングランドの守備隊を封じ込めている間にオルレアンからの船隊が供給物とジャンヌおよび200人の軍隊を迎えるために上陸場に到着。
有名なジャンヌの奇跡の一つがここで起きます。船を上流へと流していた風が突然反対向きに吹き始め、暗闇の中、彼らはオルレアンに順調に戻ることができたのです!」
「わたくしの奇跡じゃ」
「マリアンヌ様の?」
「ゴホン、ゴホン…先を続けよ」
「はぁ……ジャンヌはオルレアンに入城し市民に大歓迎され残りの部隊はデュノワに説得されブロワに戻りました」
「ふむ」
「ジャンヌはデュノワと他のフランスの指揮官と共に戦略会議に参加。“オルレアン包囲戦の日記”では、ジャンヌと街の防御を指揮したデュノワとの間で軍事戦略に関する多くの白熱した議論が翌週行われたと報告しています」
「お主、そんな文献まで読んたのか。ジャンヌマニアか?」
「研究するなら徹底的に。それが予のポリシーなのです」
「偉い!」
わたくしは、ちょっとだけナポレオンを見直した。ちょっとだけ、ね。
「デュノワは行動を起こすには守備隊が小規模過ぎると考え、街をラ・イルとジャンヌに任せ援軍を準備するために自らブロワに向かいます。この間、ジャンヌは市壁の外側に赴いてイングランドのすべての砦を自ら偵察し、ある時間ウィリアム・グラスデールと言葉を交わしたようです」
「ほう」
「デュノワの増援部隊がブロワを発ち、オルレアンに向かいます。これと同時に、他の部隊がモンタルジとジアンからオルレアンの方向へ。翌早朝、デュノワの部隊はボースを経由しイングランドの守備隊を考慮し、川の北岸に直接到着。イングランド軍はフランス軍が強いと見るや、部隊の進入に対して攻撃をしかけませんでした」
「ふむ」
「ジャンヌがオルレアン防衛のために取った戦法は、各要塞に分散されたイングランド軍を立て続けに各個撃破するというもので、攻城戦は包囲後に講和を結んで終結するという当時のヨーロッパの常識から考えると“蛮族の行為”です💦」
「蛮族w」
わたくしは、ナポレオンの表現に吹いた。蛮族・ジャンヌw
♠ サン・ルー砦への攻撃
「東側を経由した通常迂回ルートを通る更なる供給部隊を確実に招き入れるために、デュノワは東側のイングランドの砦であるサン・ルー砦に対してモンタルジとジアンの軍隊と共に攻撃を開始。攻撃が始まったとき、ジャンヌはうたた寝をしていてその攻撃を逃すところであったが、急いで攻撃に加わりました」
「うたたねw スヤスヤと可愛らしく(?)ねむっておったのに、がばっと飛び起きて、“フランスの血が流されている!” と戦場へすっとんでいったのじゃ」
「その通り。イングランドの400人の守備隊は、フランスの1,500人の攻撃隊に数の上でかなり劣勢。数時間後サン・ルー砦は陥落し、サン・ルー砦陥落の知らせを聞いたタルボットは、北部への攻撃を取り止めたのです」
♠ オーガスティン砦への攻撃
「翌日は【キリストの昇天日】であり、ジャンヌはイングランドの最大の外塁である西側のサン・ローラン要塞への攻撃を要請。しかし、フランスの司令官は要塞の堅固さと部隊に休息が必要であることを理解していたため、彼女を説得して昇天日にちなんで平和に過ごすことを許させました」
「ふむ」
「翌朝に軍事作戦が開始されました。ジャンヌにより奮い立ったオルレアンの市民たちは、彼女のために民兵として立ち上がり市門に現れたため本職の司令官にとって多大なストレスと。しかしながら、ジャンヌは司令官を説得し、民兵が加わることを許可させます。フランス軍はボートや艀でオルレアンから渡河してサン・テニャン島に上陸し仮設の舟橋を経由して南岸へ渡り、橋の複合施設サン・ジャン・ル・ブラン砦の間に上陸」
「ほう」
「伝えるところによれば、フランス軍が南岸に上陸する前、ジャンヌはブールバールの拠点への急襲を開始したとされています。しかしこの攻撃はオーガスティン砦からのイングランド軍による砲火の側面に立たされ、ひどい災難となりました。更に西側のサン・プラヴェ砦のイングランドの守備隊は、グラスデールの援軍のために上流方面に駆け上がりフランス軍を分断させたという叫び声があった時、攻撃は中止。パニックとなり、フランスの攻撃隊は当惑しているジャンヌを引き連れてブールバールから上陸場所へ撤退。グラスデールの守備隊は、退散する彼女の姿に【魔女】を見て、これを追撃するために飛び出した。しかし伝説によると、ジャンヌは一人で向きを変え、神聖な旗を掲げてOu “Nom De(神の名の元)”と叫んだと言われ、伝えるところによると、このことがイングランド軍が追撃を止めてブールバールに戻ることを決定するのに十分なインパクトを与えたとされます。逃げ去っていたフランスの軍隊は引き返し、彼女の下に再集結しました」
「ジャンヌの威圧が超絶怖かっただけ説」
「ジャンヌは、獰猛な虎かなにかで?」
「「くくく」」
笑い合うわたくし達。
「ジル・ド・レは、この戦いの転換点を見てジャンヌに即座の攻撃再開を、城壁上の通路ではなくより遠くのオーガスティン砦を攻撃するよう場所の転換をフランス軍に指示するように説得。終日続いた激しい戦闘の後、夕暮れ前にフランス軍は遂にオーガスティン砦を奪取しました」
「ふむ」
♠ トゥーレル砦への攻撃
「ジャンヌは、オーガスティン砦での戦闘で足を負傷しており、治療のために一晩かけてオルレアンに戻ったため、結果的にその晩の軍事会議には参加できませんでした。翌朝、彼女はブールバール=トゥーレルの最後の戦闘には加わらないように求められたが、これを拒否して立ち上がり、南岸のフランス軍の野営地加わり、オルレアンのほとんどの人々は歓喜しました。市民たちは彼女のために課税額を増やして、複合施設への両サイドからの攻撃が可能となるように梁の付いた橋の修理に取り掛り、サン・アントワーヌ島には大砲が備えられました」
「足を負傷しても断固として戦闘に参加する猛将・ジャンヌ!」
「その日は、ほとんど成果の無い砲撃と、燃やした荷船に機雷を仕掛けたり、これを燃やしたりすることで複合施設の基礎を弱体化させる試みが行われました。夕暮れ時が近づき、ジャンヌは早い段階で石弓による攻撃で肩を負傷して倒れ、急いで運ばれました。
彼女が死んだという噂がイングランド守備隊を元気付け、フランス軍の士気は低下。しかし報告によると、彼女は刺さったボルトを自らの体から引き抜き、負傷にもかかわらずフランス軍の戦列に再びすぐに現れ、攻撃隊に新たな元気を与えました」
「猛将・ジャンヌw」
「ブールバールからイングランド軍を撤退させ、最後の砦トゥーレル砦に戻りました。しかし、それらを繋ぐ跳ね橋はすでにイングランド軍が手放しており、グラスデール自身が川に落ち、落命していました。フランス軍は両サイドからトゥーレル砦へなだれ込みました。この晩、半焼していたトゥーレル砦を遂に奪取しました。これで、オルレアンの戦いは終わりを告げたのです。イングランド軍の損失は甚大でありましたっ!」
「やけに嬉しそうじゃな」
「マリアンヌ様こそ」
フランス人とイギリス人は、犬猿の仲。宿敵・イギリスを叩きのめす話は、いつ聞いても痛快なのじゃ!
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