第22話【また来てもいいですか?】

 案の定、玲と麻美は桜の自由研究を手伝わされる羽目になった。


 玲は、桜に小言を吐きつつも、自由研究の手伝いをしてあげた。そんな姿を見て、麻美は兄弟姉妹というのは、時にはぶつかり合うこともあるが、やはりかけがえのない存在なのだなと改めて思うのだった。


「うち、ちょっと兄ちゃんの肩でも揉んできてあげよっかな~。明日も運転頑張ってもらわないとだしね~」


「あ、うん。こっちもあとちょっとで終わるから……って、桜! 今寝てたよね⁉」


「はぇ、寝て……ない、よ」


「あんたの宿題でしょ! ちゃんと起きてやりなさい‼」


「ふふっ。んじゃ、頑張ってね~」


 そう言い残すと、麻美は遼のいる二階の部屋へと向かった。


 睡魔に襲われながらも、桜は玲の手伝いの甲斐もあり、無事に星空観察の自由研究を終えることができ、満足げに眠りについた。




 翌日。朝食を食べ終ると、玲達は部屋の片付けや、荷物の整理に取り掛かった。


「ふぅ~。全部終わったね~」


「桜、忘れ物は無い?」


「だいじょぶだよー」


「みんな帰る準備出来たんなら、車に荷物積んでってや」


「あ~、帰るの憂鬱だな~」


「帰りたくないって思ったっちゅーことは、この旅が最高の思い出になったってゆう証拠やな。和昌翁、色々助かったわ。ほんまありがとう」


「儂も楽しい人生の一ページが増えて嬉しかったわい。銀仁朗君にも会えたし、麻美にこんな素敵なお友達がいる事も知れたしのぉ」


「あの……また、来させてもらってもいいですか?」


「お~。玲からそんな事言ってくるとは思ってもみなかったな~」


「あ、ダメ……だったかな」


「ううん、そうじゃなくて、引っ込み思案の玲が、そうやって自分の意思を言ってくれたってことは、本心でココを良いって思ってくれたって証拠だから、すっごく嬉しい!」


「いつでも来たらええで。特別な事はしてやれんがな」


「和昌じいちゃん。桜達にとっては、全部が特別だったよ! 本当にありがとうございました!」


「田舎もまんざらではないのぉ。がっはっはー」




 挨拶を済ませ、各自の荷物や沢山貰ったお土産を車に積み終えると、遼は車のエンジンをかけた。


「ほなじいちゃん、また連絡するな」


「気ぃ付けていんどかれ」


「イ、インドカレー?」


「あぁ、岡山弁だよ~。気を付けて帰りなよって意味で言ってるんだけど、何かオモロいよね~。じゃあじぃじ、色々ありがとね~。また来るからね~」


「お世話になりました。おかげで凄く楽しい時間が過ごせました。お土産も沢山頂いて、本当にありがとうございました!」


「和昌じいちゃん、大好き! また遊びに来るねー」


「孫が増えたみたいで嬉しい限りじゃわ。次来る時は、婆さんにも会わせてやりたいもんじゃな」


「そうやね。ばあちゃんにも宜しく伝えておいてよ。あ、銀ちゃんの事は内緒でな」


「分かっとる。儂らだけの秘密じゃな。それじゃ、みんな元気でな」


「ばいば~い、またね~」


 和昌は、孫達を乗せた車が見えなくなるまで手を振り付けた。その姿が見えなくなると、やはり物寂しい気持ちが溢れてきた。しかしそれも一瞬、次にあの子達と会う時まで、健康で居続けなければならないなという思いが強く込み上げ、元気よく道の真ん中で屈伸運動をし始めた。


「まだまだ老いてはおれんのぉ。さぁ、今日も張り切って畑仕事しょーか!」




 無事に小豆島から帰って来た銀仁朗は、早速頂いたオリーブの葉を試食する事にした。


「いやぁ、久々にユーカリ以外の物食べるわぁ」


「晩ご飯もうすぐなんだから、ちょっとだけにしときなよ」


「わかってますがな。なんや、小豆島行ってから、玲が母上みたいな事ばっか言う様になったなぁ」


「何それ?」


「良い様に言うと、面倒見がよぉなったな」


「悪い様に言うと?」


「ん? あぁ、えっと〜、口うるさ——」


「あぁん⁉」


「い、いえ、何でもございません。ちょびっとだけ、オヤツ、頂きます」


「はいはい。で、どう味は?」


「ん! うまっ‼ なんや、新鮮やからかのぉ? 甘みと、ほのかな苦味もあって、最高に美味いでコレ」


「よかったね! 和昌さんに感謝しないとだね」


「せやな。これで食糧危機も解決やな!」

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