第21話 ショッピングデート?

「どこか行きたいところある?」


 駅前から繁華街に入る道中、美夜子が俺の手を引きながら問いかけてきた。

 ヤバい! 美夜子とデートだ。前世じゃあドライブデートしかしたことなかったからこうやって街中を二人で歩く王道デートは初めてだ。

 ということで絶賛緊張中の俺は「美夜子が行きたいところでいいよ」と言って受け身の体勢だった。


「というか、あの薬は飲まなくていいのか?」

「あ、うん……まだ大丈夫だよ。ここぞというときまで温存しておきたいし」


 温存か……どうやら変身の妙薬には時間制限があるらしいな。

「じゃあとりあえず、繁華街をぶらぶらしよっか。雑貨屋とかお土産屋も多いし、何か面白いものがあるかもしれないよ?」

「そうだな……」


 こちらを向いて微笑んでくる美夜子が可愛い。思わず見とれる。デート中の彼女って、いつもの数倍可愛く見えるよな。

 美人なのにやや童顔で、赤いメッシュが入った黒髪ロング。スタイルもよくて胸も大きくて、服装は黒いレディースキャップで頭を隠し、ゆったりした半袖の黒いカットソーにベージュのロングスカートを合わせている。すべてが俺好みだ。


「美夜子とデートできるなんて、生きててよかった……」

「もう生きててよかったなんて大げさだよ。そんなにお母さんとデートできて嬉しかった?」

「お母さんとデートか……もうこの際それでもいいよ」


 親子でもいい。そんなの関係ない。俺には、高校生時代の美夜子と過ごしてきた記憶と、ちゃんと恋人になったときの記憶があるから、お前のことを母親だと思ってないから。


(でも美夜子は、俺のことを息子としか見てないだろうな……)


 そう思うとちょっと寂しい気分になった。


「ねぇ日向、ここ行ってみない?」

「ん? あぁいいぞ」


 美夜子に手を引かれ、俺は繁華街の一角にある店舗に入った。

 そこは、可愛らしいキャラクターで溢れていた。デフォルメされた河童に兎に、あとはヒヨコのぬいぐるみやキーホルダーとかのグッズがいっぱいだ。

 テレビで見たことあるやつが目立つ。どうやらゆるキャラの専門店らしい。


「私ずっと旅館にいるから暇で、それでお昼の番組をよく見るんだけど、その番組のマスコットのゆるキャラが可愛くて、ちょっと舌を出してるところがお茶目で――あ! あった」


 俺の手を放し、美夜子がゆるキャラに飛びついた。

 わぁと目を輝かせて美夜子がチワワのぬいぐるみを持ち上げている。

 ちょっと気持ち悪いぬいぐるみだ。ギョロ目で舌を出しているが、目を開けたまま気絶してるみたいな感じになっている。


(キモカワ系ってやつか? 白黒の毛並みとチワワってところが可愛いけど……ホントに人気なのか?)


 俺が呆れていると、美夜子が店の隅の方を見て表情をぱっと明るくした。


「あ! ウソ、なんでここにあるの?」

「……なんかあるな。存在感が凄いのが……」


 壁際に立っていたそれは、ゆるキャラの着ぐるみだ。頭がチワワで、胴体はだぼっとしている。毛並みは白黒で、さっき美夜子が持ち上げたぬいぐるみと同じデザインだ。


「見て、試着OKって書いてあるよ」

「うん、書いてるな……」

「私、着てみたい。せっかくの機会だし♪」

「え、マジで言ってるの……?」


 驚く俺をよそに、美夜子は着ぐるみを着ていく。

 おいおい、デートだったら可愛い服とか選んで『どれがいいかな?』と言う彼女に『全部似合うよ』と言い返すのが鉄板だろ。何が悲しくてキモカワ系ゆるキャラの試着なんだ? 残念すぎるだろ。

 そう思ってると、美夜子が着ぐるみの頭をかぶった。


「じゃじゃ~ん♪ チワッチの登場でーす♪」

「あ…………」


 チワワの着ぐるみが喋ってる。やんわりした癒しボイスで「じゃじゃ~ん♪」とか言っている。なんだこの残念感は。声はめちゃくちゃ可愛いのに舌出し気絶チワワだなんて……美人の無駄遣いだ。しかも名前がチワワだからチワッチって安直だろ。


「ねぇねぇ、何か言ってよ」

「……声だけ可愛いよ」

「声だけ!? 違うでしょ、もっと全体を見て!」


 チワッチがどすんっと一歩近づいてくる。


「ちょっとこっち来るな……! その着ぐるみ、圧が強いんだよ……!」

「あ、こら! 逃げちゃだめ――ふぎゃ……っ!」


 着ぐるみの短い足がもつれ、美夜子が盛大に転んだ。手を万歳にしたままうつ伏せで倒れている。


「大丈夫か、美夜子?」

「日向ぁ~」


 近づいた瞬間、ガシッと足をつかまれた。


「捕まえたぁ……ねぇ可愛いって言ってぇ?」

「やめろ怖い! 夢に出るだろうが!」


 ギョロ目のチワワの顔が俺の身体に這ってきた。

 こうやってわーわー騒いでいると、若い女性店員さんに注意される。


「あの、他のお客様のご迷惑になるのでお静かにお願いします」

「すみません、少しはしゃぎすぎました……」

「うちの者が騒がしくて、すみません」


 美夜子が立ち上がって頭を下げると、俺も軽く謝罪した。

 そのあと店を出て、俺たちは再び繁華街をぶらぶらした。



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