第14話 信念と是正


 それから何日か、日々が過ぎていきました。



 鏡の前でスーツを着ているにしま。


 スーツと靴、そしてネクタイを新調し、気分一新頑張ろう。これは冬物のスーツ。私はまた夏になれば新しいスーツを買って、その夏もまた気分一新頑張る事が出来るのでした。



 同居しているスコティッシュフォールドの「ピン」に餌をやり、今日も相棒の車を運転し出勤です。




 猫は苦手でしたが、直ぐに慣れました。今では可愛くてしょうがありません。不思議なもので、もう家族なのです。




みなみ「昨日情報が入ってわかったんだけど、先日のマンダがよ、どうも怪我で入院しちまったらしいんだよ(笑)悪い事をすればまぁこういう事になるよな、やっぱ神様は見てるわ(笑)」



 車中でタバコを吹かしながら話をしている2人。




にしま「お、マジで?(笑)怪我か・・・」



 それって・・・・。



みなみ「ちょっと出勤前にさ、お見舞いに寄ってくるから、お前は先に職場に行っといてくれよ。」



にしま「お見舞い?・・・・それなら俺も行くよ。大手で上取引先様の入院なんだろ?(笑)」



 私は皮肉っぽく言いました。




みなみ「あぁいいよいいよ、俺一人で行ってくるから。にしまは先に会社に行っといてくれ」





にしま「俺に気を遣ってんのか?(笑)どこの病院なんだ?行こう。この間の話も決着を付けないとな。まだ俺の中で結構モヤモヤしてんだわ。」




 先日うちの会社に難癖をつけてきたマンダが怪我をしたというのです。ということは、怪我をした姿を見に行かなければなりません。ゆっくり病室でお話する事が出来る筈です・・・・・。




 町の大きな病院でした。話を聞く所によると、便利で気を遣わなくてよい個室に入院しているそうでした。




 個室の引き戸を開けるみなみ。





みなみ「おうマンダ。個室じゃねぇか、金持ってる会社は違うなー。」



マンダ「・・・・ひぃ!みなみ!!」



 先程迄少し笑顔であった様子でしたがみなみの顔を見たら途端、表情が急変するマンダ。ベッドの横にはマンダの会社の社員が2人座っていました




 どうやら骨折をした様子でした。



みなみ「なんか人から聞いた話だと結構な事故だったと聞いたぞ。車に挟まれたんだったっけ?左足と鎖骨だけでよかったな。」



にしま「いい個室じゃないか。」


 ブラインドカーテンを閉めるにしま。



マンダ「お前ら!・・・・やりやがったな!」



みなみ「はぁ?・・なんの話だ?・・・今日はお見舞いに良い物を持ってきてやった・・・・。見舞いに来たのに、手ぶらじゃいけねぇからな。ほら。」



 みなみは封筒をスーツの内側ポケットから取り出しました。



マンダ「お・・・・・お前ら!ちょっと出て行ってくれ!」



社員「え?いいんですか?こいつらまた何を言って来るかわかりませんよ」



マンダ「いいから!出てけ!!」



 マンダの部下達が俺達の顔を睨みながら病室から出ていきました。



にしま「相変わらず無口な社員だなぁ・・・・。大手だから胡坐かいてやがる。」



マンダ「な、・・・なんなんだその封筒は?・・・」



みなみ「え?これ?お前、わかってんだろ。これがなんなのかを。」



 封筒を開けると、バサバサと床に・・・・百枚近い写真が出てきました・・・。



 その写真は、マンダの不倫現場を撮った写真でした。女性と待ち合わせてる写真、温泉に入っている写真、肩を組んでホテルに入っていく写真・・・・他にももっともっと濃い内容の写真が入っていました・・・・。


にしま「・・・あんた妻子持ちじゃなかったけ?奥さんは議員さんだっけ?・・・・だったら仕事だけしてりゃ良いってわけにはいかないよな。」




マンダ「これは!!・・・いくらだ?・・・・。」



 マンダの顔から血の気が引きました。あまりにも心当たりがありすぎたようで焦っていました。まさかみなみにこの件が伝わっていると思わなかったのです。



みなみ「・・・はぁ?お前何言ってんだ?」



マンダ「だから・・・・い・・・いくらでその写真を買わせてくれるんだ?!」




みなみ「金なんか要らねぇよ。お前の奥さんって確か工場の利権を持ってるどっかの議員だったな。」




マンダ「だったらなんなんだ!!」




みなみ「・・・これで終わりだな。お前の会社からその工場や公的な仕事に出してた派遣労働者も全て無くなる。たしか・・・・お前の会社の派遣出してる全体の9割くらいがその仕事だったっけ?残念だったな。・・・でも仕方ないよな、・・・こんな事になってたら。あーあ。」



 みなみは少し笑いながら煙草に火を付けました。



にしま「この一件もそうだけど、きたのから聞いたぞ?あんた散々俺達の会社の悪口を言って回ってるらしいじゃねぇか。どういうつもりでそういう事やってるんだ?」



マンダ「・・・言ってねぇだろそんなに!!」




にしま「こっちは真っ当に商売してるんだが、あんたのその一言でこっちはどれだけ被害を被ってると思ってんだ。DORAのキャストも軽く過半数いってたのが、あんたのせいで半分位に落ち込んだって聞いたぞ。キャストの子から。」




マンダ「ああ!!もう!!・・・・・悪かったよ・・・・・。」





にしま「え?何?聞こえないんだけど・・・」





 ブチっ!!!・・・・



 みなみの中で何かが思い切り切れました。




みなみ「はぁ?!・・・なんだそらお前・・・・頭が高いんじゃねーのか!?そういう教育なのかよお前んとこの会社はぁ!!!」



 みなみは吸っていた煙草を握りつぶし、丸椅子を蹴り上げました。



マンダ「したくても・・・・カテーテルが・・・・股間に・・・・。」




 尿管カテーテルがささっていました。




みなみ「抜きゃいいだろうがそんなもん!!手動くくせに口だけ動かしてんじゃねーぞこの野郎!!・・・俺が抜いてやるよ!!・・・えー-っと・・・・これか?!これだな!!」



マンダ「やめ・・・お願いだから・・・」



 管にみなみの手がかかります。





にしま「そういえばあんた、きたのがみなみにどうのこうの言ってたよな。なんだったかな?この前の話は。俺はその話がまだモヤモヤしているんだが。」





マンダ「何もないです!!!きたのとみなみさんは何もないです!!!」



みなみ「何もないってなんなんだこの野郎!!この前の勢いはどこ行ったんだよ!!じゃあ抜くぞ!!」




マンダ「頼むみなみ!!せ・・・・・正式に謝りに行く!!退院したら正式に!!会社として謝罪に行く!!な?これで許してくれるだろ?!・・・・」





にしま「形式ぶらずに、ちゃんと本心でやってくれよ。先に変なやり方で脅してきたのはそっちなんだからな。・・・きたのにまで手を出すなんていい度胸してるじゃねぇか。」



みなみ「俺は前にも言ったけど、お前がいくら謝罪しても許すつもりは無い。俺自身は徹底的にやるともう決めている。会社に謝るのなら、幹部のチュンさんとハツモトさんにしてくれよ。俺は平社員だ、まだ会社の人間では無いからな。・・・なんか少しだけ反省してるみたいだし、この写真はオ〇ズとしてマンダに預けとくわ、入院生活暇だろうし(笑)煮るなり焼くなりしていいぞ、データは俺がしっかりバックアップまでやって持ってるから、欲しけりゃ何枚でも何百枚でも焼き増ししてやる。病院の屋上からバラまいてもいいくらい焼き増しできるんだから。・・・笑顔で退院なんかできると思うなよこの野郎。」





 ・・・・・・・・・・・・・・・







 ・・・・・・・・・・・・・・・







 ・・・・・・・・・・・・・・・







 ・・・・・・・・・・・・・・・







 ・・・・・・・・・・・・・・・



 その夜、市内の外れにあるさびれた横丁で小さいバッグを持って、早歩きで歩いている幹部バキョウの姿がありました・・・・・。




バキョウ「・・・・・・・・・・・・・・・・」





 急に目の前にきたのの会社の幹部カンが現れました。




バキョウ「・・・兄貴っ!!!・・・」





カン「おい、・・・お前仕事に行かずどこに行こうとしてるんだ・・・。」



 逃げようと思い、慌ててバキョウは振り向きました。




バキョウ「・・・オカ・・・とソウマ・・・・」




 振り返った先には2人のスーツ姿の男が立っていました。挟み撃ちです。




カン「そいつを座らせろ。」



 バキョウは後ろの2人に羽交い絞めにされます。



バキョウ「放せオカ!!・・・カンの兄貴が来てるってことは逃げられない。ガキみたいにゴチャゴチャ言わねぇから!!・・・・自分で座らせてくれ!!」



 自ら両膝をついて、持っていたバッグを通路端に投げ捨てました。



カン「お前はもう少し頭がいい奴だと思ってたんだけどな。残念だ。本当に残念だ。」



バキョウ「・・・間違ってる事を正して何が悪いんですか・・・」



カン「何が間違ってるんだ?・・・・・お前だってみなみさんに入れて貰った女を他のマンダの店に流してインセンティブ貰ってんじゃねぇか。・・・誰が間違ってんだよ!!お前が間違ってんじゃねぇか!!こっちが気づいてねぇとでも思ってんのかこのクソボケがぁ!!ああっ?!」



 カンは激怒しています。裏切り行為です。唯一と言っていいほどしっかりした部下の裏切りです。



バキョウ「・・・前の前の店長時代からのアガリを調べ、大幅に抜かれてる事が分かったんだ。調べたら・・・・・どこへ送金されているかも分かった。」



オカ「そんな事、店やってたらよくある事じゃねぇか。何を今更言ってんだ。寝ぼけやがって。」




バキョウ「オーラスとの契約書も確認したんだ・・・そのうえで・・・」



カン「はぁ・・・・めんどくせぇ奴だなお前は。この方が早いわ・・・・じゃあクイズだ・・・・。」



バキョウ「・・・・・・・・・・・」




「猫が居ました。その猫の事を社長がそれは犬だと言いました。その動物は何でしょう?」



カン「さぁ、どうだ?答えろ。」



バキョウ「・・・・・・・・」




 ・・・・・・・・・・・・・





 ・・・・・・・・・・・・・・





 ・・・・・・・・・・・・・・





 ・・・・・・・・・・・・・・



 バキョウはカンを凄まじい形相で睨め付けながら言い放ちました。





「・・・俺は間違ってない!!・・・これを解明すれば俺達の社会的な待遇が変わってくるかもしれないっていうのに、誰もわかってない!!全員保守的過ぎて分かってくれない!!あの人が絶対的過ぎて誰も変えようとしない!!・・・・・何がきたのだよ!!結局あいつが儲けようとしてるだけじゃねぇかぁ!!俺は逃げないぞ!!本当の信念ってやつを最後に見せてやる!!・・・・・オカ!!聞こえてるか!?お前ら良いように使われてるだけだかなら!!下請けなだけだからな!!今分からなくともいつか分かるさ!!俺に感謝する日が来る!!・・・・・呪ってやるぜ!!!きたのもみなみもにしまもお前らも全員!!!・・・全員呪ってやる!!来世で必ずお前達の事を見つけ出して、やってやるからな!!!どちらが正しいか!!勝負だ!!!




 答えは・・・



 ・・・・猫だ!!!!・・・・・」



 ガバッ!!!



 後ろから袋を思い切り被せられてしまいました。



バキョウ「むぉかおお!!!うー!!・・・うー!!!・・」




カン「・・・調子良い事言いやがって、来世は良くてトカゲくらいだろお前みたいな奴は。連れてけ。」





オカ「はい。」

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