第7話
その後、何事もなかったように映画は始まった。
内容はゾンビ映画だった。
彼女は意外にもホラー系の映画を嗜む。
俺は苦手だったが、彼女との付き合いもそれなり長い期間続いてきたため、さすがに慣れた。
数時間に渡る映画、主人公とヒロインがゾンビ達からの攻撃に対して必死に抵抗して頑張っている。
そんな中、俺も彼女から攻撃を受けていた。
肩に頭を乗せられ、足の上に乗られ、関節技を食らい、正面から抱きしめられたりと様々な方法で。
映画が終わりエンドロールが流れると、彼女はテレビを消して、前に立った。
「優斗なんて!ゾンビと結婚しちゃえ!」
「急に何を言ってるんだ?」
「だって、私が必死にアピール・・・。妨害をしているのに全くそれを止めようとしないじゃないか!てことは、そんなことに気にする暇もないくらいゾンビに夢中ってことでしょ!だったら、ゾンビと結婚しちゃえ!!!この浮気者!!!」
「おいおい、なんでそんなことになるんだ。映画を見ようっていたのはお前じゃないか」
「言った」
「だろ」
「でも、映画じゃなくて私を見てよ」
彼女の頬が風船のように膨み、横に『プイッ』と向く。
「この前は『私じゃなくて、映画を見てよ』って言ってなかったか?」
「あの時は、見てほしかった名シーンで『お前、かわいいな』って言いながら、私の方を見てきたから言っただけなの!今は違うの!」
「あの時は久しぶりに、すっぴん姿のお前を見て、咄嗟に声が出たんだから仕方ないだろう」
「またそうやってーーー!!!うぅうぅぅーーーー!なんか悔しい!優斗ばっかり!」
「さっきから何なんだ?おかしいぞ」
「おかしいのは優斗の方でしょ!もう、こうなったら」
彼女は急に走り、お風呂の方へと向かった。
何をやっているんだと思いながら、テーブルに置かれていた食器を片付け、少し水洗いをして、食洗器に入れた。
すると、お風呂場から『湯はりを開始します』と音が聞こえ、彼女は俺の元へと帰ってきた。
両腕を腰に当て俺の横に立つ。
「これからお風呂に入ります」
「おう。お先にどうぞ」
「あなたも一緒に入るのです」
「おう。いいぞ・・・はっ!?」
「いいぞって言ったな!言質取ったり」
彼女は俺に指を指し、意地悪そうな顔を浮かべた。
「いや待て、それはなんというか、色々とまずくないか?」
「大丈夫です」
「だって」
「だ・い・じょうぶ」
「はぁ~どうしたんだ?頭でも打ったのか?」
「いい、から」
彼女は俺の背中を押しながらゆっくりと風呂場へと押し込んだ。
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