第6話
数分後・・・。
「間食じゃけー」
そう言った彼女の口元にタルトに入っていた生クリームを発見する。
「ついてるぞ」
俺は人差し指でそれを取り、食べる。
「あっありがとう・・・。こういう時は積極的なんだよな~・・・」
急に照れる彼女の囁きをうまく聞き取ることができなかったため、俺は聞き直す。
「すまん、何て言ったんだ?」
「なんでもないよ~。そんなことより、映画見よ~。一緒に見たいのあるんだぁ~さっき、セットしたから・・・えっとどこだっけ?」
彼女はリモコンの入力切替ボタンを押した。
『ここだ!』と押すのをやめた彼女。すると、画面にピンク色の壁が映る。数秒後、カメラが移動すると『アァン!』という声と共に男と女の人が抱きあ・・・。
おい、これ。
「琴・・・」
彼女も気づいたようで、俺が名前を呼んで止める前に、咄嗟に画面が切り替わっていた。
「君は何も見ていない。そうだね?」
「いや、俺が来る前に琴音が見てい・・・」
彼女は俺に向かってリモコンを振りかざそうとしていた。
「そ・う・だ・ね・?」
「はっはい」
「よろしい!うんうん!全くもう~困ったもんですよ、うちのテレコちゃんは~。あなたをそんな子に育てた覚えはありません!」
意味不明なことを言いながら、胡坐をかき、腕組をして2度頷く彼女。
それに目を細めながら見る俺。
この構図は傍から見て恋人同士に見えるのだろうかと考えてしまった。
そんな風に考えていると彼女は両手を顔に当て覆い隠した。
「もう~、そんな目で見るなぁ~。仕方ないだろうーーーーーーー!昨日まで収録で忙しくて溜まってたの!!!何かがね!!!決してあれじゃないよ!!!違うからね!!!」
「おっおう。大変だったな」
「そうなの!大変だったの!ということで、デコピンお願いします」
ということでデコピンの展開にはならないと思うのだが・・・。しかし、デコピンをしろと言われてもな・・・。
彼女はおでこを俺に見せてきた。
「覚悟はできてまっせ!親分!」
彼女はおどけた声を上げながら目をぎゅっと閉じ、待ち構えている。俺は一瞬迷ったが、さっきのこともあるし、覚悟を決めて行動を起こした。
彼女のおでこに、そっと唇を落とした。
『チュ』と小さな音がして、数秒間、時が止まったかのように部屋が静まり返る。
はずいな・・・。
先ほどと違い、少しずつ赤くなるのではなく『ボッ』と一気に湯気が出そうなくらい真っ赤になった。
『くぅううううううううーーーーーー!!!』と言いながら、ゴロゴロと床に転がる。
一分間それが続いた。
まだ続くかと思いきや、『シュタッ』と止まる。
「あなたは今夜、寝れないと思ってください」
仰向けになりながら、真面目な顔で言われた。
「寝させてくれ」
「許しません」
「どうしてもか?」
「何があっても絶対に確実にです」
起き上がり、俺の肩を『ポコポコ』と叩いてくる。
「今度はなんだ?」
「映画見る」
「分かった」
彼女は頷き、何事もなかったようにテレビのリモコンを取り、今度はしっかりと映画が映った。
その後、悔しそうな顔をして、ソファに座りこっちに来てと手招きをしてきた。
隣に座ると、どっしりと俺の肩に頭を乗せてきた。
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