第10話 ワイルドボア討伐
三週間が過ぎると、ギルドの簡易宿泊所も出ないといけなくなる。そこで俺は、マルクスに誘われていた、彼らの島であるオリブ島のオリブ村に一緒に行くことにした。
離島と言っても、海から突き出した島では無く、空に浮かぶ島。定期船と言っても、海の上を行く船ではない。空を飛ぶ魔導船だ。
オリブ村の特産は言わずもがな油で、オリブの実の果肉から搾られた植物油である。ここで取れるオリブ油はとても良質な事から、貴族などに大人気であり、国にも納められているほどだ。この島までの定期船が少ないのは、商人たちがプレミアをつけたいが為ではないかと噂されている位なのだから。
そんなオリブ島にダンジョンが発見された。そのダンジョンはまだ三階層までしか攻略はされていないが、そこまで難しいものではなく、初心者向けだろうと考えられている。冒険者ギルドへは報告しているが、離島である上、定期船の便の間隔が長い事がネックとなって、そこにわざわざ行こうなんて言う物好きの冒険者はほぼいない。それに、この定期船は大手商会の個人所有と言う事で冒険者の乗船は門前払いとなっている。そのお陰でオリブ村は冒険者に荒らされる事なく、今なお長閑だ。
そして、俺はと言うと、マルクスの計らいでこの島までの定期船に乗せてもらえるように話をつけてもらった。
オリブ島へと向かうまでの三週間、冒険者ギルドの依頼を真面目に受けてた事と人が嫌がる依頼も積極的に受けた事もあり、見習いを卒業して、今はF級の冒険者になる事ができた。
マホラ草採取は常駐なので、これはルーティンとして、スライム狩りや下水掃除の仕事を受けて小銭を稼ぐ。
ここ王都では運河への汚水を流す前にスライムで水を浄化するような下水システムになっている。その為にスライムの需要は大きいのだ。それ以外には、魔物肉の採取依頼だ。小型のホーンラビットやレッドボアなどの狩りを積極的にして、職業『日本人』のレベルも2に上げた。
「よ、お帰り!」
「お、ショート、そっちの方が早かったんだな」
マルクスは自分のベッドに寝転ぶと大きく伸びをする。
「なぁ、ショートは明日の予定はあるのか? 」
「採取依頼は受けるつもりだけど、何かあるのか? 」
「ああ、実は俺たちワイルドボア討伐の依頼を受けたんだけど、ショートも一緒に行かないか? 」
ワイルドボア、Dランクの魔物で、たぶん三人でも楽とは言えないが討伐は可能だと思われる。
「どうした? ワイルドボアだったら三人でも大丈夫だろ」
「そうなんだけど。どうも依頼内容虚偽があるんじゃないか? って話を先輩冒険者から聞いたんだよ」
依頼を出した村長があまり信用できない奴だと言うのだ。以前、村を荒らす魔獣が一頭だと言うんで行ってみたら
「だから、もし受けてしまったんなら、もう一人くらい付いて来てもらったほうがいいんじゃないか? ってアドバイスをもらったんだ」
済まなさそうに、都合が悪いなら仕方ないけどと言うマルクス。
するとだ、ピコンと言う知らせが鳴る。
・クエスト012:パーティーを組んでワイルドボアを三頭討伐しろ(SP10)(済)
えええ、今回は二頭どころか三頭かよ。どんだけ、村長ってケチ臭いんだよ。
「おお、行ってもいいぞ」
三頭だとマルクスたちだけじゃキツイだろうし、SP貰えるなら美味しい。
そして次の日の朝、依頼のあった村へとやってきた四人。ワイルドボアが畑を荒らしているので討伐してほしいと言う内容だ。村から出て、畑に行くとそれはいた。
村の畑には、巨大なイノシシの魔物のワイルドボアがいた。鋭い牙をむき出しにし、荒々しく畑を掘り返して収穫前の芋を貪り食っている。その横には少し小ぶりのボアが二頭寄り添って食っていた。
「こっちもハーレムかよ!」と、小さく吐き捨てる俺。
「あん、何か言ったか? 」とマルクス。
「いや、ちょっと独り言」
「それにしても三頭かよ。討伐依頼は一頭だったはず。流石にこれはギルドへの虚偽申請を絶対に追及してやる」と、怒り心頭のマルクスたち。
「早速、討伐といきますか」
皮鎧に身を包んだ剣士のマルクスは、両手に剣を握りしめる。シーフのジルは、身軽な動きでワイルドボアの後方に回った。魔法使いのエミリーは、魔力を込めた杖を掲げ、魔法詠唱の準備をする。そして俺はと言うと、ワイルドボア♀にエミリーの詠唱が邪魔されないように防御魔法のシールドを張り、マルクスとジルにプロテクトとクイックをかけた。
三頭の中の一番大きなワイルドボア♂が俺たちに気付き、マルクスに突進を仕掛けてきた。マルクスは冷静に剣を構え、タイミングを見計らって跳び上がり、ワイルドボアの背中に飛び乗ると、大きく剣を突き刺した。ワイルドボアは必死でマルクスを振り落とそうとするが、余計に剣が突き刺さる。
ジルは隙をついてワイルドボアの側面に回り込む。鋭いナイフを構え、ワイルドボアの足を狙う。一瞬の隙をついてナイフを突き刺し、ワイルドボアをよろめかせる。そして、マルクスが飛び退いたのを見届けると、エミリーの巨大なファイアボールにてボアに止めを刺した。
後の二頭は、俺が眠らせてから、サクッと止めを刺す。そして、戦闘はあっけなく終わった、のだった。
「こんなんでいいのかな? なんかショートってずるくない? 」
ずるいずるいと、ジルがプリプリとなっている所を、エミリーが慰めている。マルクスは乾いた笑いで誤魔化している。
「ショートはショートだから、深く考える方が負けって事で」
◇◇◇
ショートがマルクスたちとワイルドボアの討伐依頼に行っている時、冒険者ギルドに騎士服を着た青年が老齢の紳士とやってきた。その二人は受付へと向かい、ギルド職員へと声をかけた。
ギルドにいる者達は騎士様が何の用だ? と、興味深々の様子だが、残念ながら受付の会話は防音装置の為、外には聞こえない。
「ショートと言う少年が新人冒険者としてやっていると聞いてね。簡易宿泊所に滞在してると言う話なのだが、今はどこにいるのかな? 」
「ショート? ああ、あの新人F級魔法使いの子ですね。えっと、今は何をしてましたかな? 」
受付のギルド職員は冒険者ギルドの依頼受注台帳をペラペラめくっていくと一つの項目に目を止める。
「あ、今は宿泊所の仲間たちと討伐依頼に出てますね。ワイルドボアですね。Dランクの魔獣ですから、F級の彼らでしたら、少し時間がかかるかも知れません。帰るのは二、三日後でしょうか」
その返事に騎士の青年は苦い顔をする。
「困ったな。明日から私は仕事で遠征に出る事になっているからな……」
仕方ない。残念だがまた来るとしよう。そう言って、彼らはその場を去っていった。
その後、受付の交代時間になった事で、その時の受付は仕事を終えて帰る事となり、やっと帰れる事での安堵感から引き継ぎをついつい忘れて帰ってしまった。それからしばらくしてショート達はギルドに帰ってくることになる。
◇◇◇
ショート達の報告と討伐部位の数によって、村長の虚偽がバレてしまった。前回の事もあり、 村長はこってりと絞られ、二度と同じ事はしない事、討伐報酬を三倍払って貰う事で決着する。
四人で山分けし、打ち上げをした後、宿泊施設のベッドで寝転んで、
今後、ダンジョンに入る事でレベルと魔法は上げておきたい。
<保有
<※SPクエストリスト>状態絞り込み↑未↓済
====(紹介クエスト)====
・クエスト008:職業レベルを五つ上げる(SP3)【未】
・クエスト009:【魔改造】スキルのレベルを一つ上げる(SP2)【未】
・クエスト010:初級ダンジョンのダンジョンボスを倒せ(SP5)【未】
・クエスト011:魔法科の入学試験に合格する(SP10)【未】
・クエスト014:E級の冒険者になる(SP10)【未】
・クエスト015:オリブ島への定期船に乗り込め(SP1)【未】
・クエスト016:定期船でワイバーンを魔法で撃ち落とせ(SP5)【未】
・クエスト017:オリブ油での料理をご馳走する(SP3)【未】
====(済クエスト)=====
・クエスト001:冒険者ギルド試験を無事突破せよ(SP1)(済)
・クエスト002:採取依頼のマホラ草五束を鑑定を使って達成する(SP1)(済)
・クエスト003:冒険者ギルドの依頼を三件達成する(SP3)(済)ボーナス
・クエスト004:冒険者ギルドの依頼を五件達成する(SP1)(済)
・クエスト005:王都の物見の塔の最上階まで自力で一気に駆け登れ!(SP1)
(済)
・クエスト006:魔法少女を救え!(SP5)(済)
・クエスト007:レベルを一つ上げる(SP1)(済)
・クエスト012:パーティーを組んでワイルドボアを三頭討伐しろ(SP10)(済)
・クエスト013:F級の冒険者になる(SP5)(済)
島へと渡る渡航クエストで何気に不穏なものが目に入ったけど、うん、見なかった事にしよう。
今、SP《スキルポイント》は28ポイントある。クエスト009の【魔改造】をLv.1に上げるのに何と20ポイント。それを上げたら2ポイント貰えるので、18ポイントで魔法の改造が出来る事になってお得だってことのようだが。これってポイントを使えば一割返ってくると言う、どっかの大手スーパーみたいだね。うん、ポイ活最高!
とは言え、20ポイント使ってまで【魔改造】を今上げる必要があるのか? を考えた。
20ポイント消費はきついよな。ダンジョンで活動するには、【器用貧乏】を上げておきたいだとか、【忍耐】【回避】の上昇も必要だねとか、そんなことを考えたり。錬金はまだいらんけど、【寡黙】の無詠唱は取っててもいいかな? とか、色々考えてしまう。そこで今回は【器用貧乏】【忍耐】【回避】【寡黙】を上げておくことにした。これで全部で20ポイントの消費だ。
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名前 : 小鳥遊 翔斗(タカナシ ショウト)
種族 : 人族(転生者)
職業 : 日本人 Lv.2
スキル :
【器用貧乏】 Lv.2/SP6
【寡黙】 Lv.1/MAX
【勤勉】 Lv.1/SP5
【魔改造】 Lv.0/SP20
【本音と建前】 Lv.1/SP3
【忍耐】 Lv.2/SP6
【回避】 Lv.2/SP6
【集団行動】 Lv.0/SP5
【潔癖症】 Lv.1/SP5
【几帳面】 Lv.1/SP10
≪スキル依存取得魔法≫ 魔力量 : 600
┣・属性魔法 : ファイアボール、ライトボール、ライトアロー、ダークボール、ウィンドカッター、ウォーターバレット、アイスランス、サンダーボール、サンダーアロー、ストーンバレット
┣・防御魔法 : シールド、マジックシールド、バリア
┣・援護魔法 : プロテクト、クイック、ブースト
┣・状態異常魔法 : スリープ
┣・浄化魔法 : クリーン
┣・回復魔法 : ヒール、キュア
┗・生活魔法 : ファイア、ウォーター、ライト
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お読み頂きありがとうございます。本年度最後の更新です。これからも出来る限り毎日投稿したいと思っています。もしよろしければ、☆を三回押していただければとても喜びます。フォロー、ハートもお願いします。執筆の励みになります。
どうかよろしくお願いします。良いお年を!
(ステータスが間違っていたら、こっそりと修正します><;)
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