第9話 大賢者との遭遇
職業が大賢者(転生者)だと知った俺は咄嗟に、その少女のステータスを確認した。
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名前 : エアリアーナ・ルーベン・アナトリア
年齢 : 10歳
種族 : 妖精族ヒト科(転生者)
職業 : 大賢者 Lv:1
スキル : (初期)連射、無詠唱、魔力回復
魔力量 : 1000
・光属性魔法:ライトボール
・闇属性魔法:ダークボール
・聖属性魔法:***
・火属性魔法:ファイアボール
・水属性魔法:ウォーターバレット
・氷属性魔法:***
・風属性魔法:ウィンドカッター
・雷属性魔法:***
・地属性魔法:***
・次元魔法:フライ
・防御魔法:シールド、マジックシールド
・援護魔法:プロテクト、クイック
・回復魔法:ヒール、キュア
・生活魔法:ファイア、ウォーター、ライト
・特殊魔法:***
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ナ・ン・デ・ス・ト!!
なにか凄い状況なんですけど、表示されている属性魔法で***は今後覚えるであろう魔法っで事? それにしても女神様頑張ったんですね。これでLv.1かい。スキルも魔法も初期だとは、この後の成長が恐ろしすぎやしませんか?
そう言えば、女神様は魔王なる者が出現するイベントを設定しちゃったって言ってたよな。それをどうにかする為に地球から四柱の優秀な魂が召喚されたわけだけど。
だからさ、俺は召喚された勇者たちが魔王は討伐してくれるもんだと思って、全くもって「アウトオブ眼中」だったわけですが。もしかしたら、この遭遇は、なんかヤバいんでねぇ。
ここで下手に大賢者と繋がりを作ったら、俺も巻き込まれるかもしれない。この場はどうにかして、それは阻止しなければ。なんとか、ここは乗り切らないといけない。
だって、魔王なんて勘弁して!
目の前では魔物と少女の壮絶な戦いが繰り広げられている。この魔物はもしかしたら、この少女から逃げてこっちまでやって来たんじゃないの? もうこの魔物に対しては「ご愁傷様」としか言えない。アンナ先生はと言えば、俺たちがいる隣の木の影に気付かれないようにスッと隠れたようだ。流石だ。
あの魔物たぶんBランク相当だろう。冒険者ギルドの資料で見た気がする。戦闘は少女が押してはいるが、Lv.1である事での魔法の威力が弱すぎる事で、相当にイラついているようだ。だが、それでも、すぐにでも討伐は完了すると思われる。
そうなればきっとレベルも上がって俺はこの少女のステータスはもう見れなくなってしまうわけで。そうなれば、俺の解らないスキルが発現する可能性がある。なにせ、あの女神だ、何するか分かったもんじゃない。
俺が同じ転生者だと、あいつが気付いたら、それが、もう、恐ろしくて仕方ない。今はまだ無理だ。
「(に、逃げないと……)」
俺はフィリスの手を引いて、そっとこの場から去ろうとした。だが、フィリスは動こうとしない。恐怖で固まっているのか? と思いきや、大賢者少女をキラキラとした瞳で見つめているではないか。
「フィリス、駄目だ! あいつはヤバイ。逃げないと」
と、必死で頼みこむも、それでも、ボーっとした状態で動こうとはしないのだ。何かが変だ。
仕方なく、【忍耐】で上げた身体能力で有無も言わせずフィリスを抱え上げる。それでも嫌がるでも暴れるでもなく抱き上げられた事に抵抗しない。抱き上げられた状態でも、例の少女をキラキラとした瞳で見つめ続けている。
仕方なく、彼女をお姫様抱っこ状態で、気付かれないようにアンナ先生のところへと向かった。
「先生、なんかフィリスが変です。あの少女の強大な魔力に当てられたのかもしれません」
そして、あの戦っている少女は一人で大丈夫そうだ。フィリスの為にも、ここは引いた方が良いことを告げた。
「そうだわね。とりあえずフィリスを安全な所まで連れて行きましょう」
先生も戦いの状況を見ていて、勝手に手出しするのは冒険者のルール違反である事もあってか、俺の提案を割とあっさりと呑んでくれた。
それほどに、少女の戦いは強者のそれだったからだ。
◇◇◇
フィリスを抱いたまま必死で走って森を抜けた。大賢者との遭遇は未遂に終わったと、ホッとしていた所で、アンナ先生からこの辺でいいだろうから休憩しようと声をかけられた。
意識が混濁しているフィリスを降ろすと、アンナ先生はカバンから出したビンを開け、彼女の鼻にそれを近づけた。
「え、私、どうしたんですか? 」
そうして、ようやくフィリスの感覚は正常に戻ってきたようだ。
「そうね、あの戦っていた少女、見た感じ明らかに妖精族だと思うわ。妖精族は種族特性として魅了の数値がとても高いの。ましてや、あんなに魔力を放出してたら、あまり免疫のない子には、とても毒ね」
ああ、それに気づいたアンナ先生は、フィリスの状態を聞いて、あっさりとあの場を離れる決断をしたのだろう。妖精族ヒト科って、存在そのものが脅威って事? 末恐ろしいとしか言いようがない。
「それにしてもショート君は、そんな細い身体なのに、この子を抱いた状態で、よく走れたわね。君は、本当に魔法使いなの? 」
「ははは、ええ、まぁ、これでも鍛えてますから」
うん、嘘も方便。
「あのう、もしかしてって私、ショートさんに……」
「ええ、そうなの。ずっとあなたをお姫様抱っこで、ここまで走ってきてくれたのよ。あなたの素敵な騎士様って所ね」
そう言って、ふふふと笑うアンナ先生。
「ええええええ!!!」
フィリスはもう、穴が有ったら入りたいと言うような真っ赤な顔で、あわあわとして、俺に向かってほぼ90度のお辞儀をする。
「もう、恥ずかしくって顔を上げられない」と、くねくねと悶える姿がとても可愛い。
少し休憩してから王都へと帰る事にして、あの森での戦闘風景がウソのような長閑な街道を歩いていると。ふいにフィリスに声をかけられた。
「ねえ、ショートさん、ショートさんはこれからも冒険者としてずっとやって行こうと思っているのですか? 」
何を思ったか急にそんなことを聞いてきた。
「ああ、そうだな。まだはっきりと決めたわけじゃないけど。実はさ、俺は騎士魔法学園の魔法科を受験しようと思ってるんだ。そう言えば、君もだったね」
そう言うとフィリスはコクリと頷く。
「お父様がどうしてもって……」
だけど、そこに行くのは推薦じゃなけりゃ、すごく金がいるから、これから二年間は、お金を貯めるためとレベルを上げるために依頼を受けたり、ダンジョンに入ったりして冒険者で頑張るつもりだと話すと。
それを聞いたフィリスは、お父様に頼めはなんとでもなる、と言うのだ。
「いや、それはやめてほしい。自分の力で行きたいんだ。その為に俺は冒険者になったんだから」
そう、俺は魔法学校に憧れてるんだ。動く階段、喋る肖像画……。そんなのあるかどうかは知らないけど、日本人なら箒で空を飛んでみたいでしょ。ぐふふ、などと考えて、オタク心をざわつかせる俺。
そんな俺の顔を、眩しそうに見つめてくる少女がいる。
うん? なんか勘違いしてませんか?
◇◇◇
その後、無事に王都の東門へと帰って来た。フィリスはアンナ先生に任せて、俺は一人でギルドへと向かう。そこで、ギルドへ報告し、初めてギルドから受けていたマホラ草の採取依頼を達成する。そして。
・クエスト001:冒険者ギルド試験を無事突破せよ(SP1)(済)
こちらのSPクエストリストも達成。その上、
・クエスト006:魔法少女を救え!(SP5)(済)
クエスト006も(済)となっていたので、保有SPは8に増えていた。
それと、新しい紹介クエストが増えている。クエストは多分、自分の行動によって決まって来るAIみたいなものなのだろうか?
<保有
<※SPクエストリスト>状態絞り込み↑未↓済
====(紹介クエスト)====
・クエスト003:冒険者ギルドの依頼を三件達成する(SP3)【未】ボーナス
・クエスト004:冒険者ギルドの依頼を五件達成する(SP1)【未】
・クエスト007:職業レベルを一つ上げる(SP1)【未】
・クエスト008:職業レベルを五つ上げる(SP3)【未】
・クエスト009:【魔改造】スキルのレベルを一つ上げる(SP2)【未】
・クエスト010:初級ダンジョンのダンジョンボスを倒せ(SP5)【未】
・クエスト011:魔法科の入学試験に合格する(SP10)【未】
====(済クエスト)=====
・クエスト001:冒険者ギルド試験を無事突破せよ(SP1)(済)
・クエスト002:採取依頼のマホラ草五束を鑑定を使って達成する(SP1)(済)
・クエスト005:王都の物見の塔の最上階まで自力で一気に駆け登れ!(SP1)
(済)
・クエスト006:魔法少女を救え!(SP5)(済)
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