第4話 冒険者ギルド試験
そうこうしている内に、ようやく俺の番になった。ギルド職員は早速ですがと登録に当たっての説明を始めた。
「まずは冒険者登録に関してですが、身元の詮索はいたしません。但し、職業の情報はギルドにて把握はさせて頂きますが、大丈夫でしょうか? これをお読みください。文字は読めますでしょうか? そうで無ければ、こちらで説明をいたしますが……」
どうされます? と言った感じで、ギルド職員は何かの台帳を俺に見せてきた。
「はい、大丈夫です。読めます」
俺の順番が回ってくるのが遅いと思ったのは、どうも、ここで時間がかかっていたのだろう。この世界、識字率はかなり低いようだ。
内容を一通り読んでみると、冒険者登録にあたっての職業鑑定に関する同意書のようだった。職業は個人情報なのだが、ギルドとしては登録した者が何をやれるかの把握をしておかないと仕事は回せないわけだ。それと、冒険者登録試験もこの情報から実施する事になる。
「よろしければ、ここにサインをお願いします」
ギルド職員は同意書にサインを要求してきた。僕がサインをすると水晶を僕の前にスッと移動させる。
「では、この水晶に手をかざしてください」
この水晶は職業鑑定の魔道具のようで、水晶の台座に魔石が組み込まれている。俺は偽装がバレないかとドキドキしながらも水晶に手をかざした。
************************************
名前 : ショート
年齢 : 10歳
種族 : 人族
職業 : 第二種魔法使い Lv:1
魔力量 : 50
・水属性魔法:ウォーターバレット
・光属性魔法:ライトボール
・防御魔法:マジックシールド
・援護魔法:クイック
・生活魔法:ウォーター、ライト
************************************
「はい。ショート君の職業は第二種魔法使い。属性の水と光は、とても優良な魔法ですね。おめでとう! 」
職業を読み上げられた事で、俺が困ったような顔をしたと思ったのだろう。それを察してか、ギルド職員は安心してと言った感じで話を続けた。
「ああ、大丈夫ですよ。周りに防音結界が張られていますので、私たちの声は他の人には聞こえませんから」
そう言えば、それで俺の前のエミリーの時も全く声が聞こえてこなかったわけだ。
ギルド職員は水晶に表示された文字を魔道具のようなもので転写している。そして9番と書かれた木札を渡された。
「この番号が呼ばれるまで、二階にある待合室で待っていてください。番号順に試験会場に案内しますので」
どうやら俺の偽装スキルは誤魔化せたようだ。俺は木札を持ってギルド二階の待合室へと向かおうとした所、頭の中に着信音のような音が響く。そして視界の隅に小さな透明ボードが見え、そこに微かに光が点滅している。
「これ何? 」
ステータスに何かあった? と感じて、すかさずステータスボードを開いて見る事にした。
小さな声で「ステータスオープン」と唱える。
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名前 : 小鳥遊 翔斗(タカナシ ショウト)
種族 : 人族(転生者)
職業 : 日本人 Lv.1
スキル :
【器用貧乏】 Lv.1/SP5
【寡黙】 Lv.0/SP5
【勤勉】 Lv.1/SP5
【魔改造】 Lv.0/SP20
【本音と建前】 Lv.1/SP3
【忍耐】 Lv.1/SP5
【回避】 Lv.1/SP5
【集団行動】 Lv.0/SP5
【潔癖症】 Lv.1/SP5
【几帳面】 Lv.1/SP10
〈保有
<※SPクエストリスト>
・クエスト001:冒険者ギルド試験を無事突破せよ。(SP1)【未】
≪スキル依存取得魔法≫ 魔力量 : 500
┣・属性魔法 : ファイアボール、ライトボール、ダークボール、ウィンドカッター、ウォーターバレット、アイスランス、サンダーボール、ストーンバレット
┣・防御魔法 : シールド、マジックシールド
┣・援護魔法 : プロテクト、クイック
┣・状態異常魔法 : スリープ
┣・浄化魔法 : クリーン
┣・回復魔法 : ヒール
┗・生活魔法 : ファイア、ウォーター、ライト
************************************
<※SPクエストリスト>
・クエスト001:冒険者ギルド試験を無事突破せよ。(SP1)【未】
こんなものが追加されていた。これって、女神アリアの追記にあった――。
(
それでこれが最初のクエストで、冒険者ギルド試験に合格する事でSP1が貰えるって認識でいいのかな? 無事突破って書いてあるけど合格とは違うのか?
「まぁいい。SPが増えるのは嬉しい。やってやろうじゃないか!」
俺は鼻歌交じりでギルドの階段を上っていった。
◇◇◇
しばらくして、俺の番号が呼ばれた。俺と合わせて計五人が呼ばれて試験会場へと連れていかれた。その五人の中に、スキルを参考にしたエミリーとフィリスもいる。
あと二人、一人は弓使いの狩人と、もう一人は付与魔法使いだそうだ。
試験会場となる訓練場の半分が前衛職、残り半分が後衛職へと割り当てられているようだ。
物理職や前衛職は雇われた冒険者との模擬戦闘、魔法職や後衛職は的への射的による判断となるようだ。因みに、補助系職業がいた場合、物理と魔法のどちらかの受験者に補助をかけての精度を見ると言う事での選択が出来るらしい。
俺の試験は的への射的。距離はだいたい20メートルくらいか? この近的で魔法を命中させればいいという事だ。これだと楽勝だね。
最初は狩人の射的となった。何とか的の端に矢が当たって合格をもらえたようだ。二番目はその狩人に操作能力の付与をかけた付与魔法士で、付与魔法のお陰で射的の威力と命中精度が上がった事での合格だった。
そして三番目がエミリーだ。魔法職を貰ったばかりの子が、そう簡単に魔法がすんなりと使えるわけがない。それでも、エミリーのファイアボールはよたよたとだが、何とか的まで届かせられたようだ。そして試験官の合格と言う声にホッとした顔をしている。
そして次は俺の番となった。俺はライトボールを宣告してから的を狙い発射した。するとだ、SP獲得がかかっている事に気合が入り過ぎてしまったのか? 軽く発射したつもりが、ポシュっという音とともに光の玉が凄い勢いで的へと一直線へと飛んでいくと、的の真ん中を打ち抜いてしまった。
「(あちゃ、やっちまった)」
と、思ったのだが、やってしまった事は仕方がない。試験会場にいる者たちは全員が驚いた風に固まってしまっている。同じく固まっている試験官に向かって、「どう? 合格?」って声をかけ返事を待つ。一瞬キョトンとなっていた試験官もようやく我に返ったようで「ああ、合格だ」と、やっと返事をしてくれた。
俺は心の中でガッツポーズをする。が、クエストクリアの知らせは来ない。
ステータスボードも〈保有
そして、この組の最後はフィリスだ。フィリスはサンダーボールを宣告して前に出る。だが、フィリスの挙動が何気に可笑しいのだ。顔色は真っ青で、手はギュッとキツく握りしめた状態で小刻みにふるふると震えている。彼女は緊張でガチガチになっている様に見えた。
後ろの方に待機しているフィリス御付きの爺さんが「お嬢様、ちゃんと練習された通りになされれば大丈夫でございます」とか、お祈りをしながら心配そうに見ている。
そう言えば、結構、遠くの声でも耳を済ませば聞こえるようになっている。これって【忍耐】により身体能力が上がったからだろうか?
そんな事を考えていると、フィリスの周囲にパチパチとした放電の様な小さな火花が弾けだした。それは何だかかなり怪しい感じを醸し出している。徐々にその現象は大きさを増して行き、この訓練場の空気はストレスを帯び始める。
これって、【本音と建前】での空気が読めるって事ではなさそうだ?
「何だろう?! このピリピリする感じは……?」
よーく見ると、フィリスは恐怖に引きつった顔になってアタフタとしだした。彼女はどうも魔法の制御が出来ない状態に陥ってしまっているようだ。
「やばい、やばい! 」
あれはマジやばい!! これって、周りの空気が明らかに帯電してんじゃない? そう思った時だ。
「魔法が暴走します。すぐにここから逃げて! 」
大声で叫ぶ試験官の声が試験会場に響いた。
やっぱり、あの現象は魔法が暴走する兆候だったんだ。彼女の属性は風と雷だ。人の身体は水が体重の約60%、0.9%の割合で塩が解けている。電気、水、塩、これって最悪じゃないか!
いくらLv.1だとしても、あの興奮状態で暴走したら、会場だけでなく、耐性があるだろうフィリス本人にも大ダメージは免れない。
俺は咄嗟に自身へとクイックとマジックシールを張り、脱いだローブにもマジックシールドを付与すると、フィリスに向かって突っ込んでいった。
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