私の友人は困った人が多い

比呂真

悪役令嬢も略奪男爵令嬢も友人ですが

 私の名はリリアン・シュペンクラー。この王国で伯爵家の長女をしておりました。

 私には、最近、困ったことに巻き込まれた友人が二人もいます。

 今日は、その友人たちの事をお話ししましょう。


 私は当時、14歳で王国帝都学院に通っておりました。残り数日で卒業を迎えるという、そんな時期に事は始まりました。


――――


 友人の1人であるマリアンナ・ハイマント男爵令嬢から相談を受けたのです。

 その内容は、なんでも、クワトロ王太子殿下から求愛されているというのです。


 ……は?


 この子は何を言っているのでしょうか?

 王太子殿下には既に婚約者がいらっしゃいます。それも、かの有名なエレノア・シュトラウス公爵令嬢ですよ。

 彼女は才色兼備として有名で学内でも優しく男女問わず人気があります。学業も常に学年トップで3年間続け、生徒会では王太子殿下が会長、彼女は副会長を続けています。同性の私から見ても整った顔でスタイルも良く美人です。もちろん家柄は言うまでもなく、王国一の筆頭公爵家で、王家以外では最高の地位にいます。


 ちなみに、エレノアも私の友人の一人です。身分は違いますが、小さい頃からの幼馴染で、二人だけの時はエレ、リリーと愛称で呼び合っています。


 で、そんな有名な婚約者がいるのに、この子は何をどう勘違いしたのでしょう?


「マリー、あなたは何を言っているのですか? まさか王太子殿下に横恋慕したとかではないでしょうね。そんな大それたことを口にしては、不敬罪として罰せられますわ」


「違いますよ。第一、私はコンラッドがいます。コン以外の方と結婚するつもりはありませんよ」


 あぁ、そうでした。マリーの家に仕えている騎士でコンラッドという者がいます。

 私たちよりも3つほど年上でしたでしょうか、他の男爵家の三男の生まれとか聞いたことがあります。マリーとコンラッドは相思相愛でマリーの父上の男爵様も認めている良い関係と聞いていました。


 ん、ん? そうなると、マリーが王太子殿下に魅かれることは無い!?


「マリー、では何故、王太子殿下があなたに求愛していると思ったのですか?」


「これです、これ。本当は人からもらったお手紙を他の人に見せるのはマナー違反だとは思いますが、お父様とお母様に相談したら、こんなことを相談できるのは、リリーしかいないだろうから、持って行きなさいって」


 あぁ、男爵夫妻も困ってしまっているのですね。まぁ、そりゃそうですわね。身分差を考えると王太子殿下からの求愛を男爵家が断ることは出来ないわね。


「では、拝見させていただきますわ……こ、これは……困りましたね」


 えぇ、えぇ。どこをどう読んでも恋文です。それが他にも9通あります。

 これでも一部のようなので頭が痛くなります。

 一体、王太子殿下は何を考えていらっしゃるのか、一度、頭の中を覗いてみたいですわね。


「わかりました。マリーこのお手紙を1通貸しておいてください。エドワードと相談してみますわ。後、この件はエレノア様は知っているのかしら?」


「はい。お手紙は持っていてもらっても構いませんよ。なんなら全部預けたいぐらいです。えっと、私はエレノア様とは接点が無くって、あまりお話したことも無いので分からないのですが、さすがに王太子殿下も言っていない思いますよ」


「しかし、この手紙ではあなたを正妃に迎えたいと書いているので、エレノア様とは婚約破棄と言う形になります。さすがにそれは王家とシュトラウス公爵家とで話し合いが行われたはずですが……わかりました。私が聞いてみます。下手をするとあなたは泥棒猫扱いされて、ハイマント男爵家も要らぬ誹りを受けることになり、シュトラウス公爵家に睨まれでもしたら立ち行かなくなりますわ」


「私は、学園で何度か殿下から声を掛けられて、お話したことはありますが、当然二人っきりでお会いしたこともありませんし、誤解されるような言動を取ったことは無いつもりなのですよ。困ります」


「マリー、今日のお茶会は、これで失礼しますわ。この件は、とても緊急を要します。一歩間違うと国は傾き、ハイマント男爵家は潰されるでしょう。あと、念のためにコンラッド様にも今日の件も含めて、お話しておきなさいね。要らぬ誤解を招かないようにすることも大事ですわ」


「リリー、ありがとう。伯爵令嬢にお願いするのも失礼な話だとは思うけど、私たちには、手に負えなくって」


 私は、マリーに励ましの声をかけた後、ハイマント家を出て自宅へと戻った。


「はぁ、これは私だけで動いては危ないですわ。ちゃんと両親にも話しておかないと」


 夕食の後、さっそく、シュペンクラー家では緊急家族会議を行いました。両親もこの話を聞いて、頭を抱えていましたわ。


 翌日、学園に向かう馬車の中で、昨晩行われた家族会議の結果を思い出していました。

 まずは、エドワード第二王子殿下と話をして、今回の件は王家ではどのような扱いになっているのか確認する。

 あ、そうそう、エドワードは私の婚約者ですの。だから話は聞きやすいわ。クアトロ王太子殿下の双子の弟ですが、二人の性格や色々な感性は正反対なので安心です。


 話がそれました。


 その後はエレと話をしないとですわ。知っているかどうかは、別にして、ちゃんと状況を伝えておかないとマリーとマリーの家族が危険ですわね。エレが強権を振るう事はしないと思うけど、家と家になると危ないから、きちんと話を通しておかないとね。


 よろしいでしょう。この順番で行きましょう。


 授業が終わったあと、私はさっそくエドワードを捕まえて話をすることにしました。


「エド、まずは、これを見てちょうだい」


「うん? これは何だい。手紙だよね、リリーから僕にかい? 目の前にいるのに?? わ、わかったよ読むよ……はぁ?? え、ええ? 兄上からマリアンナ嬢に??」


「エド、このような手紙は他にも9通以上もマリーに届けられています。この手紙の影響力は分かりますよね。王家から男爵家に対してですよ。これは王家の正式な行為ですか?」


 そうですの。貴族と言うのは王族家をトップに公爵、侯爵、伯爵までが上級貴族で、さらにその下に子爵、男爵と下級貴族が続きます。この手紙はトップから一番下の者に対して、命令でしかありません。そんなことを王家といえども、気楽に行ったら秩序は乱れ、貴族たちが謀反を起こしかねません。そうです。国が崩壊するのです。


「ま、まさか。こんな、こんな横暴なことを。シュトラウス公爵の令嬢に婚約破棄を突きつけるなんて、娘の経歴に傷をつけられて公爵が黙っているわけがない。公爵を敵に回した上に、他の貴族からも、次は自分の家に何か言ってくるのではと、疑いの目で見られてしまう。国を潰した最後の王家になどなりたくもない」


 良かったですわ。エドは大丈夫なようです。思わず心配してしまいましたわ。

 まぁ、エドは頭を抱えていますが。


「この件は国王陛下と王妃殿下はご存じですか?」


「いや、知らないはずだ。こんな馬鹿なことをすれば、どうなるかわかっているはずだ。兄上は、あまり頭の調子が良くないとは常々思っていたが、これほどとは……リリー知らせてくれてありがとう。さっそく父上と母上に話しておく。エレノア嬢の方はどうしたものか……」


「エレは私の方から話しますわ。ここは女同士の方が話しやすいかと思いますので」


 そういうことで、今度はエレです。


 あぁ、一足違いでした。エレの周辺に良く居る令嬢たちがいたので、エレのことを聞くと既に帰られた後でした。明日にするか? いやいや、駄目です国王陛下に今日にでも話が上がってしまいます。そんなことになれば、シュトラウス公爵に話が行くかもしれません。


 失礼を承知で、先触れも無く、公爵家に突撃するしかありません。お互い旧知の仲と言うことで今回はお許しを頂きましょう。


 はぁーー。マズイことになりました。

 公爵家に突撃したのは良かったのですが、エレはお着替えをしていると言うことで、なぜかマイゼル公爵閣下とお茶をすることになったのです。もちろん私は小さい頃から知っているので、マイゼルおじ様と呼んで親しんでまいりましたが、今回の話は気まずいです。


「で、リリー。突然ここに来たということは、余程の事があったのであろう。どうせ、ワシの耳に届くのは時間の問題だ。話してみなさい」


 はぁーー。もはやこれまでですわ。マイゼルおじ様に隠し事は通じません。お茶会と称してサロンに連れてこられた瞬間に分かっていましたわ。あぁ、ちょうどエレも入って来ましたのでお話するしかありません。


「それでは、お話します。まずはこれを見てください」


 私は、そういってテーブルの上に手紙を広げた。エレとマイゼルおじ様は二人して覗き込んでいます。ふふふっ。二人は仲が良いですわ。


「ほう。このシュトラウス公爵家を蔑ろにするつもりかな。して、このハイマント家の娘は何か言っておるのか?」


「いえ、この宛先であるマリアンナ・ハイマント男爵令嬢は困っていました。もともと彼女には好きな人がいて、その人との結婚を願っていました。それなのに突然このような手紙が他にも10通以上届いて、男爵家のご両親ともども頭を抱えている状態です」


「リリー、私もマリアンナ嬢は知っているわ。話はあまりしたことがありませんが、人懐っこい感じの子ですわよね。何度か殿下が、彼女に声をかけていたのは知っていますが、なぜこんな事になっているのでしょう?」


 気のせいでしょうか、わずかにエレがピリっとした気がしましたが。


「実はマリーもわかっていません。マリーとは友人ですが、それで庇っているわけではありませんよ。マリーは男爵家とは言え、貴族としても淑女としてもマナーをしっかり守れます。本人も勘違いされるような言動はしていないと言っているのでおそらくマリー側に非はありません」


「ふむ、となると殿下が勝手に勘違いして動いているのか、それとも王家に邪心があるのか?」


「おじ様、王家にも邪心はないと思います。今日、エドにこの話をしたところ驚いて、頭を抱えていましたわ。エドと話した感じでは、少なくともエドは、これが、どのような事態を招くか理解しておりました。そして国王陛下も王妃殿下も知らないのではと言っていましたわ」


「ほう。よかった。エイリッヒと国を賭けた喧嘩をしなくて済みそうだな。リリーこの手紙を預けてくれんか? エイリッヒにも事前に話しておかねば、奴が心臓発作で死にかねん」


「はい、それは構いませんわ『あ、あの。ちょっと相談なんですが』」


 ん? 何やらエレが歯切れの悪い割り込み方をしてきましたわ。淑女のマナーとして会話の途中で割り込むなんてエレがするはずもありません。余程何かあるのでしょうか?


「実は、私に関して変な噂が流れているようでして……それで、少しマリアンナ嬢を疑って居たところがあるのです。ごめんなさいね、リリーの友人とは知らなくって」


 エレから詳しく話を聞いてみると、エレがマリーを虐めているとか、脅しているとか、意地悪をしたとか、はたまた、暴力を振るっているのを目撃したとかの噂が流れて、実はエレノア公爵令嬢は悪女なのではと噂されているらしいと、エレの取り巻きの令嬢たちが教えてくれたそうだ。


「え? マリーは、エレとあまり話したことが無いって言っていましたわ。だからマリー自身も、そんなことをされた覚えはないと思いますわ」


「えぇ? それは、どういうことなんでしょうか?? やったと言われている側もやられたと言われている側も身に覚えがないなんて、それなのに私が悪女扱いなのですか??」


 何かした覚えのない加害者のエレノア。何もされた覚えのない被害者のマリアンナ。噂は何処から出たのかしら?


「エレ、明日の放課後は時間ある?」


「ええ、大丈夫です。明日は生徒会もありませんので」


「では、明日の放課後、私たちとマリーを交えて話をして、噂の出どころを調べましょう。おじ様は王家の方をお願いしますね」


「「わかった(わ)」」


 はぁ、なんだか疲れますわ。しかし、このままではマリーもエレも碌なことには成らない。マリーは身分を弁えずに殿下に横恋慕して公爵令嬢から略奪婚した娘となり。エレは格下の男爵家の娘に婚約者を奪われた情けない娘で、殿下からも捨てられるような瑕疵があるという酷い扱いになる。まぁついでに殿下も、全貴族から疎まれることになるので、もし国王になった日には内乱が起きる可能性がある。まぁさすがに現国王が止めるとは思うけど。



 翌日、授業を終えた後で、エレとマリーを私の家に招待して話を聞くことになりました。マリーは初めは緊張していましたが、二人とも穏やかな感じでお話して、最後には仲良くなっていたので安心しましたわ。

 それで、わかったことは、二人とも全く身に覚えが無いと言う事だけでした。


 二人が仲良くなったのは良いのですが、このまま放っておくというのはいけませんね。貴族社会と言うのは、変な噂だけで、彼女たちに実害を与えることもあります。徹底的に調べて大元を潰しておかないといけませんわ。


 私は、学園内の知り合いにお手紙を出すことにしました。この国では、メイドや下男達がお手紙を持って相手先のお家に届けてくれます。人によってはすぐに返事を書いて、すぐさま持たせて帰すこともあります。


 伯爵家、子爵家、男爵家のご令嬢とご令息に出しましたわ。さすがに私一人では書けませんので、侍女たちに手伝ってもらいました。

 すると、意外なところから情報が入りましたわ。何と私の侍女をしている者の妹が同じ学園に通っているというのです。まぁ私の1学年下でしたが、ただ今回の件は他の学年でも聞いたことがあるというのです。


 何故、私や私と一緒にいる人たちには聞こえてこなかったのでしょう?

 確かに派閥の違いはあるでしょうが、あえて私には聞かせないようにしていたのではないでしょうかって、例えばエレと仲が良いことを知っていて、介入して欲しくないとかね。思わず勘繰りたくなりますわ。


 お手紙の返事が続々と集まってまいりました。


 侍女の妹から聞き出した情報と、お手紙で返って来た内容を照らし合わせると……

 うっすらと全貌が見えてきました。見えてきましたが……これは!



 今回の件、おおよそ分かって来ましたので、エレのお家にエドとマリーでお邪魔して当然エレとエレのお父様にも出席して頂いて、私の調査した結果から推定される全貌をお話ししたところ皆様で頭を抱えてしまいました。

 はい。私も自分で考えて頭が痛くなりましたとも。


「はぁ。わかった、いや分からんが、わかった。そしてこれは卒業パーティで行われるのだな」


「はい。周囲の情報をまとめるとその可能性が一番高いかと」


「では、当日はエイリッヒたちも呼び出そう。あいつらにも責任があることだ」


「マイゼル。何とお詫びしたら良いのか分からんが、本当にすまない」


「エドワード殿下の所為ではありませんよ。大丈夫です。後はワシらに任せてください」



 いよいよ、来てしまった卒業式。

 私やエレ、マリー、エドはおそらく学園長の話をちゃんと聞いていなかったのではないでしょうか。それも仕方がありませんわ。この後に控えている卒業パーティのことでいっぱいです。


 はぁ、始まってしまいましたわ卒業パーティ。皆様、学園内にあるダンスホールに移動です。


 冒頭は生徒会長であるクワトロ王太子殿下の挨拶です。

 クワトロ王太子殿下、そして続いて副会長であるエレノアも壇上に上がります。クワトロ王太子殿下の側近二人が殿下の後ろに控えて仁王立ちしております。


「やあ皆、今更言う事でも無いが俺がクワトロ王太子だ、今日は卒業を祝って話をするところだが、その前に伝えておきたいことがある。エレノア、お前との婚約を今ここで破棄することを宣言する」


 シーンと言う音が聞こえて来るかのように静まるダンスホール。

 それに抗するかのように王太子殿下の声が再び聞こえ始めた。


「はっはは。びっくりしただろう。俺がお前の所業を知らぬとでも思っていたのか、これまでのマリアンナへの陰湿な虐めと暴力、暴言の数々、さすがに目に余るものがある。そのような者が我が婚約者として居座り、あまつさえ国母になど到底あり得ぬ。貴様は今日を以て、婚約者でもない。さらにこのまま国外追放とする! お前たち、エレノアをひっとらえて摘まみだせ」


 殿下の言葉に従って動き出す側近たち。

 はぁ、やはり始まってしまいましたか、断罪の茶番劇です。


「クワトロ。何をしておるのだ。これは何の騒ぎだ」


 登場してきたのは国王陛下。近衛騎士を連れての登場です。

 まぁ、裏で隠れてもらって、私が登場の合図を送ったのですけどね。


「父上、ただいま、エレノアの婚約破棄と国外追放を言い渡したところです。そして俺はマリアンナ・ハイマント男爵令嬢を新たな婚約者として宣言する」


 ホール内がざわめく、ざわめく。まぁそりゃそうでしょうね。かの有名なエレノアとの婚約を破棄して国外追放までしておきながら、男爵令嬢を突然婚約者にするって言い出したんですから、まともな貴族なら頭を疑いますよね。

 当の男爵令嬢は端っこで頭を抱えていますけどね。マリー、もう少しの辛抱ですよ。


「ほう、何故、突然マリアンナ嬢が出てきたのだ。ワシは知らなかったがお前と親しくしておったのかの?」


「はい。あれは先月の事でした。マリアンナが落としたハンカチを拾ってあげたのが始まりでした。彼女に落としたハンカチを渡してあげると、何とも素晴らしい笑顔で、微笑んでくれたのです。あの瞬間、俺はわかりました。この人が俺の運命の人だと」


「ん、ん? 運命の人だ、と?」


 あぁ、これはもう駄目ですね。王家としての役割や責任を理解していませんわ。

 それしても運命の人って何でしょう?

 殿下の頭の中にはお花が咲いているようですね。


「そうです。父上、エレノアとは政略的な繋がりでしかありません。もはや我が王国は安定しております。いつまでも政略結婚など必要のないことなのですよ。それよりもお互いに好きになった者どうしが結婚した方が良い時代になったのです」


 お互い好きになったって、マリーは全く好きになっていませんよ。迷惑がっていますよ。まぁ、今はホールの端っことは言え、人前にもかかわらず、大きく口を開けて固まっておりますが。


「お前は先ほど、エレノアに非があるようなことを言っていなかったか?」


「はい。もちろんです。エレノアには本当に問題が無いのか、徹底的に側近たちに調べさせました。そしたら、出るわ、出るわ。この女はとんでもない者であったのです」


 好き勝手に言われているエレは、冷めた目でクワトロ王太子殿下を見つめている。きっと彼女も終わったって思っているのでしょうね。

 うん。もう良いでしょう。私は目で『エド、出番です』と合図を送る。


「兄上! 何を馬鹿なことを言っているのですか! 側近に調べさせただけで、自分では確認もせずに人から聞いたことだけで鵜呑みにしたのですか!? 王家がそんなことでは、傀儡政権となるか周辺国のカモにされますよ」


「何を言っている、エドワード。弟のくせに兄に口出しをするな! 第一、周辺国もそんな事はしない。そんな時代は、遠い昔の話だ」


「そうですかな兄上。おや、お前は兄上の側近エバンスじゃないか。お前、隣国のユハース帝国から金を受け取っているようだな。ほう、そこにいるのはタフグランドか、お前はダハウスト王国から貰ったと聞いたぞ。はっはは。兄上の側近は周辺国から金を貰ってばっかりですね。本当に変な意図は無いのですかね?」


「んな! おい、エバンス! タフグランド!! お前たち。本当か!?」


「兄上、エレノアは7歳のころから徹底した王妃教育を受け婚約者候補として傍にいたのですよ? その彼女が、そんな馬鹿なことをするような者か分からないのですか? 自分の妻となる者の情報ぐらい、自分で考え自分の目で見極めないで、どうするのです。多くの情報を聞いてそこから、判断するのが我々王家の務めです」


「クワトロ。お前の情報源は、その二人であろう。リリアン嬢が調べてくれたぞ。そして、その二人についてはマイゼル・シュトラウス公爵が調べてくれたよ。その者達は周辺国から金品を受け取り、お前とエレノアの婚姻を邪魔することで国力の低下、さらには内紛まで発展させるつもりだったようだな」


「ま、まさか。違います国王陛下。わたしは、ただ……」


「黙れ! 貴様らに発言を許可した覚えはない!! 近衛兵!この二人をクワトロと共に国家反逆罪で捕まえよ」


 あぁ。近衛兵がクワトロ元王太子殿下と側近の二人を連れて行ってしまった。



 ……残された私たちのもとに、静かにゆったりとした音楽が流れ始めた。


 控えていた演奏者が奏でだしたのでしょう。私はエドに連れ出されて、ホールの真ん中でファーストダンスを踊り出したのでした。




 後日、クワトロ元王太子殿下は(頭の)不治の病ということで廃嫡となり幽閉となった。やはり王族が国家を揺るがす騒ぎを起こしたのですから罪は重いですわ。そして、側近の二人は処刑。側近のお家は取り潰しとなった。

 そして、その領地は、迷惑料としてシュトラウス公爵とハイマント男爵が受け取ることになりましたわ。その結果、ハイマント家は男爵から子爵に陞爵しょうしゃくとなりましたわ。

まぁ今回の件では、私はタダ働きですわね。


 そうそう、今回の騒動で巻き込まれた面々の、その後の話ですが。

 まず、エレノアですが、何と、あの騒動の後、第三王子との婚約が発表されました。あんな優秀な方を、王家が手放すわけありませんわね。第三王子は私たちよりも3つ歳下なので、実際の婚姻は王子の卒業を待ってからとなりましたが、エドの話

では第三王子はのようなので安心しました。


 続いてマリーは、卒業後すぐにお目当てのコンラッド様と結婚しましたわ。私とエレも結婚式に呼んで頂いて盛大にお祝いしましたわ。お二人は幸せそうですわ。


 最後に私ですが、エドワード王太子殿下と結婚しましたわ。クワトロ様が廃嫡となったので、エドが王太子となり、そのエドと結婚しましたので、私は王太子妃と呼ばれております。


 これからはエドと一緒に、この国に貢献して参りますわ!


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