十五日目の鐘
身を起こすと、とても軽い。体が本当にあるのか疑うくらいに軽かった。
くるりと振り返ると、思ったとおり出入り口があった。誰かが来たばかりなのか戸は開きかけ、上階へ向かう階段がある。
ウェスペルの体は衝動的に動いていた。薄暗い階段を駆け上がる。螺旋になった段を昇りきると、幅の広い廊に出た。左右は頭よりやや高い位置から淡く闇が薄まっている。燭台の光だ。
暖かな灯火が照らす自らを載せる台は、本物と見紛うほど精緻に草花と蔓を形作る。
足元では磨き上げられた木の床が、長く先へ延びている。足裏に感じる冷えた空気はあの時よりもさらに冷たいけれど、この静謐な夜の空気、やはり間違いようもない。
「シレア城だ……」
まさか、と思うが、鮮明に頭に残る城の姿は、目の前に広がる光景と全く変わらない。夜のシレア城だ。
そして地下から上がったこの位置は、ウェスペルが何度か赴いたあの場所の近くだ。
考えるよりも先に、足が向きを変えて駆け出した。
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