同棲ラブコメ 俺とルーチェとエロい先生

俺とルーチェとエロい先生~知的で可憐な少女セクサロイド(自称)が俺の部屋に住み着いたんだが~

 ◆エロ書きてぇ!! と性欲爆発した時にパッションのままに考えたラブコメディ(コメディ強め)


 憧れの天才少女先生が、自分を恋愛対象にしてくれない主人公をその気にさせる為に、自分自身を開発した新型アンドロイド(性奉仕機能あり)と偽って押しかけてくれたらうれしいよね? これが【へき】よ。


 ◆第一話 俺と先生


「時に助手くん、君はあれだね? えっちでカワイイ女の子は好きだね?」


 突然な質問で返事に窮した。意図が分からなくて考えること数秒、戸惑いながら「そりゃあ嫌いじゃないですけど」と返事を返す。


 いや、返そうと思った。


「や、みなまで言わなくても大丈夫! 野暮なことを聞いたね。君は性欲向上著しい男子大学生。しかもこんな研究室にこもりっきりの童貞なのだから、えっちな女の子が嫌いなワケが無かった! いや本当にすまない。当たり前すぎる事を聞いてしまって。天才と呼ばれる私としたことが失言だったよ」


「いや、まぁ、はぁ……」


 俺が在籍する和歌囃子わかばやし工科大が誇る令和のマッドサイエンティストこと、雲仙院うんぜんいんクラリーチェ教授は研究室の椅子に腰かけながら、オーバーサイズの白衣から伸びた小さな足をふりふりと続ける。


「一見人畜無害そうに見える君だが、煮えたぎる獣欲をその胸の内にふつふつと煮えたぎらせているなどと考えるまでもなくわかる事だった。その証拠にほら」


 ぷちぷち、ぺら


「ちょっとそこのマグカップを取ってくれないかい?」レベルの気楽さで、ブラウスの前を外し胸元をはだけさせたのだ。小ぶりだが形のよい胸と下着が見える。その下には真っ白なお腹も続く。


「……って、先生、いきなり何をしてるんですか!」

「何とは失礼な。ちょっと露出してみたんだよ。君が喜ぶと思って。好きだろ私の胸。知ってるんだゾ」

「す、好き、とか。いや、好きだけど……はしたないですよ!」


「君が助手をしてくれているのは私に気があるからだと認識しているんだが。いやはや。ふふふ、私の推察が間違っていたかなぁ?」


 にやにやと悪戯っぽい笑みを浮かべながら先生は俺を仰ぎ見る。仰ぎ見る格好なのは先生が小柄だからだ。身長140センチちょいの先生はちょこんとオフィスチェアに座ったままくるくると回転を始める。


「ふふふ、いやぁ、助手くんをからかうのは楽しーなぁ、ふふふ、うふふふ」


 くるくる、くるくる。まだ回る。

 しつこいくらい回ってやっと動きが止まった時、先生は真っ青でグロッキーになっていた。


「ふ——。ちょっと気持ち悪くなったよ助手くん」

「それだけ回ればだれでも三半規管バカになりますよ……。目をつぶって上向いててくださいよ」


 上を向いている先生をしり目に、俺の方も問題を抱えていた。さっきの奇行に驚いて持っていた珈琲をズボンにこぼしてしまっていたのだ。熱い珈琲だったから、沁みてしまい正直かなり熱い。


「くそ、これシミになるな」

「おおそれは大変だね。早く脱いだ方がいいのでは? ああ、脱ぐのはここでいいよ。見ていてあげるからさ」

「絶対に嫌ですって。あと、さっさと前閉じてください、いつまで見せてるんですか」

「良いじゃないか減るもので無し」

「俺の理性が減るんですよ」


 視線を逸らす俺をしり目に、先生は「やれやれだ……」みたいな顔をしながらブラウスのボタンを戻していく。その速度はやけにゆっくりで、絶対俺の反応を楽しんでいる。


「どうだい? 今のは有効だったかい? 私は可愛かったかい? 欲情したかい?」

「そういうのはやめなさいと言っています」

「えー……、これでも拒否なのかい……、ぶーぶー」


 ブーイングと共に先生の頭がゆらゆら揺れる。それに合わせて背中まで伸ばしたくせのある赤毛もゆらゆらと揺れた。そのしぐさはやけに可愛く、年相応の女の子のものだ。


 そう、年相応だ。大学で教鞭をとり博士号まで持っているこの先生は、女の子なのだ。


「あのですね。先生は今、世界初の完全自立型アンドロイドの開発という大事業の最中なんですよ! 良いかげんアメリカに行かなきゃいけないのに遊んでる場合じゃないですよ」


「ん……、まぁ、そうではあるんだけどね」


 先生は納得しかねるみたいな顔で、俺たちの背後に視線を移す。そこには、強化プラスチックと複合金属が複雑に組み合わさった等身大の人型ひとがた、未だ外装を取り付けられていない素体のままのアンドロイドボディが強化ガラスのケースの中に佇んでいた。


「ルーチェをアメリカに持っていって、合成皮膚ナノスキンを装着するんでしょう? それから大統領にも会うんですよ。しっかりしてください」

「うーん、気が進まなくてー」

「気が進まなくてもいかなきゃダメです」


 先生の研究室に鎮座しているこれ。アンドロイドボディ≪ルーチェ≫

 先生が開発した画期的な素体だ。人間とほぼ同じ大きさでありながら、人間同様にスムーズに動く人工物。外見上、人と見分けがつかないロボットとかアンドロイドとか言われるものの開発は、人類の見果てぬ夢の一つだ。


 この先生——雲仙院クラリーチェという人はまだ少女と言える若さで(なんと彼女は俺より年下! 海外の大学は飛び級が可能だと言ってもかなりありえない! ……のだが残念なことに現実だ)それを叶えてしまった。


 彼女の作ったルーチェは人間の動きを完璧に模倣する。関節機構が特に画期的で、ルーチェに使われている革新的技術は今後、義手をはじめとする医療分野にも応用が期待されている。それどころか、アメリカで研究されている最新のAIを組み込むことでついには完全自立型のアンドロイドとして試験運用される事が決定したのだ。


「俺はですね、完全に動くルーチェが早く見たいんですよ」

「うんうん。期待してくれて嬉しいよ」

「なのに先生は、この一カ月、ずっとアメリカ行きを拒否し続けている」

「うん、いやぁ、なんだかちょっと、ね」


 IT技術の本場、アメリカ合衆国から莫大な額の研究費援助が約束されているのにかかわらず先生はかたくなに渡米を拒んでいるのだ。


「でも、でもだね、その、五年も向こうに行く事になるんだよ。それってとっても長くない?」

「長くないですよ。ルーチェが成す偉業に比べたら些細な事です」

「いや、長い。長いんだよ……」


「わがままは駄目ですよ先生。それに俺はルーチェのアメリカ行きを渋ってる理由は知ってますよ。軍事転用を警戒しているんですよね? でも、そのリスクを押してでもルーチェを世に知らしめる価値があるんですよ」


「いや、それは割とどうでもよくて……っていうかそんなのやろうと思えばいつでも阻止できるし」

「そうなんですか? さすが先生です」


「うん。褒めてくれてありがとう。——でも、しかしだね」

「『でも』も、『しかし』も無しです」


 俺は心を鬼にして断言する。


「先生は、アメリカにわたるべきなんです!」

「う、でも、それは……」

「俺のためだと思って! 先生のルーチェに俺は人類の夢を見てるんですから!」

「う、う、うう……、に”ゃあああああ~~。」


 嫌々とかぶりを振ったまま、先生はついにはしゃがみ込んでしまった。どうやら相当アメリカ行が嫌らしいのだが……。


「う、うう……、助手くんがそこまでいうならぁ」

「おお、ついに決心を」

「行くよ、行くけどぉ」


 それでも納得しきれないらしい。先生は恨みがましい目で俺を睨む。


「助手くんの馬鹿。にぶちん。君なんて嫌いだよ」

「先生と人類の夢のためなら、俺はいくらでも嫌われ役を担いますよ」


 先生は俺の事を気に入ってくれている。多分男としても。それは大変ありがたい。

 だが俺と先生は住む世界が違い過ぎるんだ。俺はただの大学生。一方先生は世界的な天才技術者だ。


 ――だから、先生とはここでお別れしなくちゃいけない。

 たとえそれが俺の本心で無かったとしてもだ。


「五年なんてすぐですよ。その間に俺も先生に追いつけるように頑張りますから。その時にまた会いましょう」

「うるさい。ばか、ばか、ばーか、そんなの信じられるかー」


 先生はやけに語彙の貧弱な罵倒をしながら研究室の片づけを始める。


 しばらくして先生はアメリカに旅立っていった。

 見送りはしたかったのだが、断られてしまった。


 そうして俺は先生のいない研究棟に出入りすることがなくなり、ただの一学生に戻った。

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