【犯人③】『花月』

「犯人は、お前だ。花月」


 紅貴は、人差し指を花月に向けた。


「ほぉ、どうして俺が犯人だと?」


 花月が面白そうな表情で眼鏡のフレームを上げる。


「紫皇に昼食を誘われたが、手が離せないからと断ったのは、嘘だ。本当は、冷蔵庫に入っているプリンの存在を知っていて、一人でこっそり食べようとしたからなんだろう」


「……あのな、お前じゃないんだ。俺がそんな意地汚いことをするように見えるか? 第一、どうやって冷蔵庫の中にプリンがあることを知るっていうんだ。俺は、トイレに行く暇もないくらい忙しかったんだぞ」


「そ、それは……朝、出社してきた時とか。お前は、いつも業務開始時刻より早く来るじゃないか」


「お前、さっき言ったよな? プリンを冷蔵庫に入れたのは、午前11時頃だって。その頃俺は、ちょうどクレーマーからの電話対応をしていた。なんなら通話履歴を確認してもいい」


「ううっ……」


「俺を犯人扱いするなら、確固たる証拠を持ってきてもらおうか」


(うう……証拠か。犯人がいるんだ、きっとどこかに……)

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