第3話 平凡女子 約束の異世界舞踏会
「ゼノ!思い出した。あの時、助けてくれた
俺様高校生。
その緑の瞳。変わらなく綺麗ね。」
「そうか、ヒカリ。
やっと俺様のことを思い出したな。
遅いぞ。時間がかかりすぎる。
俺様を待たせるな。あの時は王子だったが。
今はこのサバラ国の王様だ。」
ゼノが少し、自慢げに言った。
「そう、王様ね。それはおめでとう。
あれから時間が経ったんだ。
あの時は私は高3。
インターハイで敗れてから8年か。
8年も経ったんだ。はあー。」私は深いため息をついた。
「おい、おいヒカリ。久しぶりに会えたのに
ため息はないだろう。」
「そうねゼノ。失礼よね。ごめんなさい。
ゼノは命、いやいや、そんな深刻じゃないけど電車の中でと暴力男子と意地悪なバカ女から
私を守ってくれた、大切な恩人よね。」
ゼノが少し首をかしげて「ヒカリ、恩人って言い方はどうかな?
君は僕の妃になる人だろう。」
「妃?・・・えっ!何それ?そんな約束はしてないよ。ゼノの嘘つき。」
「ヒカリ、俺様は嘘つきじゃないって
何度も言ってるだろう。
ヒカリこそ何を今更。あの時、約束したじゃないか。
この国のクリスマス舞踏会に一緒に行こうって。約束したぞ。忘れたのか?」
「舞踏会?あー、覚えてるよゼノ。
それがどうしてゼノの妃ってなるの?」
ゼノが真面目な顔をして「この国。サバラ王国じゃ、クリスマス舞踏会に一緒に行こうって
王子から誘われた女子は妃になる子なんだ。
そうじゃないと誘わない。」
「えっ?でも8年も前のことよ。
それもほんの数駅一緒に電車に乗っていただけの私と結婚?私がゼノの妃?ありえない。」
ゼノがまた私の両手首をに強く握る。
「ヒカリ、そんなに俺様が嫌いなのか?」
「いいえ。でもゼノ、その前に手を放して、痛い。」
「ごめん。ヒカリ。」
「大丈夫。でも・・・ゼノは私を助けてくれたし、イケメンだし嫌いじゃない。
でも私はゼノのこと全然知らない。
それに、しかもここは異世界でしょう。
異世界で別の異世界人が妃っていうのもどうかな?いいのかな?」
「それは問題ない。
この国、サバラ王国はヒカリの世界と時空の線でつながっている。
俺様の母もヒカリの世界の住人だった。
もと渋谷のギャルだ。
今もこっそり厚底ニーハイソックスで、このサバラ王国とは違う目線の洋服を時折着ている。」
「はあ。渋谷ね。」そうなんだ。ありなんだと、とりあえずため息だ。
「ねえゼノ、教えて。なぜサバラ王国の王子があの時、電車に乗っていたの?」
「あー、あれは、異世界への留学中だった。
王様や王族はは18才になると一人で他の国へ見聞知識を広めるために行かなくてはいけない。
俺様の場合は異世界を選んだ。理由は母の生まれた世界を見たかったからな。」
「へーえ、ゼノはお母さんのこと好きなんだ。」
「当たり前だ。それが何か?」
「いいえ特には。ゼノは素直で正直なのね。
そういうと好きかも。」
ゼノの顔が嬉しそうだ。子供みたいに分かりやすい。
そういえば、いつもの脳内自問自答の声がここでは聞こえない。どうして。
『それは俺様がヒカリの脳内に侵入して答えていたからだ。
そう、こんな風に。』脳内に声が。
「えっ!それじゃあ、今までの自問自答はゼノの声だっの。」
「ふーん、それはそれで複雑な心境なんだけど。
まあ、いいっか。脳内不法侵入者がゼノなら。」
ゼノの顔がまた喜んでいるように見えた。
「で、ヒカリ、話は戻すが、そういうことだ。
俺様はクリスマス舞踏会に誘った。
プロボーズをしていたっということだ。
理解してくれたか、ヒカリ。」
「ゼノ、そうね君は嘘つきじゃない。
でもこれとそれは別よ。妃となると私にも覚悟がいるわ。」
「そうだな。」ゼノが理解を示して、少し無言になる。
私は私の今の日常を思い出す。
退屈で変わらない平凡な日常だけど、それなりに毎日生きてきていたし。それなりに楽しいこともある。
急に変わることには正直抵抗がある。
何もない日常でつまらない。分かっている。
毎日、何か奇跡でも起きないかと奇跡を望んでいる自分がいる。
確かに。
でも、実際、急に目の前に異世界ですよっといわれてもピンッと来ない。
「ゼノ、妃になることは少し考えさせて。
クリスマスの舞踏会までには時間があるでしょう。」
「そうだな。俺様はヒカリの気持ちを尊重する。待つよ。
それにあれから8年も待ったんだ。待つのは嫌だが、ヒカリのためなら待てるさ。
俺様は王様だからな。」
ゼノが大人に見えた。たぶん今は自分も大人なんだろうけど。
あの時の高校生じゃないし。時間は進む。
あの日、試合に負けてくたしかったあの時から時間は止まらない。
くやしさと感情と学生と大人と日常と通勤電車。全てがごちゃごちゃだ。
でも時間は止まらない。
たぶん今、私は大人なんだ。
「そうだな。大人かもしれない。が、ヒカリ。お前はヒカリだ。
クリスマス舞踏会。楽しみにしているぞ。
ドレスじゃなくて、あの時のジャージでもいいぞ。」
「ゼノ、ジャージで踊るの?
動きやすいし体育の授業みたいでいいかも。」
「おいおいヒカリ。今のは冗談だ。
ドレスは俺様がヒカリに似合う一番きれいなドレスを用意してやる。
だから上手く踊れるように練習しとけ。
少しぐらい足を踏まれても大丈夫だ。俺様がエスコートしてやる。」
「そうね。練習するわ。」
『それに大人のヒカリのドレス姿が見た。
きっと似合う。』
「ゼノ、目の前にいるのにどうして私の脳内へ侵入したの?
大事なことは相手の目を見て言葉にしないと伝わらないのよ。」
「そうだな。
大人はいっぱいいるが、ヒカリお前は一人しかいない。
クリスマス舞踏会。楽しみにしているぞ。
これでどうだ?言葉に出したぞ。」
「えっ、そう聞くの?まあ、いいわ。
私も楽しみにしてる。じゃあ。またねゼノ。」
私が言葉を伝えた瞬間、眠気が・・・私は深い眠りの中へ。
「寒い。」目が覚める。手元に携帯を見る2:27。わあーこんな時間。
寝ちゃったんだ。あれは?
夢?懐かしくて不思議な夢だったな。
『夢?ヒカリ、俺様の声が聞こえるか?夢じゃないぞ。
クリスマス舞踏会はすぐそこだ。
舞踏会で俺様の足を踏むなよな。」
「ゼノ!」
私はタンスの奥から着替えのジャージを手に取った。
時間は止まらない。進む。
12月すべての人がハッピーでありますように。
王様ゼノ、舞踏会へのエスコート。
ヒカリのこと頼みます。
私はハッピーエンドが大好きです。
えっ?今の声?私の脳内に誰かの声が・・・
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