第23話 これから先、このお話が続かないではないか!

 それをちらりと見るルリ子。

「やっぱり……催淫剤か……」

 何を隠そう!『ヤマダのオロチョン』はただのSM道具ではない。

 その洗濯ばさみには催淫剤が塗り込まれ、挟み込んだ体に作用するのである。

 しかも、ミーニャはツョッカーの悪の首領!

 使う催淫剤も半端なものではない!

 そんなものをタカトは二回も食らったのだ。

 本人の意思とは関係なく体が反応してもおかしくないのである。

 この先、そんなミーニャの『ヤマダのオロチョン』を食らい続ければ、タカトの意識は崩壊し、ただのエロ犯罪者となってしまいかねない。

 そう!これこそまさに神民街を恐怖のどん底に落とし込んだ大量痴漢発生事件の原因なのである。

 まぁ、それはさておき、タカトの精神がエロに染まってしまえば、手あたり次第にオッパイを揉もうとしてしまうことだろう……

 って、コレ……いつものタカトのままじゃんwww


 それを聞くミーニャは大笑い。

「もしかして、ナースふぜいが、このアイドルの私とやり合おうというのかいwww」

 いつしかミーニャの指先には『ヤマダのオロチョン』が増えていた。

 先ほどまで1つのビニールひもと9つの洗濯ばさみ……

 それが、今では各指の先にくくりつけられた10本のビニールひもと90の洗濯ばさみになっていたのである。

「このメス豚が! イキ狂いやがれ!」

 次の瞬間、ミーニャの背後に鳳の翼が浮かび上がった。

 いや!それは、ミーニャによって振られた両方の手!

 その先から伸びた90の洗濯ばさみがを大きな空間に広がっっていたのだ!


 ルリ子を包み込むかのように四方八方から洗濯ばさみが襲い来る!

 おそらく一つでもその身に受ければ、ルリ子の体を催淫剤がむしばむことになるだろう!

「させるか!」

 カンっ! カンっ! カンっ! カンっ! カンっ!

 ルリ子は目にも止まらにスピードで金属バットを振り回す。

 いまや!向かい合う二人の女の間に無数の火花が舞っていた。

 

 飛び交う洗濯ばさみをルリ子はバット一本で打ち返しているのである。

 とてもじゃないが……もはや……この勝負にタカトの出る幕はなかった。

 だって……タカトでは……洗濯ばさみの1個ですらバットに当てることは不可能!

 それが90個ともなれば、タカトには無理な芸当なのである。

 それを知ってか知らずなのか、ルリ子の声がタカトをせかす。

「はやく行け! クソ野郎!」

 そんな声に背中を押されたのかタカトの足が前へと進んだ。

 だが、その足を止めようと十数個の洗濯ばさみがタカトを襲うのだ。

「イカすかよ! いや!イカすぞ!天塚タカト!」

 そう、ミーニャが二本の指がくいッと曲げて、その先の洗濯ばさみの向きを変えたのである。

 迫りくる洗濯ばさみ。

 逃れようとタカトは必死になって駆けた!

 だが!しかし!

 こんなとき……決まらないがタカト君wwww

 案の定、足を絡ませスッテんころりん!

 地面を転がるタカトの体。

 だが、幸運にもその回転によって洗濯ばさみの一撃を回避することができた。

「やるな! 天塚タカト! ならば!」

 それを見たミーニャが悔しそうな顔をしながら、さらに指を三本曲げた。

 ルリ子へと向かっていた27個の洗濯ばさみがタカトへ向きを変える。


 迫りくる洗濯ばさみ!

 これだけの洗濯ばさみの催淫剤を身に受ければ、おそらくタカトのテントは暴発してしまう事だろう。

 なんとみじめな姿……

 ――ルリ子さんの前で……それだけは……

 だが、タカトの体はこけたまま動けない。

 もはや、回避行動などとれる状態ではなかったのだ。

 万事休す!


 しかし! その時!

「私を甘く見すぎなんだよ! このクソ女が!」

 金属バットの一振りがミーニャを急撃した。

 そう、半分の洗濯ばさみがタカトへと回ったことにより、防戦一方だったルリ子の金属バットが洗濯ばさみのスピードを超えたのだ。

 そして!ここぞとばかりに踏み込まれるルリ子の足!

 渾身の力を込めて!金属バットを上段から叩き落す。

「死にやがれ! このクソアマが!」

 もうwww看護師が言っていい言葉だとは到底思えないwww

 が、今はそんなことを言っている場合ではない。

 渾身の力が込められたバットはミーニャへとまっすぐに落ちていく。

 だが、その一撃はミーニャの頭蓋を目の前にしてピタリと止まってしまったのだ。

「なにっ!」


 驚くルリ子を見ながらミーニャが不敵に笑う。

「私を誰だと思っている! 私こそ!秘密結社ツョッカーの第四代悪の首領!ミーニャさまだぁぁあぁぁ!」

 そう、ミーニャは悪の首領! 悪の首領なのだ!

 だから、とても強いのだ!

 当然、武器だって『ヤマダのオロチョン』以外にも持っている。

 かの昔! 中国という国には世界最強の鉾と盾があったという。

 そして、その鉾と盾を見た男は言ったそうだ……

 「その最強の鉾で、その最強の盾をついたらどうなるのだ?」

 そう……同時に最強のモノが存在することはありえない。

 これこそ、有名な『矛盾』のお話である。

 だが、それはあくまでも故事成語の世界。

 悪の首領であるミーニャには全くもって関係ない!

 最強の武器である『ヤマダのオロチョン』が存在すれば、最強の盾もまた存在するのだ!

 その名も!『ユジュン』

 ムジュンではなくユジュン。

 イ・ユジュンなのか、ホン・ユジュンなのか、 チャン・ユジュンなのか知らないが、韓国アイドル顔負けの美青年の顔面がミーニャの頭の上に乗っていたのだ。

 

 当然それを見たルリ子は、すぐさま金属バットを止めた。

 それだけ、ミーニャの頭を守る『ユジュン』はイケメンだったのである。

 この10年……ルリ子は父ヒロシの頭を探すためにずーっとツョッカー病院に閉じこもっていた。

 世間とは隔絶された空間……

 そんな彼女が目にするのはジジイやババアなど干からびた顔ばかりであった……

 そんなルリ子が、イケメンの顔を見たのである。

 押さな時時に見たアイドルのような顔立ち!

 それがたとえ、首から上だけの生首……そう、生首であったとしても、光輝いて見えたって不思議ではない!

 キュン♡

(あwwwちなみに分かっていると思うけど、この生首は株式会社ツョッカーの商品ではございませんwwwさすがに生首売っていたらドン引きだわwww)


 もうこうなるとルリ子がバットを降り下ろそうとしても、見越したようにその前には『ユジュン』の顔が現れる。

 そのたびにピタリと止まる金属の軌道。

 もう、こうなっては金属バットと言えどもただのお飾りである。


 で、当然、その間の『ヤマダのオロチョン』はといえば……

 タカトの全身に噛みついていたwwww

 言わずもがな90個すべてであるwww

「へっ? なんで?」

 ルリ子は自分に構わず行けと言った。

 それにもかかわらず、洗濯ばさみは全て自分のところにやってきている。

 これいかに?

 もう、意味が分からないタカト。

 意味は分からないのだが、ズボンのテントはこれ以上ピンと張ることが不可能であることは十分理解できていた。

 そう、さきほどからギンギンギラギラパラダイスなのである。

 この状況で、体中から催淫剤を注ぎ込まれれば……それはもう……


「ちょっと待て!」

 タカトの懇願にも関わらず、ミーニャの勝どきの声が轟くと。

「ライオォォォォンヘッド!」

 うぎゃぁぁぁぁぁぁ!

 タカトの悲鳴がこだました。


 地面に倒れこんだタカト。

 だが、先ほどとは違いピクリとも動かない……

 もしかして死んだか?

 催淫剤で?

 いやいや、何事にも適量というものがある。それを超えて使用すれば当然、毒になりうるのだ。

 ミーニャの洗濯ばさみにつくのはツョッカー特製の超高級催淫剤!

 その効能は一滴で女がよがり狂うという代物だ。

 それを何度も何度もその身に受ければ……当然、タカトの精神はプッツン!


 と……


 思ったら、立ち上がったではないか!

 だが、どこか様子がおかしい。

 柳のように右に左に揺れている。

 そして、何を思ったのか!

「オッパイ揉ませてくだちゃ~い♡」

 と、ルリ子に向かってジャンプした。

 というか、これ……完全に意識が飛んでいる。

 もう、それはエロの妄執にとりつかれたゾンビそのもの。

 目の前の巨乳に反応して本能で動いているだけのようなのだ。


 だが、ルリ子にとって、そんなタカトの様子はいつもの事。

 変態タカトのいなし方など造作もない。

 ということで、

「このクソ野郎が!」

 金属バットをフルスイング!

 腰をひねって水平に振りぬかれたバットの芯がタカトの股間を正確にとらえた!


 カキーン!


 タカトの体が大きな放物線を描いていく。

 そして……打球はぐんぐん伸びて……伸びて……ホームラっ

 いや! ぎりぎり!ライトフェンスに直撃だ!

 ドシーン!


 そこはビン子が横たわる祭壇。

 長方形の石造りの壁面はタカトがぶつかったぐらいではビクともしなかった。

 だが、その周りを取り囲む二人のフードをかぶった者たちはビックリした。

 というのも、ビン子から生気を抜き取る儀式に集中している最中にいきなり男が降ってきたのだ。

 あんぐりと大きく開いた口からは言葉も出ない。


 これはビン子を救い出すチャンス!

 だが、タカトは祭壇の壁にもたれかかって尻もちをついたまま動かない。

 いや、動けないのだ!

 その体からは力が抜けて、だらりとうなだれたまま。

 表現するならば!まさに伊吹ジョーが最後の最後で真っ白に燃え尽きたような状態なのだ。

「燃え尽きたぜ…… 真っ白にな……」

 そんなタカトのコブシがガクンと落ちた……

 死ぬな!タカト! 死ぬんじゃない!

 って……落ちたのはコブシではなくてコカンだった。


 そのコカンをツンツン……

 興味深そうに一人の黒ローブがつつきはじめた。

「もしも~しwww生きてますかぁ~www」

 片膝を突くローブの隙間から見える白い足には赤いヒールがチラリと見える。

 そして、うなだれるコカンを見下ろすローブの影からは、ほのかな甘い香りと共に長い前髪が垂れていた。

 この背格好からして女子高生ぐらいといったところだろうか。

 そんな女子高生が細い指先でタカトのコカンをツンツンしているのだ。

 このシチュエーションに大体の男であれば我慢できずに、元気一杯起立して胸を反り返してしまう事だろう。

 だが……

 だがしかし……

 タカトの胸どころか……コカンは全く反応しなかった。

 そう……ピクリとも動かなかったのである。

 やはり、燃え尽きてしまったのだろうか……

 いや、ここでタカトが燃え尽きたら、これから先、このお話が続かないではないか!

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