第16話 独眼竜サンド・イィィッ!チコウ爵 !伊ニみき王!
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
地下の死体安置室ではルリ子の悲鳴が反響していた。
というのも、開けっ放しにされた安置室のドアへの空間に青白い顔が宙に浮かんでいたのだ!
いや……
正確にはドアの影から伸びた手の上に載っていた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
って、その方が余計に怖いわ!
だが、もっと!恐怖なのは、手のひらに乗った顔がしゃべりだしたのだ。
「頭……取れちゃったダニィィィイイ!ダニィィィイイ!ダニィィィイイ!」
この頭……いや、この頭の持ち主こそ、このツョッカー病院の右側副院長『独眼竜サンド・イィィッ!チコウ爵
右側病棟? ということは左側病棟の副院長もいたのであろうか?
確かにかつてデスラーという副院長がいたのはいたのだが、今は所在不明……どこに行ったのか分からなくなっていた。
そのデスラーに代わって副院長職に就いたのがこのサンド・イィィッ!チコウ爵なのである。
え? そこが問題じゃない……
なんで名前がサンド・イィィッ!チコウ爵なんやねん!だって?
あのね……人の名前にいちいち文句をつけないの!
だいたい、これを読んでいるアナタだって、他人から「お前の名前って、プっwww」って笑われたらいい気はしないだろう。
名前を笑うという事は、その人そのものを笑う事。
だって、名は体を表すというではないか。
そう、何を隠そう! このサンド・イィィッ!チコウ爵、頭がサンドイッチなのである!
はい? 意味が分からない?
まぁ、確かにいきなり言われたら誰しも想像きないだろう。
だから、少し丁寧に説明しようではないかwwww
白衣の裾から見える彼の体は青緑色……しかも、ところどころ腐り落ちて中の肉や骨が見えている。
しかも、なんと言う事でしょう! 首から上がないのだぁぁぁぁぁ!
まぁ、彼の手のひらの上に首がのっているのだから首がないのは当然かwww
って、この首はこいつの首かよッ!
そう、この首、実はサンド・イィィッ!チコウ爵自身の首なのだwww
それでもこの体……生きているよね……いや、動いていると表現した方が正確か……
しかし、だいたいこれで想像がついたことだろう。
サンド・イィィッ!チコウ爵とはゾンビなのであるwwww
って、ゾンビかよ!
……って、ことは……こいつは魔物?
いやいや、魔物ではございません! というのも、サンド・イィィッ!チコウ爵の目の色は黒色! ……というか、死んだ魚のようにくすんだ黒ですけどね……
そう!彼はかつて副院長だったデスラーによって作られた第三世代?の融合加工道具だったのだ!
道具?
そう道具www
所詮、人間も死んだらただの肉……モノと一緒な訳ですよ。
って、コイツ!動いてるやん!
まぁ、そのあたりは、話せば長いので第四章あたりを読んでみてねwwww
ということで、オホン! 話を戻そう!
死体がモノである以上、融合加工によって頭と胴体をくっつけることだって容易な事なのだww
うん? 今にして思えば……これって……第一世代(モノと魔物素材とをくっつける)の融合加工のような気もするが……デスラー本人がそう言っているんだから、まぁ、いいかぁwww
そんな首には胴体と頭とをくっつけるために融合加工された食パンが揺れていた……
食パン? 食パンってあの食べるパン?
そうwwwあの食べるパンwwwしかも、A3用紙サイズなみに大きいパン!
ちなみに! この食パンは顔が蝦夷アワビでできている魔物 食パンマン子さんから採取されたものである。だから、アンパンマンに出てくる食パンマンとは、全く関係ございません!
で、どうやら、デスラー副院長、その食パンで首と頭とを両側から挟みこむことによって固定していたようなのだ。
だ・か・ら! 彼の名前はサンド・イィィッ!チコウ爵!
なら、独眼竜とか、
もう!めんどくさいなぁ! それも第四章を読めばわかるから!
ということで、説明終了! ハイ!終わり!
「お父さん……また、首がとれたの……」
落ち着きを取り戻したルリ子は、サンド・イィィッ!チコウ爵の首を取り上げると何もない首の上にそっと戻した。
そして、両脇に垂れる大きなパンをすくい上げると……有無を言わさず!
パン!
と、いきなり両側から思いっきり同時に叩いたのだ!
「ああ! 治ったダニぃいぃ!ダニぃいぃ!ダニぃいぃ!」
首をコキコキと傾けるサンド・イィィッ!チコウ爵はどこか嬉しそう。
でも、それを見るルリ子は腕を腰に当てながらあきれ顔をしていた。
「お父さん……もう、その首……限界なんじゃない……」
そう、サンド・イィィッ!チコウ爵の頭はいたるところが朽ち果てて、首との接合面がグラつきだしていたのである。
やっぱり、ゾンビでも腐るんだwwww
というか……ルリ子さん……さっきから、このゾンビの事をお父さんって呼んでるよね!?
ちょっと待って! 確かルリ子のお父さんって、死んだんじゃなかったの?
そう、父ヒロシは死んだのだ!
ああ、だからゾンビなのかwwww
って、だったらなんでルリ子はいまだに死体安置室の中でヒロシの首を探している訳?
そう……このゾンビ……体はヒロシなのだが、頭は赤の他人。どこの誰のモノだか分からないのである。
だが、体がヒロシである以上、父であることは間違いない。
ならば、この体にヒロシの頭をくっつければ本当の父になるではないか!
まあ……それでもゾンビであることには変わりないけどwww
だが、その首が見つからない……
10年探しても見つからない……
もう、諦めようかと思っていた時、この部屋に秘密の通路があることに気が付いたのだ。
「お父さん! 聞いて! この部屋に秘密の通路があるのよ!」
興奮を隠しきれないルリ子はまくしたてた。
それを聞くサンド・イィィッ!チコウ爵は鼻くそをほじりながらきょとん。
そして、思わぬ一言……
「秘密の通路ダニイィィッ? ああ!デスラーの部屋ダニイィィッ! それなら知ってるダニイィィッッ!」
「って、知っとったんかい!このクソ野郎!」
ツッこむルリ子の手がアッパーカット! 再び落ちたサンド・イィィッ!チコウ爵の首が床の上を転がった。
「また頭、取れたダニイィィッ!ダニイィィッダニイィィッ!」
サンド・イィィッ!チコウ爵は自ら頭を拾い上げるとクビに引っ付けた。
というか、自分で頭つけられるのかよwwwなら、最初から自分でやれ!
と思ったら……前後ろが真反対www
背中に顔がむいていた。
仕方なさそうにルリ子が顔を両手で持ってつけ直すと、そのままジッと目をにらみつける。
「で! お父さん! その秘密通路はどこにあるの! さっさと教えて!」
「それはダニィィィイイ! ダニィィィ…… どこだったダニィィィ?」
カチーん!
その態度にルリ子はブチ切れた。
「なら! これで思いだしたか! このクソ野郎が!」
頭をつかんだ両手をそのままに思いっきりシェイク&シェイク!
そのたびにサンド・イィィッ!チコウ爵の頭の中で何かがカラカラと転がる音がする。
おそらく、それは脳内に潜むカエルの目玉……
かつて、デスラーが黒い三年生の一人であるガイヤからもらったという目玉である。
そう、この目玉こそが死体となったサンド・イィィッ!チコウ爵の体を動かしている元凶そのものなのだ。
そして、そのカエルの目玉は今は亡きデスラーが隠し持っているというではないか。
きっと、その目玉さえあればヒロシの頭を切り離された体と引っ付けることができるはずなのである。
⁉
その時、ふと、ルリ子は何かに気づいた。
――そういわれれば……あのデスラーの糞野郎……この死体安置室で融合加工をしていたはずだよな。
であれば、ないといけないものがないのである……
それを確かめるかのようにルリ子は改めて部屋の中を見回した。
部屋の中央に置かれている作業台は、その染み付いた薄汚れた体液の跡からして死体を切り刻む場所でまちがいないだろう。
――で……あの糞野郎は、どこでその切り刻んだ研究結果をまとめてたのだ?
真の研究オタクという生き物は、自分が行った研究記録をしっかりと残す性質を持っている。
それは自分が立てた仮説を証明するために必須と言っても過言ではない。
ならば、デスラーがいかに無能でマッドサイエンティストであったとしても研究者のはしくれであれば、その研究日誌を書いているはずなのだ。
ならば、その研究日誌はどこにあるのだ?
あたりを見回しても、周りの棚には首が納められたホルマリン漬けのビンしかない。
というか、デスラーはこの死体安置室のどこで、その研究をまとめていたというのだ。
というのも、この部屋には筆記用具といった研究記録をまとめる道具や場所がないのである。
おそらく、別の場所でそれを行っていたに違いない。
――ならば、きっとそこにお父さんの頭とカエルの目玉があるはず!
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