第8話 イブ
その言葉に驚く黒髪の女こと、お菊。
「おっ!ナニー! コイツ!ハゲだろうが!」
何を隠そう!かつては男性ホルモンであるテストステロンが多いとハゲると言われていたのだ。そのため、どこぞの世界にはオナ禁をした強者も多くいたぐらいなのである。
だが、最近の話によると、テストステロンは脱毛させる物質ではなく、むしろ、『男性更年期による脱毛』を防止すると考えられているようなのだ。
すなわち、作者の邪推だが、オナ禁をするのではなく〇ナニー!をすればするほどハゲないということになるような気がしてならないwww
でもって、話は戻るのだが、このお菊という女、実はレジスタンス
そんなお菊が敵視しているものは、言わずもがな! それはエロ!
大体、どの世界もそうだが、男というものが発情するから争いが起きるのである!
まあ、確かに動物の本能としてメスをめぐって争いを起こすのは仕方ないことなのかもしれない。
だが、仮に、男の性欲をなくすことができれば無益な戦いは起こらないのではないだろうか……そして、世界はハッピーになるのだ!
男の股間の奥底から沸き起こる無限の性欲。
これこそが諸悪の根源! これを発散させてやらないと世界平和はあり得ない。
だが、発散するにしても〇ナニーという手段を使ったのでは意味がない。
というのも、世の中には現実と仮想の区別がつかない人が男女問わず一定数存在するのだ。
ならば、〇ナニーではなく別の方法で性欲を取り除く必要がある! それも健全な方法で!
ということで、NHKは活動の一環として、子供たちに人気がある教育番組のワンワンの着ぐるみを着て、日々かつドン制作作業に没頭させるというものがあったのだ。
その苦行たるや……修験者そのもの、もう、まるで宗教団体のようなのだwww
だが、日夜、休みなくかつドンを作りを続けていくと、不思議と身も心もワンワンになりきるのだ……そして、ついにはED、すなわち勃起不全をもたらす……のではなく、
イブ……それはこの聖人世界を生みだした神。アダムと対をなすと言われる最古の神である。
そして、この聖人世界、魔人世界に存在する神々は全て彼らの子供たちなのだ。
死をつかさどる神アダムに対して、イブは生をつかさどる。
その容姿はこの世で最も美しいといわれていたため、別名、性の象徴とも呼ばれていたらしい。
当然に、その魅力はこの世のすべての男の性欲をかき立てた。
だが、イブはそれら男たちの活性化した性欲、いや高ぶった生気を貪るのである。
生気は命の根源……吸い尽くされれば命が尽きる。
一つの命を食べつくすと、イブはすぐさま新たな男を貪った。
貪って、貪って、貪りつくす。
それは、まるで体の奥底から沸き起こってくるフラストレーションを必死に慰めようとする過食のようにも見えた。
だが、それはあまりにも長かった……
長い時の間に数多の命が奪われてしまったのだ……
いま、聖人世界の神々に女性しかいない理由は、まさにこれが原因なのである。
だが、そんな時代もはるか昔……
男の神がほぼ全滅し……人しか食うものが無くなると、イブの力が徐々に弱まり始めたのだ。
確かに人一人の生気の量など神の生気に比べると鼻くそ程度。
ちまちまとザクロの実を食べているようで埒が明かない。
面倒くさくなったのか、それともほかに理由があったのか分からないが、イブは人の生気を貪るのをやめたのである。
そして、ついには十数年ほど前にその気配がピタリと消えた。
だが、その事実をもってイブが死んだとは到底思えない。
もしかしたら、いつかまた復活するかもしれないのだ。
それは、世界が再び荒れることを意味している。
いや、最悪、イブがアダムと出会おうものなら……この世界が滅びかねないと伝承に残っているのだ。
ならばなんとしてでも、イブの復活を阻止しなければならない。
いや、できることならイブそのものを抹殺しないといけない。
そのためには、イブ復活の糧になる男たちの性欲を制御する必要があったのだ……
かつていた第七駐屯地から内地へと栄転し、あいかわらずNHKの活動にいそしんでいたお菊の耳に、ツョッカー病院内でいかがわしいブツが大量に取引されているとの情報が入ってきたのだ。
「エロは抹殺!」
ということで、すぐさま病院前で網を張り、関係者の出入りを常に見張っていた。
そんな時、変態そうなガキとカゴを背負ったハゲが病院に入っていくではないか。(ビン子? ああ、あの女のことか、別に女は構わん!byお菊)
――絶対にあのカゴの中に大量のエロ本が入っているに違いない!
そう踏んだお菊たちは一斉に病院内へとなだれ込んだ。
だが……しかし……
かごの中身はタダの食料……
それどころか、このハゲ……アレもついていなかった……
「すまなかった……私たちの勘違いのようだ……」
お菊は短鞭をひっこめると素直に頭を下げた。
だが、コウエンは怒る様子もなく「別にいいですよ……」と顔をそらした。
たしかに、頭にはきていた。
いきなりカゴの中身をぶちまけられたのだから仕方ない。
だが、この軍服を着た女たちの気配を消し方から考えても、おそらくタダものではないことはすぐわかる。
――確かNHKって名乗ってたな……もしかしたら、悪の組織なのかもしれない……
そんな相手に怒鳴ったところで状況は悪くなるばかり。
インターホン越しに受信装置がないことを説明して、さっさとやり過ごしてしまった方が得策なのだ。
だからこそ、コウエンは何事もなかったかのように床に膝をつき散らばった食料を集めだしたのである。
だが、それを見た軍服の女たちは、こぞって膝をつき一緒に食料を拾集め始めたではないか。
それはまるで自分たちがしたことを悔いているかのようでもある。
仮に彼女たちが悪の組織であれば、食料を集めることなく、笑いながらさっていくことだろう。
その様子を見たコウエンは、『もしかしてNHKって、まんざら悪者というわけではなさそうだ』と思った……かもしれない。
しかし、悪者でなくとも、その態度、そのやり方はいただけない。
だが、それが仕事であれば彼女たちの態度も仕方ないのである。
そんな彼女たちをおもんばかったコウエンは「お仕事、大変ですね……」と、それとなく声をかけた。
ギク!
お菊の体が硬直した。
そして、押し出すような小さな声で答えたのだ。
「ああ……馬鹿な男たちから……この国……いや、この世界を守らないといけないからな……」
そんなことが階下で起こっているとは梅雨知らず……
「げへwwwwげへwwwwげへwwww」
屋上の片隅では、タカトはウ〇コ座りをしながら気色の悪い笑みを浮かべていた
その口角はと目じりともにだらしなく垂れさがり一筋のヨダレをたらしている。
キモイ! まじでキモイ!
しかも、その手には一冊の本。どう見てもコレ……エロ本だろう。
「なっ!www結構いいだろうwww」
そう声をかける立花どん兵衛もまた、タカトの横でウ〇コ座りしながらムフフな本を読みふけっていた。
コイツらのこの様子、学校の屋上でエロ本を回し読みしている不良学生のようである。
このちょっと前、立花はひとしきり身の上話をタカトにまくしたてると気が晴れたようで、「オイ! タカト! これでも見ていくか?」と、屋上の片隅に隠してあった段ボール箱を引きずり出してきたのである。
雨にあたらないところに隠されていただけあって、外面は汚れてはいるがしっかりとした段ボール。
なんと!その中には数十冊のエロ本、いや、ムフフな本!が入っていた!
それを覗き込んだタカトは驚きの声を上げた。
「こ! これは! ミーニャちゃんのグラビア写真集ではないか!」
そう、グラビア写真集だから18禁ではないのだ!
だからエロ本ではなくてムフフな本www
というか、ミーニャちゃんって誰やねんwww
え? 知らない? ちゃんと読んでないから分かんないんだよwwww
ミーニャとは仮面ダレダー シーズン4に出てくる悪のロリコン首領を演じているアイドルなのだ。
その容姿は小学二年生、8歳ほどの女の子。
だが、その実体は18歳を過ぎた大人なのだ。
18歳……それは現在の日本の民法によると立派な成人女性なのである。
だから、本人の意思のみで契約行為ができるためエッチな写真集を撮ろうが、悪の首領になろうが自由なのだ。もう!自由な国!日本万歳!って、ココは聖人世界の融合国でしたwwwって、それなら!なおさら関係ねぇ!
当時無名だったミーニャは「アイドルは絶対にウ〇コなんかしません!」と豪語し、72時間テレビの生放送中、一度もトイレに行かなかったという伝説をのこした。まぁ、小さいほうはペットボトルで済ましていたのであるが、その様子が結構な視聴率を稼ぎだしたのだ。
それにより一躍注目を浴び、トップアイドルに上り詰めた。
そして、人気番組である仮面ダレダーの悪の首領に抜擢されたのである。
だが、仮面ダレダーの話となれば、アイナちゃん一筋のタカトであっても話は別だ。
――だって、アイドルと悪の首領は別物!浮気でもなんでもございません!
そんなミーニャちゃんの写真集がどっさり。
というか、この段ボールの中、ミーニャちゃんの写真集しかないではないかw
だぶついたきわどい水着を少し胸元からずらしながら上目遣いでおねだりしている表情。
ひょっとこ口でエビフライを食べているのだが、その口元から白いタルタルソースが垂れている表紙。
特別号付録にはミーニャちゃんが72時間テレビで使用したというペットボトルの未開封品! 何と!その中には薄黄色い聖水がたっぷりと入っていた!
それを見た途端、タカトには無意識のうちにヨダレ、いや汁がたれてきているのがハッキリと分かったwww
「しかも! ただのグラビアじゃないぞ! 限定品とあって超!ギリギリ!いや!チラ見え写真集がかなり入っているwww」
「な・ン・だ・トォォオォォオオオオオオ!」
「見たい?」
「見たい!」
「ほんとに見たい?」
ブンブンと首を縦に勢いよく振るタカト。
よほどエロに飢えていたのだろう
そして、それを見る立花はマジで嬉しそう。
こちらはこちらで、よほど話し相手に餓えていたのだろう。
「もうwwww 仕方ないなぁwwww」
ということで、ダンボールから一冊取り出すとタカトにホイっと手渡したのだ。
「げへwwwwげへwwwwげへwwww」
と、ムフフな本を読むタカトは気色の悪い笑みを浮かべていた。
だが、先ほどからどうにも腰が落ち着かない。
モゾモゾと腰を動かしては、本から手を放したりくっつけたりを繰り返しているのだ。
どうやら、放した手をポケットの中に入れたいようなのだが、ムフフな本の続きも読みたいようである。
言わなくても分かると思うが……このウ〇コ座りをしている状態で片手を放すと本のページがめくれないのである。
だけど、この股間の奥から込み上げてくる煮えたぎるような情熱! それを抑えるには、やはり手をポケットの奥へと突っ込みたい!
だが、それではページがめくれない! というか、ページが閉じてしまう!
ああ! じれったい!
――どうすればいいんだ! どうするよ俺!
まさに今、タカトはそういったジレンマに陥っているかのようであった。
しかも、隣には立花というジジイまでいるのである。
このシチュエーション、コンビニの立ち読みコーナーでオッサンたちと並んでムフフな本を読みふけっている時とまさしく同じ!
世の男性諸君は思ったことはないだろうか?
こんな時、手がもう一対あったらよかったのに……などということを!
もし仮に手が二対あれば、一つの両手でムフフな本をしっかりと握りしめながら薄いページを前後にめくり、それと同時にもう一対の手をズボンのポケットの中へと潜り込ませると、その奥にある己が信念をしっかりと握りしめながら薄い皮を前後にめくることができるようになるのだ。
これならばコンビニや屋上といった人目につく場所であったとしても……あの……家に帰るまでお預け状態という欲求不満現象をもたらすことなく、こみ上げてくる情熱を新鮮な感動のフィナーレで迎えることができるのである。
――ならば! もう一対、手を作ればいいではないか!
ということで、タカトはズボンのポケットの奥にある皮、すなわち内布の間から己が信念たる工具の数々を取り出しては床の上に並べ始めた。
そして次に、無造作に転がっていたカバンの口を大きく開けて手を突っ込む。
ちなみにこのカバン、コウエンから貰った食料を入れていたカバンである。
そして、もともとはビン子の持っていたカバン。すなわち、タカトが作った道具がいっぱい詰まったカバンなのだ。
で、そこから何やら一つの箱のような道具を取り出すとハンマーやドライバーでトンテンカンテンと改良し始めた。
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