第26話 崩れる理性
「クソっ……なんで、今なんだよ……ッ!!」
俺の胸もとに埋め込まれた未界石が、紫色の光を放ちはじめた。
同時……全身に、ずきんと激痛が走る。
立っていられないほどの痛みに、俺は膝を折り曲げてしまう。
「……え? 悠月、くん?」
それまで涙を流していたアカネだったが、いきなり体勢を崩した俺の姿を見ると、心配そうな表情を浮かべた。
そのまま、アカネは俺の近くまで駆け寄ってくる。
「悠月くん、どうしたの……っ、その、胸が……」
「ッ、来るな!!」
思わず、俺は大声を上げてしまう。
びくりとアカネは肩を震わせる……が、しかし彼女は俺から離れようとはしなかった。
「っ、でも……悠月くん、すごく苦しそうだよ? もしかして……どこか、痛むの?」
「ッ……お願い、です。アカネさん、俺から離れてください……ッ!」
「キミがそんなに辛そうな顔してるのに、放ってなんておけないよ……」
不安げに、俺を見つめてくるアカネ。
俺は激痛に苛まれる身体を強引に動かし、ふらふらと立ち上がってみせて、
「クソッ……早く、発散しないと……ッ」
「……発散? 悠月くん、何言ってるの……?」
「ぐッ……!? にしても、なんなんだよっ、今日のこれは……ッ!?」
今回の疼きは――いつもの疼きより、何十倍も苦しかった。
神経という神経が痛み、皮膚や血管が内側から引き裂かれるかのような感覚。
正直……このままでは、俺は正気を保っていられるかわからなかった。
だから今は一刻も早くダンジョンに向かい、発散をする必要がある。
「……そうだ、救急車。あたし、救急車呼ぶよ……?」
「ッ、大丈夫、ですから……ッ! いいからアカネさんは、俺から離れてください……ッ!」
だんだんと。
痛みが、増していく。
これは……本当にヤバい。頭が割れそうになる。
もしかして――ここ最近、しばらく疼きが来ていなかった反動なのだろうか。
「今の悠月くん、ぜんぜん大丈夫に見えないよ……? お願いだから、あたしにできること教えて……?」
「だから、アカネさんはッ……」
ふと。
俺は――アカネのほうに、視線を向けた。
彼女の可憐に整った顔には、焦りと不安が浮かんでいて。
その白い肌は美しく、健康的な身体つきはどことなく妖艶で。
(……あれ。俺、何を考えてんだ……?)
不思議な感覚だった。
全身に激痛が走っているというのに、なぜか。
俺は、今――アカネの美貌から、目が離せなくなっていた。
「悠月、くん? どう、したの……?」
おそるおそる、アカネが尋ねてくる。
と、その瞬間だった。
俺の中の理性が、ぱきんと壊れるような音がして。
そして、気づけば俺は――アカネを、床に押し倒していた。
「きゃっ……!? え……悠月、くん……?」
「ッ、はあ、はあ……なんで、身体が勝手に……ッ」
俺は自分の身体について、正しく理解できていない。
なぜ未界石が疼くのか、どうして激痛が走るのか、魔物を倒すと疼きが収まる理由は何なのか――それらを、ほとんど把握できていないのだ。
だから、今、この瞬間もそうだ。
なぜ俺が、アカネの可憐で美しい容姿を前に、急激に見惚れることになったのか。
そしてなぜ身体が勝手に動き、アカネを押し倒してしまったのか。
その理由が、俺にはわからなかった。
だが――、
「……アカネ、さん……ッ、最後の、お願いです。俺を押しのけて、すぐに逃げてください……ッ!」
このままでは――俺は間違いなく、アカネを傷つけてしまうだろう。
俺は今、アカネの容姿や身体つき、その甘い匂いに魅了されてしまっている。
アカネという美少女のことを、この手で汚したい――そんな、最低な思考に心を支配されていた。
「……ねえ、悠月くん」
なのに、アカネは。
俺を押しのけようとせず、ただじっと俺の瞳を見つめてきた。
「悠月くんは、今……あたしと、そういうことがシたくなったから、辛そうにしてるの……?」
どことなく、上気した頬で。
とろんとした目を、アカネは向けてくる。
「だったら……嫌じゃ、ないよ? 悠月くんとなら……あたし、いいよ?」
配信上では見せることのない、色っぽいアカネの表情に。
綺麗な瞳に。形のいい唇に。真っ白な肌に。
俺の理性は、ますます崩れていく。
「アカネ、さん……ッ、なんで、そんなこと言うんですか……ッ」
「だって――キミは、あたしの命の恩人なんだもん」
えへへ、と。
アカネはしおらしく、それでいて明るい笑顔を浮かべた。
「そんな悠月くんが、あたしのことを求めてくれてる。あたしは――キミに恩を返せることが、すごく嬉しいし、幸せなんだ」
「…………ッ」
「だから――いいよ? あたしの身体、好きにして?」
もう、限界だった。
俺は――アカネの豊満な胸に、手を伸ばしていた。
「んっ……えへへっ。いいよ、もっと触って?」
「……アカネさんが、悪いんですからね。そんな顔でそんなこと言われて、我慢できるわけないじゃないですか……ッ!」
俺はアカネの服を強引に脱がせて、その白くて綺麗な肌を露わにさせた。
やわらかいアカネの胸や、美しいくびれを描く腰、すらっと伸びた健康的な脚に――俺は、貪るような手つきで触れていく。
「あんっ……悠月くん、そこ……っ」
アカネの、甘い嬌声を浴びながら。
ついに俺は、興奮した下半身をアカネのふとももに押し当てて――、
「言っておきますけど――俺、手加減とかできないですから」
「……うん。いっぱい、あたしで気持ちよくなって?」
アカネと、身体を重ねる。
人生で初めて味わった、その強烈な快感を――きっと俺は、一生忘れないだろう。
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