『言われたオレ』と『言ったこの子』
校門の脇の桜の木の下に……昨日まで目で追っていた人が居た。
きっと、めでたく付き合う事になった安原を待っているのだろう。
無理に気付かない振りを装って通り過ぎようとしたら詰襟の裾を掴まれた。
半ば引きながら振り返ると、佐藤さんは凄味のある充血した目でオレを睨んでいた。
で、昨日のオレみたいに言った。
「ちょっといい?」
ひょっとしたらオレは一軍……安原辺りから制裁めいたものを受けるのかもしれない。
厨二の愚かな自信かもしれないけど、オレ、結構“細マッチョ”だし、力の限り跳ね飛ばしてやろうか……でも、もし佐藤さんに迷惑が掛かるのなら……
それとも
もしかして佐藤さんがオレの思っているような人じゃなく、オレをなぶり物にするような人だったら……
それもそれ!
殉じよう。それが厨二の意地だ!
校舎の陰に引っ張り込まれ、いよいよかと覚悟したら……
誰も居なかった。
目の前の佐藤さんはすーっと息を吸い込んだ。
「サクラチルなんて、桜井くん、気が早過ぎ! でももし、あなたの桜が散ったとしても私がサクランボの桜を咲かせるよ」
「サクランボの桜?」
「うん、ウチのマンションの庭に植わってるからよく知ってるんだ! 白いお花でね。遅咲きなの」
オレは……こんな事を言う桜井さんの心を図りかねていた。
「それって??」
尋ねると、佐藤さんは一所懸命に笑顔を作った。
「私の名前は美咲だよ! ふたりでゆっくりゆっくりお花を咲かせよう!そして……」
そう言って佐藤さんはオレの腕を巻き込んで隣に並んだ。
「ふたり、サクランボみたいにペアになって色づこう!」
『言われたオレ』と『言ったこの子』
勢い余ってくっ付いて
すぐさま赤く“色づいた”
おしまい
厨二くんはチェリーボーイ 縞間かおる @kurosirokaede
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