第6話
そして。
私が中学に上がった頃、母が突然こんな事を言った。
「荒河さんとはお別れしたから」
当時、母は四十半ば。
年齢的に ″ 女性 ″ でいるのは難しいのかな、と漠然と私は思ったのだが。
「″ 再婚したい人がいます ″ って言ったら、荒河さん、寂しそうにしてた」
寝耳に水。
しかも、そんな事を年頃の娘に話す母も母だ。
それに、二股かけてたの?
「荒河さんは、私よりも、紀保達に会いに来てたんだよ」
母が溜め息混じりのそれは、けして荒河さんがロリコンだったという意味じゃないと分かってはいたけど――
あの人が、私達母子家庭に何を求めていたのか、その頃の幼い頭では答えは出なかった。
✜
母が再婚を考えていた相手は、確か、「若村さん」という名前だったと思う。
「和食の店を営んでる人よ」
時々、夜も仕事に行っていた母。その経緯で知り合ったらしい。
「若村さんも離婚しててね、子供が紀保より一つ下と、同い年の男の子がいるのよ」
お父さんと兄弟が出来るかもしれない。
思春期真っ盛りの私は複雑な心境だった。
″ いつか、会わせてあげる ″
母はそう言っていたが、なかなか実現しなかったのには、あちらに問題があったようで。
「お兄ちゃんの方が、″ もうお母さんは要らない″ って言ってるんだって」
はじめの奥さんが出ていき、若村さんの後妻である継母になる人が息子さんを虐待していたのだそう。
そんな深い事情のある若村さんだったが、ひょんな事で私たちと対面する事になった。
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