第5話


 荒河さんは、それから、私に漫画本をプレゼントするようになった。


 初めて貰ったのは、【ブラックジャック】で、少女漫画を読んでいた私にとっては、微妙だった。

 次に、母に託けてくれたものは、【ゴルゴ13】、そして【ドラえもん】。


 食わず嫌いだっただけで、読めば面白かったのだが、私が目指してる漫画とは一味も二味も違うものばかりだった。でも、


「沢山の絵を真似して描く事で上手くなるって、荒河さんが言ってたよ」


 荒河さんが、私の夢を応援してくれているのは感じ取っていたし、嬉しかった。


 そのプレゼントは、私が中学生になるまで続いた。



 ✜


 私が小六になった冬。


「荒河さんが、あんた達とコンサートに行きたいって」


 母伝いに、クラッシックのX'masコンサートに誘われた。



「えーークラッシックぅ?」


当然、私も妹も乗り気じゃなかったのだが、母が、


「行きなさい。仕事上、チケットはかなきゃいけないんだろうから」


 不機嫌に命令するので、渋々、コンサートのホールに出向いたのだった。

 

 母抜きだと余計に話す事がない為、会場へ向かう車内は緊張した。荒河さんも無口だったし。


どうせなら母と二人で行けばいいのに、と、会場に着いてからも思った。


 幕が上がると、赤いドレスを着た女性が、深いお辞儀をしてから歌い出した。

 物凄い声量に圧倒されたのだけど、 本番中は、やっぱり眠ってしまった。


ハッと目覚めた時には、荒河さんも、目を瞑って静かに寝息を立てていた。





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