第2話

 スクール水着に赤いキャップを被って、海水に潜った瞬間だった。

 ビリビリ! と、火傷のような鋭い痛みが左手首に走った。


「痛いっ!!」


 急いで海面から顔を出し、ジンジンする手首を見たら、そこに、赤茶の、長いシソ昆布みたいなのが何本もへばり付いていた。


「何これっ!?」


 勿論、クラゲだったのだが、初めて見たそれが痛みの原因なのは明らかで、私は慌てて、振り払うように左手を海に浸けた。


紀保きほちゃん、どうしたの?」


 そこへ、荒河さんが泳いでやって来た。金槌かなづちの母は、浜辺で日傘を差して、此方を心配そうに眺めていた。


  海水から手首を出して見せると、さっきのシソ昆布は無くなっていたが、その爪痕がハッキリと皮膚に残っていた。

 赤いミミズ腫が数本、浮き出ている。


「きっとクラゲだ。痛い?」


  私が頷くと、荒河さんは私の右手を引いて浜に上がった。


「直ぐに処置をしないと。ちょっと待ってて」


 私達を海の家で待たせて、荒河さんは何処からか、オキシドールを手に入れて戻ってきた。


「シみるかもしれない」


 荒河さんは、私の患部を消毒してくれた。


 幸い、毒のある触手や針は残っていなかったけれど、痛みは尋常じゃなく、もう泳ぐどころじゃなかった。


 妹もクラゲを怖がったし、母も心配したし、荒河さんも申し訳無さそうにしていて、その日は、海の家で母の作ったお弁当を早めに食べて帰る事に。


「砂浜にもクラゲいるからね」


 とんだ災難だったけど、車に乗る前に、夏休みの想い出の証として、妹と沢山の貝殻を拾った。

 ついでに、これで、夏休みの作品を作れないかと考えたのだ。









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