第11話
神社から帰ってきた庭思と装雁は、家のリビングに戻り、ぬくもりが漂う部屋でお餅を食べ始める。おせち料理も一緒に出されたが、どこか新しい年の始まりを感じさせるのは、やっぱりお餅だ。
「お餅って、なんでこんなにしあわせな気分になるんだろう」と、装雁が言うと、庭思は一口お餅を食べてから微笑む。「たぶん、昔からあるものだから。食べることで、いろんな思い出が蘇るからよ。」
庭思と装雁はお餅を口に運びながら、テレビの音が少し遠くに感じられるくらい静かな時間を楽しんでいた。そのとき、テーブルの隅に置かれた年賀状が目に入る。今日はそれを手に取る前にお餅の余韻に浸っている。
「年賀状、いっぱい来てるね。みんな元気そうだな」と庭思が言って、お餅を手にしながら、年賀状の束を手に取る。
「見て、〇〇さんからだ。去年、会えなかったけど、元気だって。こっちも書こうかな」装雁は一枚を引き抜いて、それを見せる。
「この人は手紙書くの好きだから、ちゃんと返さないと」と庭思は一枚一枚を丁寧に見る。装雁の手が、年賀状をひとつずつ開けながら、その温かみを感じている。ちょっとした小さな手紙でも、それがどこかから届いて、こうして新年にまた繋がっていく感じが心地よい。
「手紙みたいなもんだよね」と装雁が言う。
「うん、文字があると、なんだか心が温かくなるよね」庭思は、送られてきた年賀状を見つめながら、ひとつの言葉に込められた気持ちをかみしめている。
お餅を食べながら年賀状を開くその瞬間、庭思と装雁は静かな時間を共有している。それが一番、新年らしいという気がして、どこか安心感が広がっていった。年が明けて、新しい日が始まったことを感じながら、それでもゆっくりと心を落ち着けているような、そんな空気が漂っている。
年賀状が一通一通手元に集まり、庭思は最後の一枚を見て「これも懐かしいな」と呟く。「昔、よく遊んでた友達からだ。なんか、久しぶりに会いたくなった」と。
「今年は会えるといいね」と装雁が言うと、庭思は少し考えてからうなずく。「うん、きっとね。今年はきっと、何かが変わる気がする。もっと、いろんな人と繋がれたらいいな」
それを聞いた装雁は、お餅を食べながら少し微笑んで、「じゃあ、今年は年賀状だけじゃなくて、直接会えるように頑張ろう」と言った。
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