第10話
二人は外に出て、近くの神社へ向かうことにした。新年の初詣に行くのは、毎年の恒例行事のようなものだ。雪がちらちら舞っている中、冷たい風を感じながら神社へ向かう足取りは、どこか心躍るものがあった。お互いに手をポケットに入れて歩きながら、自然と話題が変わっていった。
「おみくじ、どうしようか?」と装雁が言うと、庭思は少し考えてから、「今年はいいことあるかな。」と答えた。
装雁は、長い髪が風に揺れるたびにしなやかな波のように流れ、落ち着いた深い色の瞳が何かを見透かすような鋭さを持っていた。その目は、ただの美しさではなく、どこか計り知れない深さを秘めている。顔立ちは整っており、無駄のない線が流れるように引かれ、細やかな眉がまるで自然に描かれたかのように優雅でありながら力強かった。
彼女の肌は、月明かりのように白く透き通り、指先まで完璧な均整を保っている。どこか冷徹でありながらも、その美しさの中に、どこか寂しげな雰囲気も漂わせていた。身にまとう服装はシンプルでありながら、彼女の存在感を引き立てる。白亜の長袖シャツに、柔らかな素材のボトムスを合わせて、どこか無造作に、でも決して不恰好ではない。
庭思は、装雁とは対照的に、どこか温かみを感じさせる存在だ。彼女の髪は、少し波打った栗色で、肩のあたりで優しく跳ねる。その顔には柔らかな微笑みが常に浮かんでおり、瞳は輝き、視線を向けるたびに心が温かくなるような力を持っている。小柄な体型で、やわらかな曲線を描く姿勢がどこか柔和で、見る者に安心感を与えた。
顔立ちは優しげで、どこか母性を感じさせるような、包み込むような温かさを持っている。彼女の服装は、華やかでありながらも落ち着いた色合いのものを選んでおり、淡薄桃色やベージュ、またはオフホワイトのワンピースが綺麗に着こなしていた。彼女が歩くたび、地面を踏みしめる足音が心地よく響き、その静かな存在感が周囲に溶け込むようだった。
装雁はどこか、冷静で距離を保つような美しさを持ちながらも、庭思はどこか親しみやすく、誰からも愛されるような温かな魅力を感じさせる。この二人の対比が、彼女たちの間に不思議な緊張感と、そして心地よい調和を生み出していた。
神社に到着した二人は、お賽銭を入れ、まずはお参りをした。おみくじを引く場所に移動して、装雁が「じゃあ、先に引いてみようか」と言った。庭思は少し緊張しながら、「うん、やってみる」と答える。
おみくじを引いて、それぞれの結果を見ると、二人ともなんと大吉を引いた。「すごい、大吉だよ!」庭思が嬉しそうに言うと、装雁もにっこり笑って、「やったね!今年もきっといい一年になるよ。」と言った。
しかし、庭思はおみくじの中身をじっと見つめて、顔を少し曇らせた。「あれ…でも、恋愛運がダメって書いてあるよ?」
「えっ、そうなの?」装雁もおみくじを見直して、「本当だ、恋愛運が…」と呟いた。
「大吉でこれってどういうこと?」庭思が不満そうに言った。大吉を引いたのに、恋愛に関しては厳しい結果だというのが、どうしても納得できない様子だった。
「…やっぱりちょっと納得いかないなぁ。」庭思が冗談めかして言うと、装雁は思いついたように、「じゃあ、もう一回引いてみようか?」と言った。
「え、いいの?」庭思が驚いた顔をして聞くと、装雁は「だって、今年も新しいスタートだし、もう一回試してみるのもありだよ!」と楽しそうに言った。
庭思は再びおみくじを引き直し、今度は「大大吉」を引いた。「大大吉だ!」庭思は驚きと喜びが混ざった声を上げた。装雁も「すごい!そんなの、本当にあるんだね!」と目を輝かせた。
「なんか今年、めっちゃいいことがありそうな気がする!」庭思は笑顔でおみくじをしっかり握りしめた。その姿を見て、装雁も嬉しそうに頷いた。「こんなに良い結果が出るなら、もうこれ以上望むことはないかもね。」
「でも、これって本当に大丈夫なのかな?逆にちょっと怖いくらいだよ。」庭思は少し不安げに言ったが、装雁は笑いながら答えた。「大丈夫だよ。せっかくの大大吉なんだから、ポジティブに受け止めなきゃ!」
「そうだね、今年はこの運を活かして、思いっきりやりたいことをやってみるよ。」庭思は気持ちを切り替えたように笑い、装雁も「それが一番だね。どんな一年になるのか、私も楽しみ!」と応えた。
二人は神社を後にしながら、大大吉のおみくじについてあれこれ話し続けた。装雁は「でもさ、大大吉って本当に特別だよね。恋愛運も仕事運も全部最高なんて、なんかドラマみたいだよ。」と言い、庭思も「そうだね。でも、油断せずにちゃんと努力もしなきゃね。」と答えた。
参道を歩く二人の足取りは軽く、背筋もどこか伸びていた。冬の冷たい風が頬を撫でる中、大大吉のおみくじが今年の新しいスタートを象徴しているようだった。それぞれの胸に抱く期待や希望が、寒空の下で静かに燃え続けていた。
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