第2話 チョロい奴ら

「イロ、時間を守らなきゃダメじゃないか! しかも、その原因が仲間への嫌がらせなんて……良くないぞ!」


 練習場に到着後、サッカー部の顧問・権田ごんだから説教されることとなったオレ。あのクソメガネ、全く擁護しないでチクりやがって……。でも、どんな嫌がらせか、詳しくは言っていなかった。理由は分かる。


「なあイロ、聞いているのか?」


 オレが黙って俯いていると……待ってたぜ、このパターン。


「だってぇ……」

「はっ?」


 よし!

 権田の声を聞いて、オレは心の中でガッツポーズ。このまま行くぜ!


「……怒った先生、怖くってぇ……」

「うっ!」


 オレがきゅるんと顔を上げると、そこには真っ赤な権田の顔。


「で、でも嬉しいんすけどねっ。オレを女だからって容赦せず、男子と同じように扱ってくれるんすから……。それなのに、このザマ……サーセン。めんどくせぇ女なんて……サッカー部にいらないっすよね。やっぱオレは邪魔者なんだ」

「そ、そんなことないぞ! イロは大切な仲間だ……」

「ホントっすかぁ?」


 オレが目を潤ませながら、ちょっと胸をアピールしてみると……。


「ぐ!」


 もう権田の何かが限界を超えたようだ。


「イロ……もう良いから、君も練習に加わりなさい」

「えっマジ? あざーっす!」


 っしゃ!

 今回もオレの勝ち~!

 チョロいんだよ、どスケベ鬼ゴリラ!

 

「先生、話が違うじゃないですか!」

「ネ、ネオ……」


 チッ、このクソメガネ。


「さっきのイロを叱るという約束は、どうなったんですか!」

「し、しかし……」


 にーげよっと。


「おい、お前ら! オレも入れろ!」

「おう!」


 こうしてオレは無事に練習に加わることができたが……。




「先生にも色仕掛けをするとは、タチが悪い!」

「っせーな。ついてくんなよストーカー」

「お前の隣人なんだから、それは仕方がない!」

「どこまでも迷惑な野郎だぜ……」


 実はオレたちは、お隣さん同士だ。だから、こうして共に登下校することも少なくない。部活終了後は、こいつの説教が始まった。


「お前、権田にセクハラの説明はしなかったのかよ~」

「そんな説明を詳しくしたら、権田先生は身が持たないだろう……」

「まあオレがウルウルしただけでトゥンクしちゃうもんな、あいつ! そんな奴にオレのセクハラを説明すりゃ、ちんこやべーことになりそうだぜ! ギャハハ! マジ笑える! 今オレのこと考えてオナってんじゃねーのぉ? キモッ! あの感じだとぜってぇ童貞だよな権田ぁ?」

「お前のビッチと言葉遣い……本当に、どうにかしたい」


 ネオは頭を抱えているが、そんなんで変わるもんか。オレは誰が何と言おうと、このままだ。

 あ、そうだ。


「ふーん。お前オレを、どうにかしたいんだ?」 

「お、お前のビッチと言葉遣いだよ!」

「プッ……ムキになってんじゃねーよ」

「勘違いするな!」

「顔、真っ赤じゃんかよ。何を想像した?」

「黙れ!」


 このクソメガネもチョロいよなー……。

 っつーか、どいつもこいつもチョロい!




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

はらぐろ☆ボーイッシュ 卯野ましろ @unm46

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画