はらぐろ☆ボーイッシュ

卯野ましろ

第1話 ボーイッシュ女子VSメガネ男子

「あの、私ずっと……」

「うん……」


 出た出た。

 恋愛漫画とかで、よく見るやつ!


「あっ、あなたのことが……」


 でもな、そうはいくか!


「おーい! 何やってんだ? 早く部活、行こうぜ!」

「おっ! ごめん、また今度!」


 よっしゃ!

 こっちに向かってくる奴を、オレは笑顔で見ている。


「あ……」

「へへっ、ごめんな!」

 

 何か言いたげだった女子に謝りながら、


「ほら行くぜっ!」

「うおっ」


 オレは同じサッカー部の仲間と、その場から離れた。ちなみに今、オレたちは肩を組んでいる。




「……なあイロ」

「あ?」


 オレは肩を組んでいる奴に、呆れ顔を向けられている。


「お前、少しは空気読めよ~」

「へっ、どゆこと?」


 オレの返答を聞くと、ハーッと奴はタメ息を吐いた。対するオレは、ひたすら「?」だ。


「あの感じ、ぜってぇ告白だった! でもイロが邪魔したんだよ! お前マジ何してくれんだよぉ~っ!」

「はぁ? ちげーよ勘違いすんな。あれは告白じゃねー。オレ、すぐ分かったぜ」

「そ、そうか?」

「そ。だから自惚れんな」

「……あーあ。気付いていたのかよ、イロ」

「へへっ!」

「やっぱり女子だから、そういうの分かるんだな」

「あったりめーだ!」


 そう、オレ羽倉はぐら伊呂いろは女だ。

 でも……オレは女が大っ嫌いだ!


「ほらほら。しょうがねーから、オレのおっぱいで我慢しな!」

「そ、それは……」

「ダチなんだから遠慮すんな!」

「いや、そういう問題じゃ……」

「おい、これじゃ不満だってのか? さっきの女よりデケェのによクソ!」

「う……」


 オレが自慢の胸を近付けても、こいつは戸惑って全く触ろうとしない。まあ、それでも良い。

 はああ、かわいいなぁ。

 キョドる男、堪んねぇ!

 オレ巨乳に生まれて幸せ!

 

「あー、ヘタレだな! よし、それならオレが」

「コラ、何してんだ! 早く来いよ!」

「ゲッ……」

「あ、その声は!」


 オレがグイグイ迫っていると、よく知っている怒声が聞こえた。


「うわ出た、メガネ男」

「人を妖怪みたいに言うな!」


 出やがったな、オレの幼なじみにして天敵のメガネ男……目賀めが音男ねお


「ネオ、助けてくれ! おれは今セクハラの餌食に……」

「ああ、分かっているさ。じゃ、先に行ってくれ! 君は何も悪くないんだからな!」

「あ、ありがと!」

「僕はイロと話すから……遅れて戻ることを先生や他の部員たちに伝えてくれ」


 オレから解放された奴は「了解!」と言いながら去った。そしてオレは女と同じくらい嫌な幼なじみと、二人きり……。


「お前……セクハラも、いい加減にしないか」

「うっせ。てめえも本当は触りたいくせに」

「……ほら、早く行くぞ」

「あ、図星だ~! 背ぇ向けてんじゃねーぞバーカ!」

「気が変わった! やっぱり部活へと急ぐぞ!」

「オレに説教するつもりだったのに?」

「うるさい! お前のことは、代わりに先生に叱っていただく!」

「おい、振り向けよ。もう勃ってんだろ? 早く見せろよ、ちんこ!」

「バカ! そんな下品なことを言うな!」

「健康な男で安心したぜ。お前は堅そうに見えてチンポ……いやインポじゃねーんだなぁ」

「そんな大声で……女の子なのに」

「はい出ましたぁ男女差別~。じゃあオレも言ってやる。そんなお前は、男のくせにマネージャーかよ! しかも女のオレより運動できなくてよぉ! 情けねぇな!」

「人に向き不向きがあるのは当たり前だ!」

「大体、運動神経ゼロな男が無理矢理サッカー部に入んな! マネージャーとして入部なんて、きったねー!」

「でも結果的に、みんな僕を認めているじゃないか! 色気で男子を困らせる、お前と違って!」

「ああ? てめえよりオレのが部に貢献しているっつーの!」

「あー、もう黙って歩けよ!」

「そっちもなクソマネ!」


 オレたちはギャンギャン言い合いながら、みんなが待つ練習場へ向かった。

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