第8話 "バラの葉"

(ジェイと大闇人が対峙、ジェイは白い光に包まれている)

大闇人『…アアア…コロス……』

(大闇人が噛み付いてくる)

ジェイ『やべっ』

(ジェイはベッドを投げる、大闇人がベッドに噛み付く、ベッドは噛み砕かれず牙が刺さる)

ジェイ(ヤツの牙には毒があるはず…一撃でも食らえば終わりだ)

(ジェイはそのまま進み大闇人の尻尾を掴む)

ジェイ『オラアアア!!』

(ジェイは大闇人を投げる、大闇人が部屋から庭園へ落ちる)

(ウィンチェット博士が庭園に闇人がいるのを発見する)

ウィンチェット博士『何が起きてるんだ…!?』


(ジェイが足に白い光を溜め、上からまっすぐ降りてくる、拳に白い光を集める、大闇人の腹に拳をぶちかます)

大闇人『……アアア…コロス…』

(ウィンチェット博士が下に降りてくる)

ウィンチェット博士『なんなんだ…一体何が…』

(庭園、大闇人が何度も噛み付いてくる、ジェイは避け続ける)

(ジェイは距離をとる、大闇人がジェイに勢いよく噛み付く、ジェイは避ける、大闇人は地面に噛み付いている)

ジェイ『オラア!!』

(ジェイは大闇人のその伸びた腹に拳をぶちかます)


(大闇人はフラフラしている)

大闇人『……アアア…コロス…』

(大闇人が庭園を這い回り、ジェイに襲いかかる)

ジェイ『集中…』

(大闇人が牙を剥き猛スピードで飛びかかる、その直前ジェイは素早く横へ身を躱す)

ジェイ『これで終わりだァァァ!!』

(ジェイの渾身の拳の一撃、大闇人の頭部に直撃させる、衝撃波が庭園を揺るがし、大闇人がその場で痺れたように動きを止める、大闇人の体が一瞬怨念のような黒い靄を放つ、次第に真っ赤な炎に包まれていく

大闇人『コ…ロ………』

(炎が消滅する)


(静寂が戻った庭園、灰が風に散り、月明かりがジェイを照らしている)

ウィンチェット博士『やってくれたな…』

ジェイ『……』

(庭園にウィンチェット博士が現れる)

ウィンチェット博士『なぜ闇人(ヤミビト)がいるとわかった? これに気づくなんて君みたいなバカにできるはずがない』

アル『おれがいるからだ』

(砂雲が飛んでくる、アル、ヴァン、ヘンリーが現れる)

ウィンチェット博士『…!! アル・アントレジャン!! ヘンリー!!』

アル『まさか 都市伝説を現実にする奴がいるとはな…』

(アルは静かに赤く染まった白バラの花を一枚摘み取る)


アル『この赤黒い変色…どうやら この白バラは媒介になっている… 呪いの力を通すための…』

ヴァン『白バラが…!?』

(ウィンチェット博士が息を飲む)

アル『バラの葉に折って笛にし…てめェの血を吸わせて使うんだろ…!? 笛の音が響きゃ白バラにその呪いの力が伝わる その影響で白バラは瞬時に赤く染まる そして…』

(アルは庭園からバラの部屋を指差す)

アル『呪いの力が あのバラ模様を目印にして向かっていく』

ジェイ『じゃあ部屋の模様は最初から…!?』

アル『最終的に呪いのエネルギーはあの部屋の壺に集約される 壺が呪いの力を溜め込み闇人を具現化させた ソイツは毒を持っている 笛で少し噛ませるよう操ればいい』

ヴァン『でも その呪いの力はどこから…!?』

アル『この庭の土だ』

ヘンリー『なんで土から…!?』

アル『この土地の過去を考えれば 答えは明白だ』


(アルは庭園の白バラを見つめたまま声を低くする)

アル『この土地はかつてテリア家のものだった… バラ戦争で白バラのヨークシャー家が勝ち…この土地を手に入れた……だが 勝利と共に何が行われたか…』

(アルはバラを一本取り、その棘を指先で軽く撫でる)

アル『この土地に咲いていた赤バラを根こそぎ処分し 代わりに白バラが植えられた… それだけじゃないテリア家の多くの命が奪われこの土地に埋められた… この庭の土の中には…そうした呪いが眠っている』

ヴァン『そんな事が…』

アル『そしてテメェはテリア家の人間なんだろ!?』

ウィンチェット博士『…!!! どうしてそれを…』

アル『テリア家の人間はバラの葉を大事にする… 葉を笛にするアイデアもそこから来たんじゃねェのか!?』

ジェイ『…!!』

アル『てめェの目的は復讐…そして庭を取り戻すこと』

ジェイ・ヴァン・ヘンリー『…!!』

アル『てめェはブレイオークで 木の笛による闇人(ヤミビト)の具現化を発見し ヨークシャー家の土地とバラの笛のアイデアが結びついた… そして…全てを実現するためだけにこの家の家族になった…違うか!?』

(ウィンチェット博士が笑みを浮かべる)


ウィンチェット博士『素晴らしいな まさにその通りだよ… 実に見事な推理だ』

(博士は静かな笑みを浮かべながら語り始める、その声には皮肉と苛立ちが入り混じっている)

ウィンチェット博士『私はテリア家の生き残りだ… 生まれた時から何もかも奪われていた… いろんな場所を転々として必死に生きてきた…』

ウィンチェット博士『研究で訪れたブレイオークで呪いの力の具現化の存在を知った… あれはまるで私のためにあるのかと感じたよ』

(ウィンチェット博士が赤い白バラを手に取る)

ウィンチェット博士『そして具現化とこの家のバラが見事に結びついた… バラを媒体にするなんて皮肉なものだろう? 我々テリア家の赤バラを処分して植えたヨークシャー家の白バラが… 彼らの象徴であるその庭が… 呪いの力を増幅する装置となるなんてな… だが これこそが相応しい復讐というものだ…!!』

ヘンリー『僕たちは…あなたの復讐のためにいただけの存在なんですか!? 思い出も…全部ウソだったんですか!!?』

ウィンチェット博士『当たり前だ 人は何かを得るために家族を作るんだ…みんなそうじゃないか!? 住む家を用意して欲しい… ご飯を作って欲しい… 慰めて欲しい… 自分の存在価値を見出して欲しい… 私もその理に忠実に従っただけだ…!!』

(ジェイが口を開く)

ジェイ『そんなの全部間違ってる!!!』

(ジェイがウィンチェット博士の元へ歩く)

アル『…オイ!!』

ジェイ『誰かに何かして欲しくて家族作ンのか!? 』

(ジェイはウィンチェットの元へ歩く、ウィンチェットは笑みを浮かべている)

ジェイ『血が繋がっててもそうじゃなくても… 家族ってのは…そういうモンじゃねェだろ…!!』

(ジェイが手を挙げる)

ヴァン『よせ!!』


(ジェイがウィンチェット博士の胸ぐらを掴む)

ジェイ(泣きながら)『人は…何かしてやりてェから家族作ンだろうが…!!』

アル『……!!!』

ウィンチェット博士『なぜ 君が泣く?』

ジェイ(泣きながら)『だってあの紅茶… ヘンリーさんたちに何かしてやりてェって思って作ったんじゃねェのかよ!?』

ウィンチェット博士『…!!』

(ウィンチェット博士から笑みは消える)

ヘンリー『…!!』

ジェイ(泣きながら)『バラの葉っぱもヘンリーさんたちも大事にしようと思って作ったんじゃねェのかよ!!!?』

(ヘンリーが泣き崩れる、怒りも悲しみもいろんな感情が混じる)

(ウィンチェット博士がそれを見て泣き崩れる)

アル『ヴァン』

ヴァン『はい』


(ガチャン ヴァンがウィンチェット博士に手錠をかける)

(ヘンリー・ジェイが立つ、向かいにウィンチェット博士・アル・ヴァンが立つ)

ヘンリー『父さん』

ウィンチェット博士『…』

ヘンリー『父さんのことは許せない…!! 本当に許せない… でも父さんは僕たちの家族だから』

(ヘンリーがバラの葉が入っているしおりを渡す)

ヘンリー『小さい頃よく作ってくれたよね 僕は兄さんのを使うから』

(ウィンチェット博士が過去を思い出す)

〜過去シーンが流れる〜

(夜 植物の研究しているウィンチェット博士)

ウィンチェット博士『まだ寝ないのか』

幼少期のヘンリー・ハンフリー『寝れない』

ウィンチェット博士『そうか じゃあ今日はこの植物について教えてあげよう』

(別の日、ヘンリー・ハンフリー・ウィンチェット博士が栞を作る)

ウィンチェット博士『バラの葉には「あきらめるな」という意味がある』

ヘンリー・ハンフリー『へー!!』

(数年後、ヘンリーが勉強で挫けそうになっている、ウィンチェット博士が見守る、ヘンリーの本にはバラの葉の栞が)

大学校入学前のヘンリー『まだあきらめちゃダメだ』

(ハンフリーがウィンチェット博士の前に座っている)

4年前のハンフリー『父さん!! 僕結婚するんだ!!』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(ウィンチェット博士が涙を流す)

ウィンチェット博士『……すまない……息子たちよ…』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る