第6話 "バラの部屋"

アル『あー脳が乾いた』

ジェイ『なんだそれ? 水分足りてねェのか?』

アル『そうじゃねェ… 知的好奇心が満たされてねェって事だ』

ジェイ『チテキコウキシン… よくわかんねェ』

アル『「もっと知りてェ」と思う気持ちの事だ』

ジェイ『知的好奇心ってそんなに必要なのか?』

アル『当たり前だ 想像は…知的好奇心から始まる…!!』

ジェイ『うーん まあわかったような わかんねえような』

アル『てめェは持ち人(ホルダー)の力についてもっと知りてェか!?』

ジェイ『ああ 知りてェ』

アル『それも知的好奇心だ 「知りてェ」って気持ちがあるなら”力”の使い方を想像しろ…そうすりゃ使いこなせるようになる』

ジェイ『”力”の使い方…』

アル(通貨を差し出す)『”力”に関係ありそうだと思った本を買って読んでみろ…!! あとおれに植物についての本を買ってこい』

ジェイ『オイ!! おつかい頼みてェだけじゃねェか!!』

(ジェイが街を歩く、周囲がざわつく)

人々『あ あの人って…』『屁の持ち人(ホルダー)だ!!』『デケェ!!』『2Mくらいあんじゃない!?』

ジェイ『力だっつの…』

(反対側がざわつく)

人々『あ!! あれは!!』『ヘンリーさんだ!!』


(ヘンリーがヴァンと一緒に歩いてくる、ヘンリーは何かに怯えているような表情、ヴァンが深刻そうな表情で話を聞いている)

「ヘンリー・ヨークシャー、地人(チビト)、ヨーク製薬代表」

ヴァン『それで騎士にご依頼を…』

ヘンリー『はい… ただ何も分からないんです』

ジェイ『なんだ なんの話だ?』

(ヴァンがジェイに気づく)

ヴァン『やあ ジェイさん』

ジェイ『ジェイでいいよ それよりどうしたんだよ? そんなに深刻そうな顔して』

ヴァン『いやそれは…』

ヘンリー『あなたは屁の持ち人(ホルダー)…!!』

ジェイ『だから力だっつの』

(ヘンリーがジェイの手を握る)

ヘンリー『ど…どうかお助けください… ぼ…僕はもうすぐ殺されるかもしれない…』

ジェイ『…!!』


(持ち人邸宅、アルが不機嫌そうに座っている)

(ジェイが立っている、ヴァンとヘンリーは座っている)

アル『ヴァン てめェこれどういう事だ…!?』

ヴァン『いや…すいません…』

ジェイ『なんか悪ィ事したか?』

アル『小僧 持ち人(ホルダー)ってのァ 通常闇人(ヤミビト)関連の事件にしか関わらねェんだ 民間の事件の依頼は騎士に任せんだよ』

ジェイ『なんで 困ってる奴がいりゃ助けるだろ 普通』

アル『いざ砂の狼煙が上がった時に出動できません間に合いませんじゃ話になんねェだろうが…!!!』

ジェイ『でも今日は上がってねェだろ それに襲われるかもしれねェ奴がいたら ほっとけるワケねェだろ!!!』

ヘンリー『ジェイさん す…すみません… や…やっぱり』

(ヘンリーが帰ろうとする)

アル『待て』


アル『襲われるってのァどういう事だ…!? 闇人(ヤミビト)か!?』

ヘンリー『……わかりません』

アル『4年前の事と何か関係があるのか…!?』

ヴァン『…!!!』

ヘンリー『あると…思います』

ジェイ『何があったんだ…』

ヴァン『ジェイはもっと新聞読んだ方がいいす』

アル『ヨークシャー家は代々製薬会社を営む家系だ コイツの兄は会社の代表だった が4年前突然死した 死因は毒死』

ジェイ『え…!?』

アル『そしてコイツが若くして代表になったってワケだ 当然疑いの目はコイツに行った だが何も出てこなかった』

ヘンリー『…』

ヴァン『結局 毒で自殺してしまったんじゃないかってことで事件が閉じたんす』

ジェイ『毒…』

ヴァン『僕は学生時代からこの事件がずっと頭に残ってて 今回話を聞かせてもらってたんす』

アル『おれァ財産争いのゴタゴタもその隠蔽にも興味はねェ だが本当に闇人(ヤミビト)に襲われてるってんなら話は別だ』

(ヘンリーが目を瞑って顔を抱える)


アル『一旦話を聞こう すべて話してくれ』

(ヘンリーが手を顔から離す)

ヘンリー『はい… 小さい頃 私と兄ハンフリーは闇人(ヤミビト)大戦で両親を亡くしました 当時会社の代表だったウィンチェット博士が育ての父となり白バラの屋敷と財産を管理してくれました』

ジェイ『おれと似てる…』

アル『白バラ…ヨークシャー家の象徴か』

ヘンリー『白バラはヨークシャー家…そして生命と平和の象徴です 父は私たちが結婚する際に白バラの屋敷と財産を相続すると約束してくれました』

ジェイ『おとういいやつだな…』

アル『それまでは父親が持ってるって事か』

ヘンリー『はい… そして4年前に兄の結婚が決まり”バラの部屋”で過ごすことになりました』

ヴァン『”バラの部屋”?』

ヘンリー『庭園に最も近い場所にある部屋で…一面にバラが描いてあります… 結婚する際にプレゼントできるよう父が用意してくれていたそうです そして兄はある日こんなことを私に言いました』


ヘンリー『「真夜中に笛の音が聞こえる」と』

ジェイ『笛? 誰かが演奏してるのか?』

ヘンリー『演奏者は見つかりませんでした うちには笛などありませんし…』

アル『他に誰かその音を聞いたか?』

ヘンリー『いえ 兄だけです』『笛の音が聞こえるようになったと言ってから6日後…兄はバラの部屋で亡くなったんです”血のように赤いバラ”という言葉を残して』

ジェイ『赤いバラ…白? 赤?』

ヘンリー『そして私の結婚も決まり バラの部屋を用意してもらいました そして私もまた…笛の音を聞くようになったんです でも誰に相談しても相手にしてもらえなくて…』

ヴァン『……』

アル『今日笛の音が聞こえてから何日目だ…?』

ヘンリー『4日目です』

アル『2日後に死ぬかもしれねェって事か…』

ジェイ『え!!? 2日後!?』

(ヴァンが頭を下げる)


ヴァン『アルさん… ジェイ… ヘンリーさんを守るためにどうか力をお貸しください!!』

アル『いいだろう』

ジェイ『アル…!!』

ヘンリー『…ありがとうございます!!』

アル(ジェイを親指で差す)『その代わり動くのは全部コイツだ』

ジェイ(押忍というポーズで)『よろしくおねしゃす ってええ!?』

アル『おれァ万が一の時のためにここにいる』

ヘンリー『アルさん… 僕は何をすれば…』

アル『そうだな…… まずてめェら全員に約束して欲しいのァ 父親には何も話すな… 特におれと会ったことはな』

ジェイ・ヴァン・ヘンリー『…!!』

アル『んで… やって欲しいことは…』


〜"メカリザ ヨークシャー家"〜

(ジェイとヘンリーが白バラの屋敷に向かって歩いている、横には庭園が広がる)

ジェイ(少し緊張しながら)『うお でけー』

ヘンリー『さあ行きましょう』

(ヘンリーがドアを開ける)


執事・メイド『おかえりなさいませ ヘンリー様』

(執事・メイド・ウィンチェット博士がいる)

ヘンリー『ただいま帰りました それと今日は客人が』

ジェイ『ジェイです は…はじめまして…』

執事・メイド(…あの屁の!!)

(後から男性がやってくる)

「ウィンチェット・ヨークシャー、地人(チビト)、ヨーク製薬顧問」

ウィンチェット博士『はじめまして ウィンチェット・ヨークシャーと申します』『これはこれは 屁 あいや 失礼いたしました 力の持ち人(ホルダー)の方ではないですか』

ジェイ『こちら よかったら』

(ジェイが手土産を差し出す)

ウィンチェット博士『恐れ入ります』

ヘンリー『持ち人(ホルダー)としてのご挨拶と 僕の結婚祝いで来てくださったんだ』

ウィンチェット博士(鋭い眼光で)『ほう…』

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