第4話 "想像力こそが力"

(騎士学校のモハメドの校長室、ジェイ、モハメド、アルが向かい合って座っている)

アル『緑の精霊(スピリトス)か… 歴史上には存在しねェな』

モハメド(ジェイの方を見て)『おまえ 戦ってる時どんな感覚だったんだ?』

ジェイ『拳や足に力が集まってきて… それが溢れて止まらない感じなんだ』

アル(人差し指をこめかみ・親指を頬骨の下、いつものポーズ)

『力を集めて増幅させるか… とりあえずてめェは力の持ち人(ホルダー)だとしておこう じゃあまずは…』

ジェイ『まずは!?』

アル『退学だな』

ジェイ『はァ!?』

(モハメドが頷いている、そうなるよね)

(数日後)

(生徒がざわつく)


「退学命令書

986年度入学、学籍番号〜、996年〜月〜日

氏名:ジェイ・アントニオ

上記の者、生徒としての本分に反したことにより、騎士学校校則89条第4項の規定により、本日付けで退学を命ずる

騎士養成学校 エディスピア校長 モハメド・アントニオ」

生徒達(小声で)『あいつ何したの? もしかして人やっちゃった?』『いや もう騎士になるって聞いたぞ』『親のコネでも使ったんじゃない?』『でもこの間の将闇人(ジェネラル)あいつが撃退したらしいぜ』

(騎士養成学校、校門近く、ジェイとティールが話している、ティールは本をもっている)

ティール『そうか… 』

ジェイ『おめェだけにはちゃんと話しておこうと思って…』

ティール『僕は卒業後 第3騎士団で研究者になることにしたよ いずれ研究でお前をサポートしてやる バカだからな』

ジェイ『うるせえ!! あ でもおれ退学くらってたわ』

ティール(笑顔で)『最高じゃねェか! 89条第4項! あの人たちと一緒だなんて!!』

ジェイ『誰だよ!?』

(砂嵐が吹く、ジェイ達が顔を覆う)

(砂が人の形になっていく)


アル『無駄話はその辺にして さっさと行くぞ』

ジェイ『無駄話じゃねェよ!!』

(アルが手を地面にかざす)

アル『浮遊(メチュ)』

(地面の砂が集まって砂雲ができる)

アル『乗れ』

(ジェイが砂雲の上から手を振る)

ジェイ『じゃあ行ってくるわ!!』

(ジェイ達が遠ざかる、ティールは手を挙げている)


ティール『すっかり 遠くに行っちまったな…』

(ジェイとアルが砂雲の上にいる)

ジェイ『どこ行くんだ?』

アル『メカリザだ 皇帝に会いに行く』

(遠くで狼煙が上がる)

ジェイ『あれ 砂の狼煙に似てるな』

アル『あれは通常の狼煙だ 騎士団の出動が必要な時に上げる』

ジェイ『砂の狼煙は?』

アル『特殊な狼煙だ 持ち人(ホルダー)の出動が必要な時に上げる』 『持ち人(ホルダー)の能力を狼煙にしている為 上げた場所がわかる ここヴァルコマ王国では砂… 隣のフロリシス王国は炎… その奥のカシュミリ王国では金属だ』

ジェイ『金属の狼煙って意味わかんねェよ』

アル『見りゃ一発でわかる』

ジェイ(驚いた顔で)『ってかおめェ 砂の持ち人(ホルダー)だったんだな!!』

アル(ビシッ)『見りゃ一発でわかんだろーがァ!!』


アル『それに学校で一番初めに勉強する事だろうが てめェ学校で何教わってきたんだ!?』

ジェイ(ちょっとムッとして)『おれはトレーニングの勉強をずっとしてたんだ!! おれの読んだ本には「人間の身体こそ力」って書いてあったぜ おめェ案外バカなんだな』

アル『人間は想像こそが力だ…!! 想像することは人間にしかできねェ バカはてめェだろうが』

(騎士の声がする)

?『アァールさぁああーん』

(ジェイとアルが地面の方を見ると騎士が走ってくる)

(ジェイとアルが地面に降りる、早口で話す)

アル『ヴァンか どうした!?』

「ヴァン・ホーテンベルク、地人(チビト)、第1騎士団騎士見習い」

ヴァン『ハァハァ…ちょうどよかったっす ハンブルティア山間部で大闇人(マニュス)が出現 討伐にご協力ください』

アル『民間への被害は?』

ヴァン『ありません ところでこちらのアフロの方は!?』

(話すスピードが普通に戻る)

アル『コイツはジェイ 力の持ち人(ホルダー)だ』

ジェイ(押忍というポーズで)『よろしくおねしゃす!!』

ヴァン『…なるほど 力の持ち人(ホルダー)……』

(ヴァンが無表情になり時が流れる)


ヴァン『えええええー!!!! いやいや 聞いたことないっす!! これドッキリかなんかすか!!?』

(アルがヴァンに近づく サングラスが光る)

アル『おれが真面目な顔で冗談言ったことあるか!? あァ オイ!?』

ヴァン『いや ないっす!! ないっす!!』

アル『近々ジュリアンさんから 正式な任命が発表される予定だ』

ヴァン『ヴァン・ホーテンベルクです!! ジェイさん よろしくお願いします!!』

ジェイ『うす』

(ジェイが頭を下げる)

ジェイ(大闇人(マニュス)か アルに要請が来るってどれくらいの数なんだろう)

アル『ところで 総力は?』

ヴァン(キリッ)『大闇人(マニュス)1体 総力1,000です!!』

ジェイ・アル『はァ!? おめェ|てめェ1人でも倒せるだろ!!』

ヴァン『いや それが…』


(現場へつく、ほぼ草原、ちらほら大木が生えている)

ジェイ(驚いた顔で見上げて)『マジか…』

アル(ニヤッとして)『あァ そういうことか…』

大闇人『アアアア!!』

(飛行型の大闇人が空を飛び火を吐いている 騎士達が逃げている)

騎士達『とりあえず逃げろォ!!』『時間を稼ぐんだ!!』『なんとか倒す方法考えろ!!』

アル(ニヤニヤしながら)『丁度いいな… 小僧 てめェがやってこい』

ジェイ『うす』


大闇人『アア…マダカ…』

(大闇人が飛び回りながら炎を落とし続ける、ジェイは逃げ回っている)

ジェイ『うわああああ!!』

(アルは大爆笑、砂時計を持っている)

アル『カッカッカ!!』

アル(遠くから)『おーい!! 死ぬなよー!! 力の持ち人(ホルダー)!!』

ジェイ『ちくしょう』

(ジェイが構える、足に力が集積)

ジェイ『オラ!!』『オラ!!』『オラァ!!』

ジャンプして何度も殴りに行く、避けられる)

ヴァン『なるほど あれが力の持ち人(ホルダー) だが惜しい…!!』

(大闇人が降りてきて尻尾で攻撃、ジェイは避ける)

大闇人『アア…マダカ…』

(大闇人が羽ばたく)

ジェイ『くそっ!!』 (あいつ高いところから好き放題やりやがる!! これじゃ手が出せねぇ!!)

(アルの砂時計の砂が落ちきる)

アル『時間だな…』

(アルが砂になって飛ぶ)


(ジェイの元へ砂になったアルがやってくる、砂がアルになっていく)

アル(ニヤニヤしながら)『オイオイ… 身体ってのァ 力なんじゃねェのかよ?』

ジェイ『じゃあどうすりゃいいんだよ!! おめェやってみろよ!!』

(アルが手を地面に当てる、大闇人の下に砂が集まって上に盛り上がっていく)

(大闇人の下に複数の砂柱を作り出す)

ジェイ『な なんだ!? こんなことして何になるんだ!?』

(アルが手を動かす)

(複数の砂柱がグルグル周り始める)

ヴァン・騎士達『え…どういうことだ?』『なんだ!?』

(複数の砂柱がグルグル回り砂嵐のようになる、巻き込まれて大闇人の高度が落ちていく)

大闇人『…アアア!!…マジカ…』

(大闇人が落ちる)

ジェイ『なんで…!?』

ヴァン・騎士達『すごい…!!』

(アルが両手を顔の前に上げる)

(回っている砂柱が砂になってその回転のまま大闇人を囲んでいく、ヒュンヒュン、砂の塊になっていく)

大闇人『…アアア…』

(アルが両手を合わせる)


アル『墓陵による圧潰(ティシチ・クフ・ギザ)』

(ボフ!!!! 大闇人が砂に潰される)


(砂が晴れる 大闇人が炎となって消えていく姿が僅かに見える)

(ヴァン・騎士達が走ってくる)

ヴァン・騎士達『ありがとうございます!!』

ジェイ『マジか………』

アル『あの大闇人(マニュス)は上昇気流に乗って飛んでただけだ 気流を乱せば自然と落ちてくる』

ジェイ『でも上昇気流なんて…』

ヴァン『なるほど…!!! あの羽ばたきで気流を作って…炎の熱で温めていたってことっすかね!?』

アル『おれの仮説も同じだ』

ジェイ『でもおれは砂なんて使えねェし』

アル『アレでも使えば ちったあマシだったんじゃねェか?』

(アルがちらほら生えている大木を指差す)

ジェイ『…!!』

(アルがみんなの方を向く)


アル『人は想像こそが力だ…!! 知識をつけ想像力を働かせろ…!! おれたち持ち人(ホルダー)や騎士にゃ「できませんでした」じゃ取り返しのつかねェこともあるんだ…… 強くなって誰かを守るってのァそんな甘ェ話じゃねェ…!! よく覚えておけ』

(ジェイ・ヴァン・騎士達は気を引き締める)

ジェイ『うす』

ヴァン・騎士達『はい!!!』

アル『よし じゃあおれァメカリザに行くわ』

(アルは砂雲に乗っている)

ヴァン『あ 俺たちもメカリザ行くんすよ!! 乗っけ…』

アル(睨んで)『てめェらは走れ』

ジェイ『え…ちょ…おれは!!?』

アル『てめェも走れ 道はコイツらに教えてもらえ』

ジェイ『え!?』

アル(ニヤニヤしながら)『身体こそ力ってのも一理あるしな じゃあな』

ジェイ『性格わるー』

(アルの砂雲はビュンと消えていく)

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