第2話 "強くなるしかねェんだ"
(朝日が差し込む森の中)
騎士達『…もう……誰も……』『あの神木も……倒れてしまったんですね 村の象徴だったのに……』
(アルの元へ騎士が走ってくる)
騎士達『アルさん ネックレスが落ちてました』
「アル・アントレジャン、地人(チビト)、持ち人(ホルダー)」
アル『…!!! どこかに生き残ってる奴がいるはずだ とにかく探せ…!!』
騎士達『いたぞ!!! 子供が……!!!!』
(騎士達が急いで駆け寄り木の下に埋もれていたジェイを発見する、傷だらけの騎士が木片を払いながら慎重に抱き上げる)
(ジェイの顔には土と涙が混じり、息も絶え絶えだが、なんとか意識を保っている)
ジェイ(かすれた声で)『……おとう……おかあ……』
(ジェイは気を失う)
傷だらけの騎士『息はある!!! 今すぐ手当てを!!!!』
(暗闇の中ぼんやりとした意識が戻る ジェイが目を開けると夕方の病室 白い天井と薬草の匂いが鼻をつく)
(硬いベッドに横たわり布団がかけられている 机の上にはゴールドのネックレスが置いてある)
傷だらけの騎士『おい 気がついたか!』(傷だらけの騎士モハメドがジェイの顔を覗き込む)
ジェイ『……ここ……どこ?』
「モハメド・アントニオ、地人(チビト)、第1騎士団騎士」
モハメド『ヴァルコマ王国の病院だ もう安全だぞ』
(モハメドが安心したようにベッドのそばに腰掛ける)
(外では鐘の音が遠くで鳴り響いている)
?『よく生き延びたな』
(声の方を向くとサングラスをかけた男が立っている)
ジェイ『……だれ…?』
アル『おれはアル・アントレジャン 第1騎士団と共に闇人(ヤミビト)と戦っている』
ジェイ『…!!』
(ジェイはアルに向かって体を向ける 怒りで涙をこらえきれない)
ジェイ『……なんで……助けに来なかったんだよ……!!』
(言葉を絞り出しジェイはアルを睨みつける 目には涙がにじみ 怒りと悲しみが混ざっている)
(アルは黙ってその言葉を受け止めている)
ジェイ『おとうも…おかあも……村のみんなも…もういない……!!』
(ジェイは拳を握り 震えた声で叫ぶ)
アル『……』
(アルは静かにジェイを見つめる)
ジェイ『くそっ!!! おまえ達最強なんだろ!!? なんでもっと早く来なかったんだよ!!!!』
(怒りのままジェイはネックレスを投げる アルに当たり地面に落ちる)
アル『……』
(アルはネックレスを拾う 何も言わず 静かに窓の外を見る)
(ジェイがその視線を追う)
ジェイ『…!!』
(王国の街が半壊し 煙が上がっているのが見える)
(泣いている人 叫んでいる人 血まみれの人 走る騎士達 体が欠けた騎士が見える)
(ずっと遠くに見たことがあるような巨木が少しだけ見える)
アル『この国も…隣の国も…闇人の襲撃を受けていた おれたちはここを守るので手一杯だった……』
ジェイ『………』
(ジェイは拳を握りしめる どうしようもないやるせなさが胸を締めつける)
(ジェイの目から涙がさらに溢れてくる)
ジェイ『…お おれは…何も守れながっだ……!!』
(アルはしばらく沈黙を続ける その表情には陰がある)
アル『……生き延びたおれ達が強くなるんだ』
ジェイ・騎士達『…!!』
アル『強くなれ小僧…!! 死ぬほど努力して強くなるしかねェんだよ…!!! …でなきゃ守りてェモンも守れねェ』
(騎士達が後ろで涙を流している)
アル『てめェはこれからいくらでも強くなれる』
(ジェイは泣いている顔をアルへ向ける)
アル(ジェイにネックレスを渡しながら)『よく考えて選べ 絶望から立ち上がって戦うか 絶望に沈んだまま生きるか』
(ジェイは涙を拭く 拳を握りしめる)
モハメド『おれはモハメド…… おまえ名前は?』
ジェイ『…ジェイ』
モハメド(笑顔で)『よしジェイ 今日からおれと一緒に暮らそう』
(モハメドはジェイの頭に手を置き 優しく言う)
アル『…!! モハメド先輩…!! 覚悟はあンのか!?』
(モハメドは強い決意を込めて頷く)
モハメド『ああ こんな世界で1人きりにできないだろ コイツの村は瘴気で覆われて禁足地になっちまったしな』
(モハメドは窓の外を見る)
モハメド『それにおれは… 騎士以外にやりたいことができたんだ』
アル「そうか…」
(後ろの騎士がランプの火をつける)
〜12年後、ヴァルコマ王国 “エディスピア”〜
(ゴン!! ゴン!! 朝の光が差し込む庭に音が響く)
(ジェイが庭の木をサンドバックにし、拳を打ちつづける、手には包帯が巻かれていて血塗れである)
ジェイ『……ハァ…ハァ…』
(モハメドが家の中から声をかける)
「モハメド・アントニオ、地人(チビト)、ジェイの育ての親、騎士養成学校校長、元第1騎士団騎士」
モハメド『遅れるぞジェイ! おれは先に学校に行くからな!!』
(ジェイが振り返る)
「ジェイ・アントニオ(ジェイ・カビワン)(18歳)、地人(チビト)」
ジェイ『すぐ行くよ』
モハメド『じゃあ頑張れよ!! また後でな!!』
(ジェイが腕立て伏せを始める)
(しばらく時間が経つ)
ジェイ『…999…1000』
(ジェイは最後の腕立て伏せを終え 立ち上がって汗を拭う)
(ジェイは静かに目を閉じる)
(マーカスの笑顔 クレアの笑顔 アルの言葉を思い出す)
ジェイ『よし いくか』
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