gamestart〈これはまるで、一等の宝くじが当たったような奇跡で〉

第0話 プロローグ

■2031年7月20日


 【Virtual chaos world】


 グリモア社より発売された、現状世界で唯一のフルダイブ型VRMMOゲームだ。その競争率は凄まじいものがあり、何処かの国ではこのゲーム目当てで抗争が起こったほどである。

 そんな【Virtual chaos world】は宝くじで一等を出すよりも手に入れにくくなっていた。が、ノリで公式サイトから無料で送られるイベントに応募したら当選した。これが数日前。

 そして今、家に【Virtual chaos world】のソフトとゲーム用のベッド型筐体が設置されていた。


「それじゃあこれで。ゲームを楽しんでくださいね」

「あ、はい。ありがとうございます」


 筐体を家に運んでくれたグリモア社の広報の社員さん(何で居るのかな?)に感謝を伝えて、玄関までお見送りした後、僕は一人部屋で大騒ぎした。


「いやっふううううううぅぅぅぅ!!!

まじかまじか、本当にゲーム当選しちゃったよ。こーれは当選から外れた友達を煽らねぇとなぁ!ハハハハハハ!」


 この後、友達に連絡して数十分くらい煽って騒いだ。部屋に防音設備あってよかったぜ。じゃないと近所迷惑になりそうだった。次から気をつけよう。


「よーし、散々煽ったし、気を取り直してまずは説明書読むか」


 説明書を読む。これ大事。いや本当にね、説明書読んでおくと何かあったときとか適切な対応取れる可能性が高まるから。皆も読んでおくと良いよ。誰に言ってるんだろ。


 えーと、まずは、配線の方法からか…付属のアダプターをコンセントにつけて…ゲーム筐体本体に繋げて……



◇◇◇



 配線完了!設定完了!説明書片手にやったし、動作確認はしてある。大丈夫だ、問題ない。

 後はゲームのサービス開始日にやる徹夜に備えて色々と買い溜めしておかないとな。


「メモメモ、メモ何処だ?あ、あった」


 メモにとりあえず必要なものをパッと書き出す。

 食料品(大半は冷凍商品)、サプリ(足りない栄養を補うために)、生活用品(トイレットペーパーとか)

 これくらいか。一人暮らしのマンション住まいじゃ必要な物そんなに多く無いからね。冷凍庫パンパンになるくらいまで買ってしまおう。



◇◇◇



■2031年7月26日


7月26日の午後6時丁度、この瞬間から【Virtual chaos world】のサービスが開始され、ゲームの世界に足を踏み入れることができる。

 早速、サービスが開始される数分前にベッド型の筐体の中で待機する。


――後、三分


 ゲームが始まったらどんな光景が見えるだろうか。どんなキャラクターを作ろうか。色々と楽しみにしていたんだ。


――後、二分


 もう少しだ、もう少し。はやる気持ちを抑えるためにも最終確認をしよう。晩御飯は早めに食べた。それにトイレ行った、風呂入ったし……準備万端だな!


――後、一分


 ヤバい、緊張する。

 どうせならタイミング合わせて、18:00丁度に合わせてゲームに入ってやる。こういう変わった楽しみ方もアリだよね。



――後、3秒


 よし、心構えはできた。


――後、2秒


 タイミングを合わせて…


――後、1秒


 対戦よろしくお願いします。


――後、0秒


 今!多分0秒ピッタリでゲームの起動を確認した。これはいけたんじゃないか。計測とかは何もしてないけど。


『Gamestart【Virtual chaos world】』


 流暢な英語の文が聞こえながら、僕の意識は暗転して、緩やかに仮想世界に沈み込んでいった。



――――――――――

―――――――

――――



 仮想世界に足を踏み込んで最初に見たのは真っ白な床と、宇宙をそのまま持ってきたような幻想的な光景の天井だった。

 見るだけで気圧される様な、感動さえも覚える。そんな光景が天井に投影されていた。


「すげぇ…」


 そんな感嘆から覚めた後、まず真っ先に思ったのは、ここが現実だと錯覚するほどに高すぎる再現度だということ。あまりにも自然に馴染んだから忘れかけていたがここはVR空間、仮想世界なのだ。

 身体が現実と同じ様に動かせるし、呼吸だって会話だって普通にできて、静かにしていると心音が聞こえる。

 あまりにもリアルに似すぎていて、なんなら現実よりも現実らしさを感じる…何言ってんだ?

 こういうのは考え過ぎるとハマって抜け出せなくなるから"なんか凄い"くらいに留めて頭の片隅にでも放っておこう。


 さて、考えがあらぬ方向にいったせいで忘れかけていたが、ゲーム開始時点で、目の前に半透明で厚さなんて概念が無いと思えるほどには薄っぺらい板があった。

 そこにはこう表記されている。


〘 ゲームを開始しますか?〙

〘  〈YES〉   〈NO〉  〙


 勿論〈YES〉一択だ。

 触れて選択した瞬間に、辺りの空間が新たに創られていくかのように歪み、僕のいた場所が、神殿の様な場所に変わった。


『初めまして。【Virtual chaos world】へようこそ』


 突然目の前に白い翼の生えた女性――天使が出現した。音もなく現れたからちょっと驚いた。

 天使さんは、ゲームの案内を担当する方だと公式サイトに載っていた。


『これよりキャラクタークリエイトを開始しますか?』

「あ、はい」

『では、最初に種族RACEを選択肢てください』


 天使さんの声とともに眼前に表示が現れる。そこには最初に選択可能な種族が四つ表記されていた。


 〝人族〟〝森妖精族エルフ〟〝山人族ドワーフ〟〝獣人族〟


 出てきた瞬間に迷わず人族を選ぶ。ゲーム開始前に他の選択肢も魅力的で検討していたけど決め手があった。それは公式サイトの説明で、一番多くの種類のスキルを取れる、可能性に満ちた種族なんて言われているからなんだよね。


『種族が決定されました。〝人族〟でよろしいですか』

「勿論」

『分かりました。では次に職業JOBを決定してください』


 種族を決めた後は職業を決める。そのための表示が出たけど、なんかおかしい。

 普通は種族を選択する時みたいに選べるのが表示されるんじゃないの?何で検索バーがあるだけなの?


 取り敢えず、試しに検索バーに"剣"と入力する。すると、"剣"という名称が入っている職業が検索バーの下側に大量に出てきた。


 剣士から始まり、剣術家、剣舞士、双剣士、傭兵(剣)、炎魔剣士、水魔剣士、風魔剣士…剣闘士、細剣使い、大剣使い…etc


 とにかく沢山の職業があった。いっぱいあった。あり過ぎて検証班が死にそうなくらいあった。ま、僕には関係ないか。

 僕はこのゲームでやりたい事が明確にあるから職業をささっと決めてしまう。

 検索バーに"暗殺"と入力する。画面にまあまあな数の暗殺関係の職業が出てくる。それをじっくりと眺めて、時間をかけて決める。


 よし、これが良い。

 僕は、〝魔毒の暗殺者〟を見つけ出し、その職業に決定した。いや~時間かかったね。大体十分くらいかな?

 さて次に進もうか。


『職業が決定されました。〝魔毒の暗殺者〟でよろしいですか?』

「はーい」

『それでは、最後にキャラクターとプレイヤーネームを決定してください』


 名前を決める用の画面が出てきて、その隣にキャラクタークリエイト用のなんか複雑そうな画面が大量に出ている。

 まずは名前を決めてしまう。

 ここで悩まないように僕は事前に決めていたのだ。てことで、プレイヤーネームとして"ナコト"と入力する。

 問題なく許可された。


 さて、と。キャラクタークリエイトを始めるか。


 まずは自分をキャラクターに反映させて…髪の長さを変えて、明度彩度…いや、RGBで色を決めるか…Rは170で、Gは137………身長はプラマイ10cmまで変えられるのか。どうでもいいな………目の色は出来るだけ綺麗な…宝石みたいなのにしよう。ジルコンとか髪の色とも合うんじゃないか……


――――――

――――


 キャラクタークリエイトに一時間とまではいかずともそれに近いくらいの時間をかけて自信を持って人に見せれるキャラクターを作り上げた。

 これで良し!


『キャラクタークリエイトを完了しますか?』

「うん、これで完成だよ」

『次にチュートリアルを開始します』


 その後にあったチュートリアルを僕はさっさと終わらせて、キャラクタークリエイト兼チュートリアルを完了した。



『それではプレイヤー"ナコト"様、【Virtual chaos world】を余すこと無く楽しんでください』


 天使さんの言葉を最後に、僕の視界は光によって染め上げられ、本当の意味で仮想世界に足を踏み入れる事となった。



――――――――――――――――――――

初めまして、或いはお久しぶりです。黒薙神楽と申します。


まずは一言、メリークリスマス。

新年の前に新作を投稿することにしました。

見切り発車ですが、この作品をよろしくお願いします。ネタが尽きなければ失踪の可能性は低い…です(もうネタが無いなんて言えない)。


p.s.今のうちに言っておきます。僕は話の内容をこねくり回しながら書くのが楽しいと思う残念な人です。それが気に入らない方は、ブラウザバックして下さい。

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