第8話私が女当主です
「どうやら会社だけで無く、領地もめちゃくちゃにしていたみたいなので、それらの証拠を持って、爵位を私に変更するように手配しておきました」
ジェームズになる早でってお願いしておいたんだけど、緊急性も考慮して、皇室も素早く爵位の変更を認めてくれたみたいね。良かったぁ、助かりました! この通知が来るのを待っていたんですよねー
「ななななななな、何てことをしてくれたんだ!」
「あら、ごめんなさい。でも離婚するなら、どちらにせよカルディアリアム伯爵の座は私に返してもらうことになるのだから、一緒でしょ?」
いや、一緒では無いか。いかに貴方が無能な人間かを、皇室に親切丁寧にきっちり教えちゃいましたもんね。その所為で、ローレイはもう二度と、別の爵位も得られないかも……なんて可哀想なの。でも、心を入れ替えて今から真面目に人間すれば、まだチャンスはあるかもしれないので、ガンバ!
「何でお前と離婚するのと、カルディアリアム伯爵の座をお前に奪われるのが一緒なんだよ! 意味分かんねーだろ!」
「……嘘でしょう? まさか、それも分かっていなかったんですか?」
「何が!?」
前言撤回、こんなに馬鹿なら、二度と爵位は得られないわ。
「貴方、カルディアリアム伯爵家に婿入りした立場なのよ? 私と離婚したら、カルディアリアム伯爵の座を返してもらうに決まってるでしょ」
「――は?」
そう、ローレイは私の家に婿入りし、伯爵の座を引き継いだだけ。離婚して他人になったら、返してもらうに決まってる。
「まさか私と離婚してからも、なし崩し的にそのままカルディアリアム伯爵でいられるとでも? 正真正銘、根っからの馬鹿なの?」
「お、お前が離婚後も、俺に任せると言えば!」
「言うわけないでしょ、バーカ」
な・め・ん・な?
誰が好き好んで、自分を裏切った浮気男に、大切なカルディアリアム伯爵家を任せると思う? 百歩譲って、貴方がとっても優秀で、立派に当主してるならまだしも、滅茶苦茶な運営しかしてないのに、任せるわけないでしょ!
「お前のような何も出来ない箱入り娘に、領地運営なんて出来るわけがないだろう! 俺に領主を任せないと、領地がめちゃくちゃになるぞ! お前に、カルディアリアム伯爵の座が務まるわけが無い! 俺に任せなければ、カルディアリアム伯爵家はお終いだ! カルディアリアム伯爵家を潰してもいいのか!?」
どっからくんのその謎の自信? 何で自分が出来る男風なの? いるよねーロクに仕事も出来ない無能のクセに自分は出来る! って勘違いしてる痛い男。
色々と言いたいことはあるけど、取り敢えずこの言葉を貴方に送りましょう。
「私と離婚して他人になるローレイには関係ないでしょう」
勿論、精一杯頑張りますけど、例え私が爵位を継いでカルディアリアム伯爵家が潰れようが、ローレイには一切関係無い。だって他人だもの。
赤の他人が人様の家庭に口出ししないでよね。
「ほ、本気で俺と離婚する気なのか!? 今なら、泣いて謝れば許してやらんこともないんだぞ!?」
「いやいや、さっき離婚と再婚宣言したばかりですよ? 撤回するの早過ぎでしょ」
「五月蝿い! 俺に逆らうな! お前はいつものように、黙って俺のいうことを聞いていればいいんだ!」
「五月蝿いのはそっちでしょ? 大きな声で女を威嚇することしか出来ないなんて、残念な男ね」
「なっ!」
さっきからわざとらしいくらい大きな声で、怒鳴り散らすように話すローレイ。
怒鳴れば私が萎縮して何でも言うことを聞くと思っているんでしょうけど、そんな風に女を自分のいいなりにさせようとするモラハラ男、大嫌いよ。
「貴方とは離婚します、貴方みたいな下半身に正直な無能な浮気男と結婚生活を続けるなんて、まっぴらごめんです」
離婚を盾に好き放題した旦那様。
貴方のお望みの離婚を叩き付けてあげますので、どうぞ、私の目の前から消えて、大好きな浮気女と、真実の愛とやらを貫いて下さい。
自分のモノだと勘違いした、私のモノを全て返してから――ね。
「ロ、ローレイ様! 家の名義も、爵位も、全部離婚してフィオナ様を追い出した後に、勝手に変更しちゃえばいいんですよ!」
「そうか、その手があったか! 流石はキャサリンだ!」
「……分かっているとは思いますが、勝手に名義を変えたら重罪ですよ」
何を言い出すかと思ったら、浮気女の方も頭が悪いんですね。欲望に正直で、ところ構わず発情しちゃうような人間の皮を被った動物は、どうしても頭が弱くなるのかしら? お気の毒に。
「ローレイ、キャサリン、もういい加減にご理解下さい。正式な手続きを終え、皇室から認められた私が、カルディアリアム伯爵家の女当主になったんです。ローレイはもうカルディアリアム伯爵ではありませんし、二度と、その座が渡ることもありません」
私がカルディアリアム伯爵に相応しくないとしても、ローレイだけには絶対に渡さない!
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